当事者研究ブログ「大人の頭蓋骨縫合早期癒合症」

頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)と高次脳機能障害(容量性注意障害)に関する当事者研究の記録です。言語性ワーキングメモリと日本語(右側主要部の規則)の関係、デフォルトモードネットワークの機能について研究しています。目的①頭蓋骨縫合早期癒合症を成人症例、生活史を記事としてまとめること。目的②特異的言語発達障害の当事者研究をもとに、日本語が日本人の思考に与える影響(サピアウォーフ仮説)を考察すること。

軽度三角頭蓋は手術できず経過観察になるのはなぜ? 頭蓋骨縫合早期癒合症の診断基準と、現行の治療方針アルゴリズムの問題点

軽度の早期癒合症の当事者である私は、軽度三角頭蓋を治療対象外と判断する脳神経外科学の一般認識を見直すべきであると考えます。具体的にはまず、「病的な慢性頭蓋内圧亢進症」の線引きを見直し、軽度慢性頭蓋内圧亢進の再評価と指圧痕を他覚所見として認定すること。そして、三角頭蓋特有の「自閉症類似の神経症状」の病理の模索です。

早期癒合症に起因する症状についての詳細は以下の記事で紹介しています。 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

キーワード:治療方針アルゴリズム、軽度三角頭蓋、軽度慢性頭蓋内圧亢進、ミラーニューロン、非侵襲的頭蓋内圧測定法

頭蓋骨縫合早期癒合症の手術までのプロセス(治療方針アルゴリズム

頭蓋骨の狭小化と変形をもたらす頭蓋骨縫合早期癒合症(以下、早期癒合症)において、解消するべき病的な問題は慢性頭蓋内圧亢進を引き起こすことであり、整容的問題の解消は二の次です。

早期癒合症に対する外科治療は、狭小化および変形した頭蓋骨の再形成手術が実施されますが、これはあくまで手術の内容(方法)にすぎません。外科治療が実施される目的は頭蓋骨の整容ではなく、慢性頭蓋内圧亢進の解消です。

早期癒合症の問題は、頭蓋骨の狭小化と変形という整容的問題だけではありません。頭蓋骨とは異なり、脳の大きさは全く変わりません。そのため脳が頭蓋骨によって圧迫されるという慢性頭蓋内圧亢進を引き起こします。

「早期癒合症に対する手術の目的は、頭蓋形態の改善と、頭蓋容積拡大によって脳の病的圧迫を解除すること、そして慢性的頭蓋内圧亢進による二次的脳障害を予防することである。頭蓋内圧亢進が存在すれば早期減圧が望ましい。」*1

「頭蓋骨縫合早期癒合症では、手術によって改善が期待できるものはあくまで頭蓋形態と頭蓋内圧亢進であり…」*2

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日本児童青年精神医学会 P. 160より引用 

脳神経外科学では、慢性頭蓋内圧亢進の解消を早期癒合症の治療の目的として規定しています。それゆえ慢性頭蓋内圧亢進が認められない場合、早期癒合症の治療をしてはいけません。

重度の慢性頭蓋内圧亢進を引き起こしている頭蓋骨縫合早期癒合症は、病的と判定され外科治療を実施されます。一方、重度の慢性頭蓋内圧亢進が認められない早期癒合症の症例に対しては、外科治療を実施する必要性がないと判断します。 

早期癒合症の外科治療の実施が決まるまでには、およそ3つのハードルが存在します。早期癒合症の治療必要性の是非を判定するために、早期癒合症の他覚所見の確認に加えて、慢性頭蓋内圧亢進の他覚所見の有無を確認します。

早期癒合症の診断過程の詳細を順番に紹介します。

まず、頭蓋骨縫合早期癒合症の診断基準について。早期癒合症は頭蓋骨の狭小化と変形を引き起こす疾患ですが、単に頭の形が変だとか小さいだとかという印象は主観でしかなく、早期癒合症の判断材料になりえません。

早期癒合症の他覚所見は、縫合線上の骨性隆起です。早期癒合症を判定するために触診で骨性隆起を確認します。

縫合線とは ↓

胎児が生まれるとき、そのままの頭の大きさでは産道を通れません。胎児の頭蓋骨にはすき間があります。このすき間があることで頭部を小さくでき、産道を通れるようになります。

