- 早期癒合症の見分け方についての一般認識
- 軽度の早期癒合症の見た目(整容的問題)
- 私自身の症例(ウルトラマンと一致?)
- もう一つの見た目:頭皮の下垂
- 一重まぶた
- 顎と首の境目がない
- 生え癖がいびつな髪の毛、側頭部の髪がハねる
- 「頭皮の下垂」の二次障害:首猫背
- 軽度な早期癒合症の当事者は元来の頭のサイズが大きい人?
この記事で扱う頭蓋骨縫合早期癒合症(以下、早期癒合症)は、非症候性頭蓋骨縫合早期癒合症です。
縫合線が早期に癒合することによって、頭蓋骨の容積が狭小化を引き起こす早期癒合症の整容的問題について、医学では頭蓋骨の変形のみが報告されています。しかし、同疾患の当事者である私は、整容的問題はそれだけではないと考えています。
早期癒合症では、頭蓋骨の狭小化に伴う頭蓋骨の変形だけでなく、余剰部分となった頭皮が下垂することで、目、首と顎、頭髪に問題を引き起こしていることがわかりました。
頭蓋骨縫合早期癒合症に関する概説は以下のリンク先の記事で紹介しています。
atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp
当事者である私の考えですが、早期癒合症の特徴的な顔貌は、体全体の姿勢にも悪影響を及ぼすと考えています。
早期癒合症の見分け方についての一般認識
早期癒合症は、早期に癒合した縫合線を基準に分類されています。
- 前頭縫合線の骨性隆起と前頭部の狭小化 ⇒ 前頭縫合早期癒合症(三角頭蓋)
- 矢状縫合線の骨性隆起と奥行きが長い ⇒ 矢状縫合早期癒合症(舟状頭)
早期癒合症では縫合のすき間や大泉門、小泉門が早期に癒合しますが、完全にふさがった後も頭蓋骨の成長は続くようです。その成長過程で発生した骨の余剰部分が、骨性隆起です。
骨性隆起は早期癒合症の他覚所見の一つとして診断時に用いられます。早期癒合症を確定診断するためには、ただ患者を眺めるだけでなく、触診や画像診断で他覚所見の有無を確認しなければなりません。
早期癒合症の鑑別方法は以下の通りです。
- 触診で縫合線上の骨性隆起を確認
- 触診で大泉門および小泉門の早期消失を確認
- 3D-CTで画像診断
中等度から典型例程度の早期癒合症であれば、一般人であっても頭蓋骨の変形に気づけます。縫合線の骨性隆起もすぐに発見できます。
しかし、これらの方法をもってしても見過ごされてしまう症例が存在します。それは早期癒合症の軽症例です。すべての他覚所見の現れ方が軽度で、中等度症例と比べると健常児に限りなく近い病態です。
三角頭蓋の場合、他にも以下のような所見があるようです。
8か月以降に認められる前頭縫合隆起のみでは病的所見とは呼べず、前頭部大脳圧迫所見、眼窩間距離短縮、眼窩の変形を伴うものが三角頭蓋と診断される。*1
軽度の早期癒合症の見た目(整容的問題)
軽度の早期癒合症のうち、専門医でも最も気づかないタイプである「軽度三角頭蓋」の整容的問題を紹介します。
軽度三角頭蓋にて早期癒合している前頭縫合は、成長とともに完全に消失するという点で他の縫合と異なります。このことから、前頭縫合のみが早期癒合している軽度三角頭蓋を「病的」ではないと考える医師が多いようです。
しかし、引き起こす慢性頭蓋内圧亢進の程度は重症である場合が多いことから、軽度三角頭蓋は「病的」な疾患であるといえます。頭蓋内圧亢進症の程度だけでなく、頭蓋骨の形にも悪影響が存在することが確認されています。
頭蓋内圧測定 2016年まで446症例(一部割愛)*2
- 頭蓋内圧値が10mmHg以下(健常者と同値)は43症例(7.6%)
- 頭蓋内圧値が11~15mmHgは115症例(25.8%)
- 頭蓋内圧値が16mmHg以上は297症例(66.6%)
前頭部の骨性隆起を認め、前側頭部の陥没が顕著である特徴的な頭蓋形態を呈する群が存在し、これらの患児は脳そのものの機能的異常に加えて、前頭蓋の狭小化による前頭葉への圧迫が存在する…*3
「前頭部の骨性隆起」は前頭縫合の早期癒合の他覚所見です。そして「前側頭部の陥没」という特徴を持つ患者も存在するようです。
下地武義先生の研究によると、軽度三角頭蓋の一部の症例では側頭部の幅が広がっているという特徴を持つ、とのことです。
以下の情報は、下地武義先生の臨床研究で明らかになった、健常児の頭蓋骨の計測値です。
側頭部の幅:前頭部の幅 = 1:0.62(0.60 ~ 0.63)
一方の軽度三角頭蓋の情報は以下の通りです。
側頭部の幅:前頭部の幅 = 1:0.57
正常値からは逸脱した比率の値が認められる患者群が存在した、とのことです。しかし、これがすべてではないようで、健常児と同じ比率を呈する軽度三角頭蓋の患者群も存在するとのことです。
軽度三角頭蓋の頭蓋骨の形成異常は、外から見えない部分にもあります(蝶形骨の変形など)。
私自身の症例(ウルトラマンと一致?)
