当事者研究ブログ:大人の頭蓋骨縫合早期癒合症

頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)と高次脳機能障害(容量性注意障害)についての当事者研究のノートです。言語性ワーキングメモリと日本語(右側主要部の規則)の関係について研究しています。目的①頭蓋骨縫合早期癒合症を成人症例、生活史を記事としてまとめること。目的②特異的言語発達障害の当事者研究をもとに、日本語が日本人の思考に与える影響(サピアウォーフ仮説)を考察すること。

特異的言語発達障害による言葉の遅れ(言語発達遅滞)の一症例、勉強嫌いの理由と大学進学できた理由や特技など

言語性知能の低下を伴わない一方で、言語の理解と表出に困難性が認められる特異的言語発達障害の評価対象は、未成年のみに限定されています。

成人当事者については評価基準が未確立であり、2020年も評価できる状態にはありません。それ以前に、日本語における特異的言語発達障害の実態は把握されておらず、メカニズムも不明です。

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp 成人当事者になっても継続する特異的言語発達障害の困り事については、臨床研究でも扱われていないので、知っている専門家はいないとおもいます。

この記事では、成人当事者である私自身という症例を、幼少期から現在に至るまでのことを紹介します。

その前に特異的言語発達障害の病理を紹介すると、ワーキングメモリの無効化によって、ざっくりいうと目的語が従属節に修飾された複文に対して、表出と理解を一度に実行できないという問題が発生します。主語に従属節が修飾された複文の認知は問題ありません。病理に関する詳細は以下の記事で紹介しています。

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp 

 

勉強は嫌い(苦手だらけで)

幼少期のほとんどは勉強に時間を費やしていました。その勉強ですが、

嫌いです。

嫌いである根拠となる背景は多いので、箇条書きで以下に列挙します。

  • 母親からの本の読み聞かせに全く興味を示しませんでした。
  • 自分で本を読むことがなく、活字を読むことが嫌でした。
  • 国語の試験に含まれるリスニング問題の成績は低かったです。単語レベルでは理解できていましたが、話を聞きながらメモを取れませんでした。話の内容を理解するか、メモを取るかのうちのどちらか一方のタスクを実行することで精一杯でした。
  • 作文が苦手でした。今書こうとしている文の以前に書いた文に関する記憶である「回想性記憶」と、今書こうとしている文の構造に関する記憶である「展望性記憶」の同時保持ができないことに起因する構成力の欠如が原因。
  • 国語の成績は圧倒的に悪かったです。文章読解力とリスニング能力、文章構成力が低かったことが原因です。語彙獲得も、学習塾の同級生と比べて遅かったので、現在でも知っていることわざの意味は少ないです。
  • 理数系については特異的言語発達障害の悪影響が直接及ぶことはなかったので、成績が良いときもありました。しかし、教科書の内容や教員が話している内容を理解できないこともありましたが、理解できたとしても同時にメモを取れません。そのため、学業を修めることに間接的な悪影響を受けていたことになります。

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

成人当事者になった現在では、さすがに音声言語医学が問題視している、年齢不相応の語彙力の低さという問題は軽くクリアしました。むしろ、知能検査では言語性知能の数値は高くなりました。

しかし、それはあくまでも表面的な結果にすぎません。成人当事者になった私と幼少期の私の言語障害の様子は全く変わっていません、そのため、一年に一冊も本を読みませんし、プレゼンテーションは文章構成力の低さのせいで円滑に進められません。

現代社会では、言語行為の量をこなすことが求められるようになっています。この要請にこたえられない状態ですので、現代社会に適合する場面は限定的になります。

早稲田大学の附属高校に入学

特異的言語発達障害の本質はワーキングメモリの無効化です。言語性知能の形成に必要な記憶機能には悪影響が及びません。

学業には工夫を凝らし、早稲田大学本庄高等学院の一般入試に合格、その後私は早稲田大学法学部を卒業しました。学部の勉強とは相性が最悪だったため、一生懸命勉強して卒業するまでに5年かかりましたが。大学卒業に5年かかった根拠に関する詳細は後述します。