この仕組みを骨重積といいます。そして、頭蓋骨に存在する縫合線は、骨重積のなごりです。

早期癒合症には軽度のものから重度のものまで存在します。軽症においても縫合線上の骨性隆起が存在しますが、骨性隆起の盛り上がり具合は、変形の度合いと同様、弱いので、専門医でも触診ではわからない可能性が高いです。

次に、慢性頭蓋内圧亢進の他覚所見の確認について説明します。慢性頭蓋内圧亢進にも軽度から重度が存在します。中等度および典型例程度の早期癒合症では、致命的と評価できるほどの重度慢性頭蓋内圧亢進をもたらします。実際に慢性頭蓋内圧亢進で出現する他覚所見(客観的に評価できる症状)は、以下の3つです。

  • うっ血乳頭
  • 脳浮腫
  • 指圧痕

早期癒合症を抱えていることが認定されたのち、次に医師は重度慢性頭蓋内圧亢進が存在するかを確認しなければなりません。眼底検査は、慢性頭蓋内圧亢進の他覚所見の一つであるうっ血乳頭の確認手段です。

脳浮腫と指圧痕は、MRIで撮影した画像で確認できます。頭蓋内圧亢進で発症する症状は自覚症状を含めてほかにも様々存在します。詳しくは以下のリンク先をご覧ください。 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

慢性頭蓋内圧亢進で発生する他覚所見のうち、うっ血乳頭と脳浮腫の存在を確認できた場合、患者が重度の頭蓋内圧亢進を発症していることを医師が認定し、同時に早期癒合症の外科治療を受ける必要性があると判断します。

頭蓋内圧測定術のリスク:侵襲性

脳神経外科学規定の治療方針アルゴリズムにおいて、頭蓋内圧亢進の判定に存在する方法として、他覚所見の確認以外に「頭蓋内圧測定術」が規定されています。頭蓋内圧測定術は、髄液圧を直接測定できる手段です。頭蓋内圧亢進の判定の手段としては確実的で、他覚所見の確認より勝るといえます。

医学が病的と評価する、重度の頭蓋内圧亢進を認定できる髄液圧数値の規定値は16水銀柱ミリメートル(16mmHg)です。この数値を超えた場合、その原因疾患である早期癒合症に対する手術の実施が決定します。

当事者である私はこれまで、早期癒合症の診断と相談を複数回受けてきました。早期癒合症に起因する慢性頭蓋内圧亢進の有無を確認するために用いられた方法は、全ての診察で、眼底検査とMRI検査のみでした。

頭蓋内圧測定術はよほどのとき以外に実施されないことがわかりました。なぜなら、ご想像の通りこの手段は患者に危険が伴うためです。

現在医療で用いられている頭蓋内圧測定術は脳圧ドレナージと腰椎穿刺が存在しますが、両方とも麻酔を使う手術であり、侵襲性(感染症を引き起こす危険性)が伴う検査です。

私見ですが、早期癒合症の治療必要性を判定するために、頭蓋内圧測定術という手術のような事前検査を実施することは、合理的な方法ではないといえます。重度の頭蓋内圧亢進が出現している場合ならば、例外なく患者に他覚所見が出現しているわけです。その他覚所見を判断材料にすればよいので、わざわざ頭蓋内圧測定術を実施するまでもないといえます。

頭蓋骨縫合早期癒合症は多くの医師によって臨床研究が実施されています。漢字の保護者が臨床研究に同意した場合に限られると思いますが、早期癒合症の解消のための外科治療を実施しているなかで、同時に頭蓋内圧測定術を実施しています。

麻酔を使うことや頭蓋骨にメスを入れるといった侵襲的なことを一度の手術で達成できます。このことから臨床研究を伴う早期癒合所の外科治療の中で頭蓋内圧測定術を実施することは、患児と髄液圧の数値を集めたい医師の利害が一致し、一石二鳥であるといえます。

手術対象の年齢制限

早期癒合症の病態が中等度あるいは典型例ならば、頭蓋形態は素人でもすぐにわかるほど変形しています。そのため、先進国であれば出産後ただちに手術が施されます。

頭蓋骨縫合早期癒合症は遅くとも1歳までに手術を行うとされている。・・・頭蓋骨縫合早期癒合症の治療の目的は、1番目に整容であり、2番目に脳機能障害を予防するということである。*3