「大人の早期癒合症」、すなわち早期癒合症の軽症例として、私自身の症例を紹介します。私の早期癒合症は、前頭縫合だけでなく矢状縫合も早期癒合しているタイプです。
見た目の悪影響は軽度ですが、広い範囲にあらわれています。骨性隆起は、前頭縫合及び矢状縫合に存在します。たとえるならば、ウルトラマンです。
CT画像でわかる他覚所見は、頭皮に覆われると、とても気づけるものではありません。「前頭縫合上の骨性隆起」は光の当たり具合がわるい場合は見えません。触診でようやく確認できるのですが、それも鋭敏な触覚があればの話です。
家族に触らさせることがありますが、「あるような、ないような」という反応です。軽度の早期癒合症には気づかないのも納得です。
次に挙げるのは、骨性隆起とは別の他覚所見です。狭小化している頭頂部と側頭部の境目に、陥没部分が存在します。
真正面から見ると、頭蓋骨のうちの狭小化している部分の輪郭(陥没部分)が浮かび上がっています。
もう一つの見た目:頭皮の下垂
早期癒合症が引き起こすもう一つの整容的問題が、「頭皮の下垂」です。「頭皮」とは解剖学の定義、すなわち、髪が生えている部分に限らず、首より上の頭部全体の皮膚のことです。
早期癒合症では頭蓋骨の体積が狭小化します。その一方で頭蓋骨を覆う頭皮のほうは、本来の頭蓋骨の大きさに相当する面積を持ちます。すると頭皮の面積と頭蓋骨の体積のバランスが崩壊します。
本来よりも小さい頭蓋骨を頭皮で覆った場合、頭皮が余ってしまいます。その余った分の頭皮が重力によって下に垂れます。
すると皮膚の部位が本来存在しているべき位置より、下にずれた位置に乗っかるようになります。これによって、顔貌に変化が発生します。
頭皮の下垂の影響を受けた顔貌(顔つき)は、しまりのないたるんだ印象になります。部位ごとに発生する問題を紹介すると以下の通りです。
- 一重まぶた(首猫背の原因)
- 顎と首の境目がない(咽喉頭部異常感症の原因?)
- 頭頂部の髪の量の減少
- 側頭部の髪の流れがいびつになる
一重まぶた
頭皮が下垂すると、二重まぶたを維持できないため一重まぶたになります。
まぶたも頭皮の一部です。頭皮が垂れれば、まぶたとなり目を覆う皮膚の表面積が広くなります。
この状態で二重まぶたにすることも可能ですが、まぶたの内側に入り組んだ皮膚の量が多いため、マウントされた皮膚が眼球を圧迫することになります。
すると、まばたきのたびにまぶたが眼球をこするようになります。このとき痛みを感じ、ドライアイのようになります。ゆえに、二重まぶたにするよりは一重まぶたのほうが本人にとって楽になります。
見た目だけでなく、一重まぶたになると視界の上半分が遮られるようになります。このまぶたの状態で遮られている視界を見るために、常に見上げるような姿勢を取るようになります。この姿勢が二次障害の首猫背です。詳細は後ほど。
顎と首の境目がない
早期癒合症によってたるんだ頭皮は、やがて顎の下にたまります。すると、顎と首の境目がなくなります。
二重あごとは違うのですが、かなり近い状態です。体型は関係ありません。痩せているのに二重あごという状態です。
この状態で顎を引くと分厚い皮膚が喉仏を圧迫するので、締め付けられるように苦しい状態になります。咽喉頭異常感症の一種かもしれません。
顎を伸ばすと楽になるため、常に上を見上げるような姿勢になります。この姿勢が首猫背です。
寝るときに頭を枕にのせると強制的に顎を引くようになるので、咽喉頭部異常感症になることが悩みどころです。
生え癖がいびつな髪の毛、側頭部の髪がハねる
人間の髪の毛について、頭頂部の髪の毛は前方にむかって生えています。後頭部と側頭部は下に向かって生えています。
すると、頭蓋骨になにも問題がない健常者の場合、頭頂部から流れてくる前髪の量が多く、ボリューミーになり、後頭部と側頭部は適度に少な医療に落ち着きます。
