当事者研究ブログ「大人の頭蓋骨縫合早期癒合症」

頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)と高次脳機能障害(容量性注意障害)に関する当事者研究の記録です。言語性ワーキングメモリと日本語(右側主要部の規則)の関係、デフォルトモードネットワークの機能について研究しています。目的①頭蓋骨縫合早期癒合症を成人症例、生活史を記事としてまとめること。目的②特異的言語発達障害の当事者研究をもとに、日本語が日本人の思考に与える影響(サピアウォーフ仮説)を考察すること。

人の話を聴き取れない、理解できない聴覚情報処理障害は何科で診断できる? / タイプ別診断チェックリスト(ADHD, 自閉症スペクトラム障害, 容量性注意障害)

聴覚情報処理障害を診断できる専門の施設に関する情報、および聴覚情報処理障害のタイプ別診断チェックについての記事です。(キーワード:音声認識、言語理解、ADHD、聴覚過敏、容量性注意障害、特異的言語発達障害、口下手) 

 

聴覚情報処理障害の定義と原因疾患(別記事リンク)

このページで紹介されている聴覚情報処理障害についての情報(聴覚情報処理障害のタイプ、メカニズムの観点)は、以下の記事のなかで導き出された考察をもとにしています。 

この記事の内容を要約しますと、以下の通りです。

  • 音声言語医学のなかでは、「聴覚情報処理障害」という概念の定義が定まっておらず、論争は2019年現在に至るまで続いている。
  • 原因不明の聴覚情報処理障害のサブタイプは、「容量性注意障害」である。
  • 容量性注意障害の原因の一つとして、頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)で発生する脳組織への圧迫が挙げられる。

当ウェブサイトでは、聴覚情報処理障害の定義をめぐる論争についての論評も発信しています(下リンク)。 

聴覚情報処理機能の低下が認められる疾病は、以下の通りです。

  1. うつ病報酬系の機能低下が、聴覚情報処理機能の低下を引き起こす。
  2. 広義の聴覚情報処理障害:聴覚情報処理機能の低下症状を引き起こす器質性の神経症状。例:自閉症スペクトラム障害(聴覚過敏、解離)、ADHD(実行機能の無効化)
  3. 狭義の聴覚情報処理障害:上記の2つを除く器質性の神経症状。現状、音声言語医学においては、原因が明らかになっていない。例:容量性注意障害に起因する特異的言語発達障害

耳鼻科で聴覚情報処理障害は診断できない

聴覚情報処理の種類、「聞こえる」と「聴ける」の違い

聴覚情報処理とは耳という感覚器で音声を知覚する行為のことです。これを日本語で文字におこすと「聞く」と「聴く」であり、この2つの表現は同音異義語の関係になります。ただ、両方の漢字に「耳」という文字が入っているので、決定的な違いというのがよくわかりません。

この2つの表現の違いについての説明をしているサイトがありましたので、下に引用します。

ただ単に「きく」場合は一般に「聞く」を使い、注意深く(身を入れて)、あるいは進んで耳を傾ける場合には「聴く」を使います。「音楽を聴く」「講義を聴く」

NHK放送文化研究所HPより*1

実は「聴く」と「聞く」のように聴覚情報処理に関する表現が複数存在する言語は、日本語だけではありません。英語では、hearが「聞こえる」に対応しており、listenが「聴く」でしょう。

例文を提示します。

  • お子さんが生まれたことを聞きました。(伝聞)
  • 物音が聞こえる(聴覚情報の存在を知覚)
  • 音楽を聴く
  • 事情を聴く(聴取)

まず、「聞く」(hear)とは、聞き入れるべき音声情報を知覚することです。聴力が十分であることによって、聞くことを実現できます。類義語表現は「耳にする」が挙げられます。音声言語医学上の表現を用いると、「聞く」は音声認識を指します。

一方の「聴く」とは、知覚した音声情報を認知する行為のことです。当然のことながら音声情報を知覚できなければ、「聴く」ことを着手できません。これに加えて、認知するための脳機能が必要です。 

具体的には、人の話を聴きとる場合は、聞いた音声情報が持つ言語情報の側面を理解しなければなりません。このことから、音声言語医学上の表現を用いると「聴く」は音声認識と言語理解を含めるといえます。