脳神経外科学の一般認識では、中等度および典型例程度の早期癒合症を治療対象として想定しています。対象年齢について1歳未満という基準を提示しています。出生時から容易に鑑別できること、そして重度の慢性頭蓋内圧亢進をもたらすものであるため、出生後すぐに外科治療を実施しなければならないという意図を示しています。

一般認識とは別の見解として、軽症例(軽度三角頭蓋)に対する外科治療を列挙すると、下地武義先生は対象年齢を原則9歳と設定しています(2018年)。しかし、頭蓋内圧亢進が認められる場合は、年齢にかかわらず、手術対象にするという考えを提示しています。

年齢制限が存在する根拠を、神経症状の視点から考察した内容は別の記事(改訂中)で紹介します。

「頭蓋内圧亢進」の定義の問題点:軽度慢性頭蓋内圧亢進を排除

先述したように、脳神経外科学による「頭蓋内圧亢進」の規定値は、髄液圧が16水銀柱ミリメートル(16mmHg)です。これに対して、健常者の髄液圧は正常値の10mmHgを下回る数値です。このように髄液圧の正常値と頭蓋内圧亢進の規定値との間には、隔たりが存在します。

空白となっている「11mmHg~15mmHg」の間の髄液圧の数値は、いわば軽度慢性頭蓋内圧亢進といえる状態であり、正常値ではありません。しかし、脳神経外科学が規定する「頭蓋内圧亢進」の定義は致命的な重度の頭蓋内圧亢進に限定されるため、脳神経外科学は軽度慢性頭蓋内圧亢進を「病的ではない状態」とみなします。

11~15mmHgに対する脳神経外科学の解釈の根拠は、「病的と評価できる重度の慢性頭蓋内圧亢進ではない」という恣意的で、実体性がありません。実際には軽度慢性頭蓋内圧亢進によって発症している症状と軽度慢性頭蓋内圧亢進の因果関係を疑うという視点を医学は形成できない状態が続いています。

すると、頭蓋内圧亢進に関する脳神経外科学の本音は、「軽度慢性頭蓋内圧亢進は致命的ではないので、無理に外科治療を実施して改善するほどのものではない」というものです。

頭蓋内圧亢進の他覚所見として認められない指圧痕

髄液圧とそれぞれの状態で発症する他覚所見は以下の通りです。

  • 10mmHg:正常値
  • 11~15mmHg:軽度慢性頭蓋内圧亢進(指圧痕)
  • 16mmHg~:重度の頭蓋内圧亢進(脳浮腫、うっ血乳頭)

頭蓋内圧亢進時に出現する他覚所見のうち、うっ血乳頭と脳浮腫が頭蓋内圧亢進の他覚所見として医学によって認定されています。一方の指圧痕に対しては、医学は「慢性頭蓋内圧亢進の他覚所見」として認定していません。

軽度慢性頭蓋内圧亢進を医学は病的ではない、というより軽度慢性頭蓋内圧亢進を想定していないゆえにこれを健常者と同一と評価しています。この論理の存在ゆえに、指圧痕が健常の状態でも発症しうると解釈しています。

指圧痕については、詳細は以下のリンク先の記事で紹介しています。

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軽度三角頭蓋が手術適応外と即断されている

三角頭蓋の条件にあてはまらない?

脳神経外科学が規定した早期癒合症の治療方針アルゴリズムに従うと、頭蓋内圧亢進が重度ではない軽度の早期癒合症の症例に対しては経過観察となり、手術の実施を見送るという結論が導き出されます。ただし軽症例に対する脳神経外科学の認識には例外があります。軽度三角頭蓋について、脳神経外科学では治療対象として認めないと考える医師が多いそうです。

軽度三角頭蓋は、前頭縫合が早期に閉じた三角頭蓋の軽症例です。しかし、脳神経外科学は、軽度三角頭蓋の病態が三角頭蓋の構成要件を軽症例であれば頭蓋内圧亢進の程度は最も弱いと即断する認識だそうです。

三角頭蓋で問題となっている前頭縫合線は他の縫合線とは異なり、健常者の場合でも完全に消失します。そして、早期癒合症の中等度および典型例程度症例には、前頭縫合の骨性隆起以外にも、所見があります。軽度三角頭蓋に対する認識に関する詳細は以下の通りです。

