「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症と容量性注意障害に関する当事者研究ブログです。主にワーキングメモリ(注意容量と音韻ループの関係)について研究しています。更新情報はツイッターで配信しています。(他キーワード:特異的言語発達障害、軽度三角頭蓋)

軽度の頭蓋骨縫合早期癒合症による「頭皮の下垂」のメカニズム / 軽度三角頭蓋、「大人の早期癒合症」の外見的特徴(写真あり)

※ 改訂中です(2018/8/13 )

 

頭蓋骨縫合早期癒合症は、現在医学的に広く認知されている疾病であり、治療方法として手術が行われています。通常程度の早期癒合症では頭蓋変形の程度が顕著であるため、手術を施されるケースがほとんどでしょう。

しかし一方で、軽度な早期癒合症による頭蓋変形の病態は専門医でも判別ができないため、そのまま見過ごされてしまうという問題を抱えています。

頭蓋骨縫合早期癒合症には軽度のものが存在しており、中でも下地武義先生が報告している「軽度三角頭蓋」がもっとも有名です。

頭蓋骨縫合早期癒合症には、大きく分類して3種類存在しますが、今回の記事では前頭縫合の早期癒合という病態を持つ「三角頭蓋」と、「軽度三角頭蓋」(「大人の早期癒合症」)の外見的特徴(※)を、紹介していきます。 

※「外見的悪影響」と「外見的特徴」の意味について

私は早期癒合症の「外見的悪影響」の一つに「外見的特徴」を挙げています。外見的悪影響、すなわち頭蓋の変形以外にも外見的悪影響が存在すると考えております。

早期癒合症による外見的悪影響 ↓

  • 外見的特徴(=頭蓋の変形)
  • 頭皮の下垂

そこで今回は、見分ける方法論のもととなる、早期癒合症による外見的悪影響の一つである「頭皮の下垂」について紹介します。

序説

早期癒合症の外見的な問題は、頭蓋骨の変形だけではなく、頭蓋骨の狭小化により余剰となった頭皮の下垂も含まれる。

頭皮の下垂による姿勢の変化は、自律神経にかかわる二次障害を引き起こしうる。ゆえに、二次障害の解決および防止を実現するためには、根本的問題である早期癒合症の病態を解消しなければならない。

そのうえ早期癒合症は精神症状もひきおこすため、早期癒合症による精神症状の存否は、早期癒合症の外見的特徴から判断することが可能である。

  

三角頭蓋の外見的特徴

冒頭でも説明しましたが、三角頭蓋とは前頭縫合の早期癒合という病態を持ちます。診断の基準となる外見的特徴は、以下の通りです。

前頭縫合隆起のみでは病的初見とは呼べず、前頭部大脳圧迫初見、眼窩間距離短縮、眼窩の変形を伴うものが三角頭蓋と診断される。*1

まず、三角頭蓋の外見的悪影響である前頭部の変形の度合いは、素人目で見ても判別できるほどのものです。それに加え、前頭部の狭小化は、眼窩(眼球が収まる空洞)の形成にも悪影響を与えるとのこと。

「眼窩間距離」とは前頭部の幅を指します。

前頭部の幅と側頭部の幅の割合が、健常例と比べ著しく側頭部の幅が広くなるということでしょう。これによって

両目の距離が小さくなるという現象も診断基準の一つとして脳神経外科学にて規定されている、とのことです。 

以上の内容をまとめると、三角頭蓋の外見的悪影響とは、

  • 前頭縫合上の骨性隆起
  • 眼窩の変形
  • 前頭部の幅の著しい狭小化

ということになります。

 

軽度三角頭蓋の外見的特徴

三角頭蓋と同じく、軽度三角頭蓋も前頭縫合の早期癒合という病態を持ちますが、その外見的特徴には相違点が存在します。

前頭部の骨性隆起を認め、前側頭部の陥没が顕著である特徴的な頭蓋形態を呈する群が存在し、これらの患児は脳そのものの機能的異常に加えて、前頭蓋の狭小化による前頭葉への圧迫が存在する…*2

 しかし、軽度三角頭蓋特有の外見的特徴が存在するようで、それに関する詳細は以下の通りです。

改善例の代表例を示す。…前頭部横径と比較して頭頂後頭部横径の拡大を認め、頭部MRI軸位断ではだるま型を呈していた。*3

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P. 154 より引用

引用元の内容を大まかにまとめると、軽度三角頭蓋の一部の症例では、側頭部の幅が広がっているという特徴を持つ、とのことです。

 下地武義先生の研究によりますと、

健常児のならば、↓

側頭部の幅:前頭部の幅 = 1:0.62(0.60 ~ 0.63)

