当事者研究ブログ:大人の頭蓋骨縫合早期癒合症

頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)と高次脳機能障害(容量性注意障害)についての当事者研究のノートです。言語性ワーキングメモリと日本語(右側主要部の規則)の関係について研究しています。目的①頭蓋骨縫合早期癒合症を成人症例、生活史を記事としてまとめること。目的②特異的言語発達障害の当事者研究をもとに、日本語が日本人の思考に与える影響(サピアウォーフ仮説)を考察すること。

日本人の国民性と言語相対性仮説(2):南博: 「日本的自我」にみる自我不確実感と公的自己意識の過剰性

さっき、日本人の国民性について自我不確実感を提言した社会心理学者がいたことを知りました。南博氏です。そしてその内容を提言した書籍が、「日本的自我」です。これは私にとって興味深いです。

日本的自我 (岩波新書 黄版 241)

日本的自我 (岩波新書 黄版 241)

  • 作者:南 博
  • 発売日: 1983/09/20
  • メディア: 新書
 

 

初めて心理学で「自我」という表現が使われ始めたのは、精神分析学でのイド、スーパーエゴのバランスを取るもののとしての語用でしょう。

自我という言葉は広く使われていて、意味もそれなりに広いように感じます。この言葉を学術的に使うことは難しいように感じます。そのため私は別の表現を用いています。自我の言い換え表現を挙げると、通常の心理学では「自己意識」や「自己同一性(アイデンティティ)」があります。認知心理学は特殊で、こちらでは物理的な使われ方をされますので、少し意味が異なりますが、ワーキングメモリと関連づけながら「意識」や「注意の焦点」が用いられます。あとはロジャーズによる「経験」という表現もあります。

南博は、「日本的自我」が示す内容をひとことで「自我不確実感」といっています。最も身近な表現を言うと「アイデンティティ=クライシス」や「自我同一性拡散」でしょう。

理想的な自我の状態は、確立された自我によって公的自己意識と私的自己意識にバランスがとられている状態です。つまり私的自己意識を軽んじることなく、自分の欲求にもある程度注意を向けられている状態です。これに対して、「日本的自我」とは、公的自己意識が過度に高くなっており、自我が不安定な状態が続いている日本人の状態を示している表現であるといえます。言い換えると、思春期に限らず、国民レベルで大人も含めて「自意識過剰」ということです。

公的自己意識とは自身の社会的立場を基準にふるまう思考に該当します。問題なのはこれが過度に高い状態、すなわち公的自己意識がストレッサーとなり、自身の立場や社会的評価を気にしている状態です。この状態でいることで発生する問題の具体例を挙げると、他人からの視線が気になるあがり症や、同調圧力への過敏性でしょう。

日本人の国民性(国民レベルの性格)の大元として「公的自己意識が過度に高い」といえる根拠として、厳格な礼儀作法(マナー)や複雑な敬語が挙げられます。他国では相手に対して握手やハグも挨拶として用いられています。これに対して日本は異なります。日本では相手に対して3種類の敬語やお辞儀で済ませます。一方でキスや敬意は示すけれども親愛の意は示さず、といったところでしょうか。むしろ日本人の礼儀作法は、警戒感の現れだと思います。

何に対する警戒感かというと、例えばとりあえず敬語を使っておけば、特にモンスタークレーマーや悪性自己愛者(DQN)から因縁をつけられたり、高齢者から「失礼だ」と怒られるというストレッサーの発生を回避できますし、なにより自分の社会的評価を落とさないでいられます。ただ、それだけではないようで、パーソナルスペースの広さが関わっているように感じます。

日本人はパーソナルスペースが広いといわれています。すなわち、相手とのコミュニケーションをする際に、パーソナルスペースを急に詰められるかもしれないことに対して、警戒感を抱く場合が多いと思います。それ自体は全く問題ないのですが、特に西欧諸国とは、コミュニケーションの質が全く違うことは興味深いです。

日本にかかわらず、人間は思春期から社会性を学び、公的自己意識の存在を知り、自我を形成します。自我が確立されていないうちは公的自己意識が高くなり、私的自己意識をおろそかにしてしまいがちです。思春期の青年が「自意識過剰」といわれるのはこのことです。

