当事者研究ブログ「大人の頭蓋骨縫合早期癒合症」

頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)と高次脳機能障害(容量性注意障害)に関する当事者研究の記録です。言語性ワーキングメモリと日本語(右側主要部の規則)の関係、デフォルトモードネットワークの機能について研究しています。目的①頭蓋骨縫合早期癒合症を成人症例、生活史を記事としてまとめること。目的②特異的言語発達障害の当事者研究をもとに、日本語が日本人の思考に与える影響(サピアウォーフ仮説)を考察すること。

狭義のワーキングメモリの定義(意味)と「実行機能」との混同

ワーキングメモリという言葉は、仕事効率化や発達障害に興味を持つ方々であれば聞いたことがあるはずです。結構有名な言葉です。

「ワーキングメモリ」という言葉をググってみる

「ワーキングメモリ 弱い」

「ワーキングメモリ 少ない」

「ワーキングメモリ 小さい(低い)」

と、否定的な形容詞をつけた言葉が検索候補に上がっています。ただ、これらの劣位を示す形容詞を付け加えただけの表現は、感覚的なものにとどまっており、具体性に欠けています。

世間的に言われている「ワーキングメモリ」の意味は本来と異なる気がします。少なくとも「ワーキングメモリが弱い」という表現で用いられているそれは、間違いありません。

「ワーキングメモリ」は課題の実行(ワーキング)に必要になるメモリであることから、名付けられました。その役割を紹介すると、頭の中から漏れ出さないように、複数の事柄を保持しながら思考をするという機能を持つことが由来です。私はこのワーキングメモリの働きを「脳内マルチタスク機能」と呼んでいます。

どうもワーキングメモリの定義は画一的に決まっているわけではなく、広義と狭義があるようです。先述したのは狭義に該当します。

ワーキングメモリは中央実行系の一つです。中央実行系とは、人間が課題を実行する際に必要な脳内の神経系のシステムの総称です。言い換えるとワーキングメモリを司令する役割を担っているのが、中央実行系です。そして、それが担っている機能を実行機能といいます。

通俗的に用いられている「ワーキングメモリ」は、実行機能としての意味を持ちます。つまり、広義の「ワーキングメモリ」が実行機能に該当します。

「ワーキングメモリが弱い」というのは、「実行機能が弱い」ということでしょう。なので、ADHDうつ病の克服をしたいのであれば、ワーキングメモリではなく中央実行系の回復に努めるべきです。なぜなら、ワーキングメモリ単体は悪影響を受けていないからです。

では、実行機能が普通なのに、ワーキングメモリ単体が悪影響を受けているような精神障害はないのか、というと存在します。それは、容量性注意障害という高次脳機能障害です。後天性のものです。そしてこの場合、ワーキングメモリの劣位性を表現する際、「小さい」というより「狭い」のほうが適切です。

ネルソンカーワン氏という認知心理学者が、「注意の焦点」理論を提唱しました。そこで紹介されている内容が、まるでワーキングメモリをレンズのごとく扱っているものです。

ざっくりいうと、ワーキングメモリを注意の焦点と表現し、その範囲の狭さや広さが、ワーキングメモリを用いた課題の成績に影響するというものです。

カーワン氏が提唱した内容の詳細は以下の記事で紹介しています。

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jpw

カーワン氏はワーキングメモリの容量についても数値化しています。このことも紹介しています。

ここまでの内容をまとめると、以下の通りです。

  • 広義の「ワーキングメモリ」は実行機能
  • 狭義の「ワーキングメモリ」は脳内マルチタスク機能(オリジナル)
  • 「ワーキングメモリが狭い」が最も適切な表現