という比率であるのに対し、軽度三角頭蓋のケースは

側頭部の幅:前頭部の幅 = 1:0.57

と、正常値からは逸脱した比率の値が認められる患者群が存在した、とのことです。しかし、これがすべてではないようで、健常児と同じ比率を呈する軽度三角頭蓋の患者群も存在するとのことです。 

以上の内容をまとめると、軽度三角頭蓋の外見的悪影響とは、

  • 前頭縫合上の骨性隆起
  • 側頭部の幅の広大化(前頭部の幅の狭小化とも解釈できますが、前頭部の幅の狭小化は著しくないという意味が含まれると推測されます)
  • 前側頭部の陥没(こめかみ上部に存在)

とのことです。

 

成人当事者にみられる早期癒合症の外見的特徴(写真あり)

1 判別は「至極」困難

当ブログの名称に含まれる「大人の早期癒合症」とは、頭蓋骨縫合早期癒合症のうち、変形が軽度であり、軽度三角頭蓋も含まれます。

脳神経外科学の間でも広く認知されているとはいえないため、大人になっても気づかない当事者が多く存在すると推測されています。

それに拍車をかけているのが、判別の難しさでしょう。脳神経外科や形成外科の医師にとっても、患者の訴えがなければその存在に気付くのは困難であると思われます。

 

2 「大人の早期癒合症」のCT画像

ここでは早期癒合症の当事者である私の頭蓋骨の画像を提示していきます。

まずはCT画像をご覧ください。

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① 「骨性隆起」:前頭縫合及び矢状縫合に沿ったもの

 

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② 「側頭部の陥没」

私の早期癒合症は、「前頭縫合および矢状縫合の軽度な早期癒合」という病態を持ちますので、軽度三角頭蓋とは若干異なります。

先述の軽度三角頭蓋の外見的特徴に関する説明には、前頭部における所見のみが記載されていました。

これに対し、私の場合は前頭縫合だけでなく矢状縫合も早期癒合しているため、外見的悪影響は頭蓋骨全体にあらわれています。「骨性隆起」は、前頭縫合及び矢状縫合にみられます。一方で「骨性陥没」とでもいうべきでしょうか、これは前側頭部及び後ろ側頭部にかけて存在します。

 

 3 「大人の早期癒合症」の画像(現物)

頭蓋骨の3D-CT画像を撮影すると、何となく軽度三角頭蓋であることを確認できます。しかし現物、すなわち頭皮で覆われた状態から軽度三角頭蓋であることを判別することは、困難です。

 

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まずは、「前頭縫合上の骨性隆起」がうっすらと浮き上がっているのがおわかりいただけたでしょうか。

当方が眉間をよらせることでようやくわかる所見ですが、光の当たり具合がわるい場合は見えません。

しかし、触診で骨性隆起の存在を確認することは可能です。


 

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上の画像では、「骨性陥没」を確認できます。先ほどの骨性隆起よりは見つけるのが容易です。

 

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実は、真正面から見ても「骨性陥没」の輪郭が確認できます。

骨性陥没より前の前頭部が一回り小さくなっています。

 

「頭皮の下垂」が発生するメカニズム

軽度の早期癒合症の美容面での問題の原因となる現象が、「頭皮の下垂」です。この「頭皮」とは解剖学的定義に準拠しており、すなわち、髪が生えている部分に限らず、首より上の頭部全体の皮膚を示します。

そして「下垂」とは、頭皮が重力によって下の方向に垂れるということです。

頭蓋骨を覆う頭皮のほうは、本来の頭蓋骨の大きさに相当する面積を持ちます。しかし、軽度とはいえ、早期癒合症の頭蓋骨はその体積自体が狭小化しています。すると、本来よりも大きさよりも小さい頭蓋骨に頭皮で覆った場合、頭皮が余ってしまいます。その分の頭皮が重力によって下の方向に垂れます。

このことから頭皮の下垂とは、いわば頭皮と頭蓋骨のバランスが崩壊した結果であるといえます。

 

「頭皮の下垂」がもたらす諸症状

軽度の早期癒合症によって引き起こされる、頭皮の下垂によって引き起こされる外見的変化についてそれぞれ紹介します。

1 一重まぶた(不確実)

厳密に言えば、頭皮の下垂によって一重まぶたになるのではなく、二重まぶたを維持できないため一重まぶたになります。

まぶたも頭皮の一部です。頭皮が垂れれば、目にかかるまぶたが広くなります。この状態で二重まぶたにすることも可能ですが、まぶたの内側に入り組んだ皮膚の量が多いため、マウントされた皮膚が眼球を圧迫することになります。