一方、早期癒合症では頭頂部の表面積が狭小化してしまうため、頭皮の下垂が発生します。その場合、髪の毛が本来生えるべき位置より下降するので、髪の毛の流れが不自然になります。
具体的な特徴は以下の通りです。
- 襟足がグルンと前にくる
- 側頭部と後頭部の上方部分の生え癖が強く、寝グセがとれない
- 側頭部と後頭部の髪の量が多い
- 頭頂部の髪の量が少ないため、前髪を作れない。
これらの特徴があることで、短髪にした際、かさが薄いキノコ、すなわちエリンギみたいな髪型になってしまいます。伸ばしても前髪はスカスカです。
頭皮の下垂によって、本来なら頭頂部に存在するはずの頭皮が頭頂部から外れ、側頭部や後頭部へとずれこみます。すると、前方に向かって生えている頭頂部の髪の量が少なくなります。早期癒合症の骨格の変化との相乗効果で、いびつでスカスカな前髪になってしまいます。
側頭部と後頭部の上方部分に位置する皮膚は、「側頭部に存在するはずの頭皮」ではありません。頭頂部から外れてしまった「頭頂部に存在するはずの頭皮」は側頭部と後頭部の上方に位置が変わります。
後頭部上方部分の髪の毛は上の方向、右側頭部上方部分の髪の毛は右の方向、左側頭部上方部分の髪の毛は左の方向に生えています。これに重力が加わると下の方向にねじれてうねってしまいます。これがエリンギのような髪型の原因にあたる、強い生え癖です。
側頭部や後頭部に頭皮がずれるので、生え癖だけでなく毛量も増加します。襟足が前に生えているように見える現象の原因はこれであって、頭皮が下垂したことで、襟足が首に生えていることが原因です。
「頭皮の下垂」の二次障害:首猫背
悪役顔になるわけではありませんが、相手に与える印象が悪化してしまいます。しかしそれだけではありません。二次障害である首猫背という機能的な問題が発生します。
原因は、頭皮の下垂による一重まぶたと顎の皮膚のたるみです。顎を引くと、一重まぶたによって上半分の視界が遮られることになり、アゴの皮膚がたるんでるとのどを圧迫して苦しくなります。
そこで、頭を上に向けて首猫背にすると、上半分の視界を見られますし、たるんだアゴの皮膚を伸ばせます。当事者である私にとって、首猫背の姿勢が一番楽です。
そんな私ですが、長年首猫背であることが災いし首コリが強いようで、頸性神経筋症候群という自律神経失調症を引き起こす一歩手前の段階に行きました。現在年齢は20代なので問題ありませんが、年を重ねた時、肩コリ首コリで大変なことになるんでしょう。
軽度な早期癒合症の当事者は元来の頭のサイズが大きい人?
早期癒合症の原因は未解明ですが、数ある学説の中に後天的原因を指摘する学説が存在します。それは「子宮内での頭蓋骨の絞扼」です。
当ブログの中で私も同じような仮説を立てています。その仮説の構成要素のひとつが、生来の頭蓋骨のつくりが大きいことです。私自身の頭位は大きいほうで、例えばニューエラの帽子では頭囲が60.6cmのものをつけています。前頭部が早期に癒合していることから、これでも本来の頭の大きさより小さくなっているはずです。
これに加えて私の場合、母が早期破水したこともあります。早期破水と大きい頭蓋骨の胎児という条件が、「子宮内での頭蓋骨の絞扼」であるかと推測しています。
あるいは、産道をすり抜けた後に、頭蓋骨のすき間が戻らなかったことが原因なのかな。
早期癒合症の原因についての記事は以下のリンク先です。
atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp
参考文献
- 下地一彰、秋山理、木村孝興、宮嶋雅一、新井一、下地武義「臨床症状を伴う前頭縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)の2施設コホート研究」、日本児童青年精神医学会 『児童青年精神医学とその近接領域』 第57巻 第1号、2016年
- 井原哲「頭蓋骨縫合早期癒合症の治療と精神発達」、同上