前頭縫合はほかの頭蓋骨縫合と異なり、健常児でも3か月から癒合が始まり8か月ごろまでに癒合が完成する。そのため8か月以降に認められる前頭縫合隆起のみでは病的所見とは呼べず、前頭部大脳圧迫所見、眼窩間距離短縮、眼窩の変形を伴うものが三角頭蓋と診断される。*4

そのうえ、前頭縫合に骨性隆起を持つ健常児が存在することを挙げていることから、脳神経外科学の軽度三角頭蓋に対する一般認識は、「健常児の個人差」ということになります。

軽度三角頭蓋の外見的特徴をテーマに私が書いた記事は、以下のリンク先です。

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

軽度三角頭蓋が頭蓋内圧亢進を引き起こさない?いいえ、頭蓋内圧亢進はあります

軽度三角頭蓋を早期癒合症と認めないので、当然、「病的」な頭蓋内圧亢進(脳神経外科学規定の16mmHg異常)を引き起こさないとも考えています。これが、軽度三角頭蓋を外科治療の必要性がないとみなす理由です。

軽度三角頭蓋は、整容的な手術の必要が無いこと、症状(頭蓋内圧亢進に起因する)の発現がないとされてきたことがこれまでの常識である。*5

 「単一縫合早期癒合症には頭蓋内圧亢進や発達障害は生じないという一般的な考えにより、軽度三角頭蓋の手術に対して、多くの小児科医をはじめ小児脳神経外科医においても批判的」*6

では、軽度三角頭蓋は頭蓋内圧亢進を引き起こさない、いわば「健常者の個人差」に該当するものでしょうか。

ここに、軽度三角頭蓋に対する脳神経外科学の認識が誤っていることを示すデータを紹介します。それは、下地武義先生が軽度三角頭蓋の患児に対して測定した髄液圧の数値に関するデータです。

下地武義先生の臨床研究で軽度三角頭蓋の患者の髄液圧を測定したところ、脳神経外科学規定の「頭蓋内圧亢進」の基準を満たす数値を示す症例は、全体の過半数を占めています。 

頭蓋内圧測定 2016年まで446症例(一部割愛)*7

  • 頭蓋内圧値が10mmHg以下(健常者と同値)は43症例(7.6%)
  • 頭蓋内圧値が11~15mmHgは115症例(25.8%)
  • 頭蓋内圧値が16mmHg以上は297症例(66.6%)

最も悪影響が小さいと思われがちな軽度三角頭蓋においても、髄液圧の数値が健常者と同じである症例はわずか7.6%しか存在していません。 重度慢性頭蓋内圧亢進の他覚所見(うっ血乳頭や脳浮腫)が発生していないだけで、病的な頭蓋内圧亢進がないと判断することが誤りであることを示しています。

最も悪影響の範囲が小さい早期癒合症タイプと考えられている軽度三角頭蓋でさえ、上記の髄液圧を示しています。それゆえ、早期癒合症の軽症例は基本的に病的な慢性頭蓋内圧亢進を引き起こすと考えるべきでしょう。

また、軽度慢性頭蓋内圧亢進であったとしても、正常値でもなく、かといって病的ともいわずにグレーゾーンとして精査しないままの状態を医学が放置している状況は結構まずいと思います。 

精神医学が認めない三角頭蓋の「自閉症類似の神経症状」

三角頭蓋には変形した頭蓋骨の一部が、脳部位への局所的な圧迫という、慢性頭蓋内圧亢進とは別の問題が存在することが下地先生の研究で判明しています。下の資料は、下地先生が臨床研究で作成した、軽度三角頭蓋の患者が発症していた身体症状および神経症状の種類別の症例数に関する統計資料です。

全541例 2015年まで*8

  • 言葉の遅れ    : 517例
  • 運動遅滞     : 153例
  • 多動       : 412例
  • 自閉傾向     : 342例
  • 自傷行為     : 142例
  • パニック・イライラ: 237例
  • 睡眠障害     : 132例
  • 偏食       :  73例
  • 頭痛       :   8例
  • 嘔吐       :  18例
  • 退行       : 121例