すると、まばたきのたびにまぶたが眼球をこするため、ドライアイや痛みを感じるようになります。ゆえに、二重まぶたにするよりは一重まぶたのほうが本人にとって楽になります。

一重まぶただけならたいした問題ではないのですが、一重まぶたになると視界の上の部分が閉じることになります。すると、開いている下の部分を通して景色を見るために、常に見上げるような姿勢となります。

この姿勢が二次障害の首猫背につながります。詳細は後ほど。

 

2 二重あご

早期癒合症によって下に垂れた頭皮は、無彩限に垂れていくわけではありません。その「終着点」はあごの下や首になります。すると、あごに頭皮が余分に集まるため、二重あごになります。男性であれば、喉仏が二重あごに埋もれてしまいます。

二十あごになった顎を伸ばすと楽なため、常に見上げるような姿勢になります。これも二次障害の首猫背につながります。詳細は後ほど。

 

3 頭髪の生え方の特徴の変化

早期癒合症によって頭皮の生え癖が変化するわけではありません。

頭皮の下垂により、髪の毛が本来生えるべき位置より下降するので、髪の毛の流れが不自然になります。

その特徴は以下の通りです。

  • 前髪の毛量が少ない(頭頂部から前頭部にかけての毛量の減少)

早期癒合症の場合、頭皮が下垂するため、本来頭頂部に存在するべき頭皮が頭頂部から外れ、側頭部や後頭部へとずれます。ずれた頭皮から生える髪の毛は前頭部に流れなくなるため、その分だけ前髪の毛量が少なくなります。

 

  • 側頭部及び後頭部の毛量が多い

側頭部や後頭部に頭皮がずれるので、その分だけ毛量が増えます。ずれた頭皮から生えている毛は本来の方向(毛根の向きによって決まる)に生えようとしますが、重力により下の方向に落ちます。しかし、毛根の向きは変わらないため、落ちると同時に「うねり」が生じます。その結果、膨らむような生え方になります。

  

「頭皮の下垂」が引き起こす二次障害:首猫背

実は、早期癒合症による外見面での問題は、別の症状の発生を促す恐れがあると私は考えています。その症状とは、首猫背です。

首猫背になる原因として、頭皮の下垂による一重まぶたおよび二重あごが挙げられます。

では、なぜ首猫背という、わざわざ頭を上げるような姿勢をするのか?

一重まぶたになると上半分の視界が遮られることになります。そして二重あごになるとあごの下に皮膚がたまります。

あごの下の皮膚を伸ばすことと、下半分の視界を通して物を見ることを実現するためには頭を上げた首猫背の姿勢をとることが一番なのです。

しかし、首猫背は首コリを引き起こし、これが悪化した際には性神経筋症候群という自律神経失調症を引き起こします。

 

(まとめ)「大人の早期癒合症」を抱えている成人当事者の外見的特徴

これまで、軽度の早期癒合症の外見的悪影響について紹介してきました。

冒頭でも書いたようにこれらの外見的特徴はわかりにくいものです。もし、前髪で額を隠している場合は、外見的特徴を直接判断することは不可能です。

しかし、前髪で額が隠れていたとしても、「大人の早期癒合症」の推定ができるような判別項目を、私は作りました。 

  1. 前髪および頭頂部の髪の毛の量が少ない(M字はげ気味)
  2. 側頭部、後頭部の毛が跳ねる、ボリューミー(ハチ張り)
  3. 童顔
  4. 頭が大きい(顔のつくりが大きい)
  5. そのわりに、額の高さが狭い(絶対的には狭くない)

 まず、①~③の項目について、これは早期癒合症の外見的悪影響の一つである「頭皮の下垂」によって引き起こされる特徴です。 

次の④および⑤の項目の根拠は、軽度早期癒合症の原因についての考察(下に記事リンク)にあります。その原因とは、生来の頭蓋骨のつくりが大きいことです。しかし、人相学・骨相学に近い観点ですので判別方法としては不確実性が伴います。私の経験上、軽度の早期癒合症の人は頭蓋骨のつくりが大きい人が多いような気がします。 

 

参考文献

下地一彰、秋山理、木村孝興、宮嶋雅一、新井一、下地武義「臨床症状を伴う前頭縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)の2施設コホート研究」、日本児童青年精神医学会 『児童青年精神医学とその近接領域』 第57巻 第1号、2016年

井原哲「頭蓋骨縫合早期癒合症の治療と精神発達」、同上

*1:井原、2016、P.159

*2:下地、2016、P. 152

*3:同上、P.154