南博が言っている日本人の国民レベルでの「自我不確実感」とは、自我が形成されていない、という意味ではなさそうです。形成されているものの、公的自己意識が強い状態が続いており、なかなかバランスの取れた「自我」に至らないということでしょう。私の持論ですが、たとえ公的自己意識と私的自己意識のバランスが取れたとしても、すぐに公的自己意識に比重が置かれ、自我が不確実になってしまう、これが日本人が抱えている根本的な問題でしょう。そして、同調圧力や忖度に過敏性、他人からの評価が気になって不安になるという問題が発生すると私は考えています。

では、日本人がすぐに自我が不安定となり、公的自己意識が過度に高くなり、それに起因するストレスを抱え込むようになってしまう根本原因は何でしょうか。この問題の答えは提示されていないようです。少なくとも公式の見解は出てくることはないでしょう。私見にになりますが、当ブログでは、言語的相対論を用いて、日本語の語順規則ではないかと私は考えています。言い換えると、SOV型言語である日本語を使って生活していることが、日本人の自我の安定を脅かしているということです。

詳細は下のリンク先の記事で説明しています。

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

自己紹介・研究活動・目標

私は、軽度の頭蓋骨縫合早期癒合症の「成人当事者」です。そしてこれに起因する高次脳機能障害である容量性注意障害を患っています。

通常の早期癒合症は幼児期のうちに症状が顕在化し、治療される病気であることから、「小児慢性特定疾病」として、医学によって認知されています。一方「早期癒合症の成人患者」は問題が存在するはずですが問題提起されていないため、2020年時点では医学において想定されていません。容量性注意障害も精神医学において高次脳機能障害概念として存在してはいるものの、詳細に考証する研究が存在していないことから、その実態は未解明であるといえます。

早期癒合症によって、先述した容量性注意障害のほかにも身体症状が併発しています。これら全ての症状について、NIRSやWAIS™-IIIなどの数々の検査結果や成育歴から、早期癒合症由来の後天的な症状であると私は推測しています。私が抱えている症状と早期癒合症の因果関係については、以下のリンク先で説明しています。

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

容量性注意障害に該当する神経症状については、早期癒合症の発覚以前に昭和大学の加藤進昌先生から、「特定不能の広汎性発達障害」(精神症状の原因不明の意味を持つ)という診断が下りています。この病名は不特定のもので、実体を持ちません。

現在、頭蓋骨縫合早期癒合症の研究は脳神経外科学の範疇で行われていますが、併発する精神症状の病理についての研究は行われておらず、治療をめぐる議論も停滞しています(その原因は精神医学の性質上の問題点にあります)。この状況を打開するべく、当方の専門分野である認知心理学神経心理学、音声言語医学などを用いたアプローチによって、その全容を解明するために研究活動をしています。
このブログの存在意義ともいえる最終的な「目標地点」は、頭蓋骨縫合早期癒合症の研究のなかで、脳神経外科学と心理学、及び言語学を用いた学際的研究を実現することです。質問等がございましたら、記事のコメント、twitterなどで問い合わせをください。最後に私の経歴を載せておきます。詐称がないことはここに宣言します。

大津諒太朗:早稲田大学法学部卒業(2016年)、日本ワーキングメモリ学会に入会し、ご厚意で学会大会で当事者研究を発表する機会をいただきました。

日本人の国民性と言語相対性仮説(1):自意識(公的自己意識)の過剰で礼儀正しく、空気を読みすぎて生きづらい

キーワード:国民性、礼儀正しさ、上下関係、パーソナルスペース、不安、「自意識過剰」、公的自己意識、べき思考、べき論、同調圧力、忖度、文化依存症候群

  • 日本は若者の自殺者数が多い先進国であるという逆説
  • 日本人の国民性①:他人の目が気になるから礼儀正しい
    • 日本語だけが謙譲語を持つ
    • パーソナルスペースが広い日本人
  • 日本人の国民性②:公的自己意識の過剰が作り出す「べき思考」
    • 「自我不確実感」をともなう日本人の公的自己意識は過剰である
    • 私的自己意識の低下:日本人の美徳は生理的欲求を隠すこと
    • 公的自己意識が発する「べき思考」が強い日本人は「べき論」に弱い
  • 日本人が生きづらいと感じる理由は「べき論への弱さ」
    • 上下関係内のハラスメントとモンスタークレーマーが与えるストレス
    • (加筆修正中)日本の息苦しさの正体は同調圧力
      • 同調圧力に対する過敏性(空気の読みすぎ)
      • 同調圧力が発生する原因:集団同調性バイアス
  • まとめ:日本人の文化依存症候群は公的自己意識がストレスになったもの
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