学業で実践した工夫とは、得意分野に集中し、苦手分野を回避したことです。結果そうなっただけで、当時は全く苦手分野を克服しようともがいていました。長文読解が集中的に求められる、大学入試ではどう頑張っても合格できなかったはずです。

早稲田大学本庄高等学院の入試出題傾向は、読解問題では文章の内容は難しかったものの、文法を聴く問題が多かったのです。高校入試では、ほとんどの学校の出題形式は、ワーキングメモリという読解力を必要としないものでした。数学は得意だったので問題ありませんでした。

苦手ではないこと(勉強において)

特異的言語発達障害が言語系科目に悪影響を与えていたこと、そして特異的言語発達障害によって勉強が嫌いになっていたことは先述の通りですが、例外があります。

一つ目に漢字です。幼少期から漢字を覚えることが好きでした。漢字の記憶は、視覚性記憶(映像記憶)によって覚えるという点で、国語の勉強の中では特殊です。ワーキングメモリは必要ありません。

二つ目に英語です。英文法の習得には苦労しませんでした。日本語と同じく大学受験では通用しなかったかもしれません。しかし、英語が採用している文法規則は、日本語が採用している文法規則の真逆で、このことが特異的言語発達障害にとって負担が軽いと私は考えます。そのため、英文法の知識や語彙力を問われることが多い英語の試験が、日本語の読解力を問われる国語の試験より、私にとって簡単でした。

好きなこと、特技について

読書は嫌いでしたが、本に全く興味を示さないわけではありませんでした。

図鑑や事典を「眺める」ことは好きでした。特に国旗や鉄道に関する図鑑(絵本)、ビデオゲームをするとき以外の時間に漢字字典や歴史人物事典に、目を通していました。文を読むのではなく、被写体の情報を知ることが好きでした。

国旗からその国の首都を言い当てることが、幼稚園児だった頃の特技でした。漢字が得意だったことも含めて、視覚情報を覚えたり思い出したりすることは得意でした。人やものの名前を思い出せないときも、漢字という映像記憶から思い出すことが多くあります。

視覚情報を扱う特技の最たるものが、テトリスです。幼少期から現在に至るまでGBのテトリスをプレイしています。カウンターストップはもちろん、タイプBのレベル9もクリアします。テトリスは私の集中力を極限まで引き出してくれるゲームであるため、私にとってカタルシスです。

現在も特異的言語発達障害は続いており、社会人になった現在の感覚は、幼少期の頃から何一つ変わっていません。

しかし、疑問に感じることがあれば、ネットサーフィンをしたり、参考書を部分的に読んだりして調べます。

興味のないことをゼロの状態から学習することは嫌いです。というのは、日本語で書かれている教科書や参考書の文章はこれを読解することが負担になるので、私は本能的に避けています。

早稲田大学法学部の必修科目の単位を獲得するのには非常に苦労しました。法学部の教科書に書かれている文章は、ひどく複雑な複文で構成されています。日本語の規範文法「SOV」を遵守しているためかもしれませんが、読点が打たれていないため、たちの悪い悪文であるといえます。

特異的言語発達障害の趣味:デフォルトモードネットワークの刺激

読み上げる本は1年に0冊といいましたが、本を読むこと以外の楽しみを作ったことが大きな原因です。ちなみに人付き合いについては、言語障害の症状をからかわれることが多いので、ほとんど時間を割きません。

私の趣味は、ボーっとすることやデフォルトモードネットワークを活性化するようなことです。その最たる行為が、クラシック音楽鑑賞です。ドビュッシーラヴェルプロコフィエフメシアンといった近現代音楽~現代音楽を好んで聴きます。クラシックを聴いていると鳥肌が立つことが多いです。「フリソン」というそうです。

一方でポップスは聴きません。音楽を聴くときは歌詞よりメロディーを重要視します。ポップスを聴かないので音楽の流行には疎く、歌詞を知りませんのでカラオケは嫌いです。

映画鑑賞をすることもあり、SF映画ドキュメンタリー映画を見ます。Sホラー映画やコメディ映画を見ることはありません。テレビ番組もこれに準じたものを見ますが、好きなバラエティ番組を見ないというわけではありません。