上のデータには、従来から知られている慢性頭蓋内圧亢進による身体症状と神経症状が含まれていますが、一方で慢性頭蓋内圧亢進に起因する症状とは別の症状が出現していることが読み取れます。342件の症例が存在する「自閉傾向」や73件の症例が存在する「偏食」を挙げられる「自閉症類似の神経症状」がそれに該当します。

下地先生は、この自閉症類似の神経症状を発症している三角頭蓋の症例では、変形した蝶形骨縁が弁蓋部を局所的に圧迫しているという共通点が存在することを報告しています。

弁蓋部に覆われている島皮質などは、認知的共感の神経経路の一部である可能性が高く、ミラーニューロンである可能性が高いことで知られています。ことはリゾラッティによる研究で明らかになっています。

bsd.neuroinf.jp

下地先生は、三角頭蓋と同時に弁蓋部への局所的な圧迫が発生している場合、それが原因で「自閉症類似の神経症状」を引き起こすことをミラーニューロン仮説を用いて提言しています。また、早期癒合症の病態の程度や慢性頭蓋内圧亢進の有無にかかわらず、「自閉症類似の神経症状」を引き起こす原因が存在しうることも提言しています。

下地先生が提言の中で参照してるミラーニューロン仮説は神経科学で、精査する余地があるとを評価されています。私見ですが、下地先生が提言している内容が統計学的に正確で的を射ているものであったとしても、精神医学で下地先生の提言を受け入れられない理由は、その根拠理論が定説ではないことでしょう。

軽度三角頭蓋の外科治療の論争では、下地先生の臨床研究について、症例数をもっと増やすことでエビデンスとしての信用が高まるといわれています。

また、下地先生は三角頭蓋の症例の中に、蝶形骨縁による局所的な圧迫を解消しても「自閉症類似の神経症状」の予後が不良の症例が存在することを報告しており、その原因を考察する必要性を言及しています。

治療方針アルゴリズムを見直すための解決策:非侵襲的頭蓋内圧測定法

早期癒合症に対する治療方針の内容が現状維持となると、どのようなことが起きるでしょう。うっ血乳頭以外の頭蓋内圧亢進に起因する身体症状および精神症状があらわれている、軽度の早期癒合症(軽度三角頭蓋)を抱える児童は多くいます。すると、彼らの治療の機会が奪われることになります。クリティカルエイジのこともあるので、彼らが治療の機会を得ないまま放置されるという最悪のシナリオを阻止しなければならないと私は思います。

軽度三角頭蓋だけに限らず、早期癒合症に起因する慢性頭蓋内圧亢進について、軽度慢性頭蓋内圧亢進を含めて精査する臨床研究を進めるべきだと思います。

その解決策ですが、簡単に実施できる頭蓋内圧測定術を開発されるべきでしょう。先述の通り、現在医療の現場では侵襲的頭蓋内圧測定法が用いられています。その一方で非侵襲的頭蓋頭蓋内圧測定法が開発されているそうです。

www.med-device.jp

実用化が実現されれば、早期癒合症の診断過程の中で患児の髄液圧の数値という絶対的な判断指標を獲得できるようになります。

現在の治療方針アルゴリズムでは、他覚所見の発現のみで慢性頭蓋内圧亢進の有無を判断し、早期癒合症の治療を決めるようになっていますが、非侵襲的頭蓋内圧測定法で簡単に髄液圧を測定できるようになれば、治療方針アルゴリズムを変える機運を形成できるようになるかもしれません。

参考文献

  • 「倫理委員会パネルディスカッション 発達の障害を有する子どもへの軽度三角頭蓋の外科治療と臨床研究の倫理」、日本児童青年精神医学会 『児童青年精神医学とその近接領域』 第57巻 第1号、2016年 

文章の一部がインターネット上にアップされていたので、以下に紹介します。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/57/1/57_152/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscap/57/1/57_157/_pdf

  •   下地武義 「三角頭蓋奮闘記 あきらめない この子達に未来はある」、諏訪書房、2018年6月初版発行

*1:井原, 2016, p. 159

*2:同上, p. 160

*3:下地 p.26

*4:井原, 2016, p. 159

*5:下地 P.26

*6:下地, 2016, p. 156

*7:下地 P.101

*8:下地 P. 94