聞こえる専門の耳鼻科は「聴き取り」はわからない

耳鼻科で実施可能な聴覚に関する検査は、聞くという知覚に関する機能の程度を調べられます。これによって機能性難聴の有無を判定できます。一方で、聴覚情報処理障害の有無の判断は不可能です。

精神医学を除く医学は、自覚症状ではなく他覚所見の有無を評価することによって診断が可能であり、治療を実施できます。機能性難聴は他覚所見として評価することが一応可能であるため、耳鼻科で対策を練られます。

一方、先のリンクで紹介しているように、聴覚情報処理障害を引き起こす精神症状は、音に対する好き嫌いの評価や、注意制御といった主観的かつ形而上の問題が介在して発生しているものです。頭痛のように五感で感じられる症状でもないため、自覚症状とも言えないでしょう。それゆえ、聴覚情報処理障害の当事者が訴えている「問題」は、耳鼻科で規定されている他覚所見の客観的に評価スケールを用いて評価できません。

なかには、音声言語医学に精通する耳鼻咽喉科の医師も、福島邦博先生(後述)を筆頭に存在するようです。しかし、ほとんどの耳鼻咽喉科においては、音声言語医学は専門外ですので、基本的に聴覚情報処理障害を知らないと考えるべきでしょう。

となると、検査をしても異常箇所が見つからないはずなので、多くの場合でストレス(神経症)が原因であると推察的な判断され、「経過観察」となるでしょう。言い換えれば匙を投げられるということです。

聴覚情報処理機能の低下を引き起こす精神疾患のうち、うつ病ADHD、自閉スペクトラム障害は、すでに精神医学に公認されています。もしあなたの「聴覚情報処理障害」の原因がこれらであった場合は、精神科にかかった場合でも対処可能です。

精神科では、原因疾患の検査を受け、診断が下りた際にはSST、あるいは投薬などの治療を受けられます。しかし、精神科での治療では聴覚過敏などの症状に対応できない可能性があるので、その場合は専門家(言語聴覚士など)を紹介してもらうべきでしょう。

聴覚情報処理障害のチェック診断:あなたの聴覚情報処理機能の低下症状はどのタイプ?

聴覚情報処理障害の疑いがある症状について、正確な診断を受けるならば、聴覚情報処理障害の専門家に直接診断してもらうことに越したことはありません。しかし、遠隔地に住んでいらっしゃる方々は専門家が在籍している施設に行くことは難しいでしょう。

そこで、聴覚情報処理障害のサブタイプがわかるオリジナルの診断を簡単に作りました。是非参考にしてください。 

1 口下手 

A. 容量性注意障害

まず、聴覚情報処理障害のひとつである特異的言語発達障害の性質は、言語理解だけでなく言語運用にも悪影響が見られます。

ここでの「口下手」とは、重文複文といった複雑な統語構造を持つ言語情報を出力するための情報処理に時間がかかることを意味します。口下手ならば、特異的言語発達障害タイプです。

ちなみに、ADHDは口下手ではありません。受動的行為である聴覚情報処理とくらべると、話すという行為は能動的行為であるため、ADHDによる悪影響は少ないと考えられます。

2 文章読解力が低い 

A. 容量性注意障害、あるいはADHD

言語性知能が高い(文法に対する理解度や語彙力が高い)にもかかわらず、読解力が低い場合が存在します。その病理は2つ存在します。

ADHDの場合

読む行為自体に対する集中が困難であることに由来する、読解力の低さです。ADHDに限らず、実行機能(注意制御・衝動抑制)が未発達である子供も含まれます。

例えば、両者は読解問題を説いているときに、頭の中で突発的に音楽が再生される現象を体験するはずです(音楽への嗜好が高いは特に)。そして、その音楽の脳内再生を止めることは困難です。この現象をイヤーワームといいます。そしてイヤーワームは衝動性のひとつであるといえます。

容量性注意障害の場合

読む行為自体には集中できており、単語レベルの意味の理解を達成できているという点において、ADHDとは異なります。しかし、短期記憶として覚えられる情報量が少ない(厳密には1チャンクのみ)という問題が存在します。

すると、複雑な統語構造を持つ文の意味を一度に理解する(読解も同じ)ことが困難になり、何度も読み返さなければならないため、理解が遅くなります。すると、文の集合体である文章全体の読解を達成する速度が遅くなります。

容量性注意障害は、ワーキングメモリの無効化です。ワーキングメモリが無効化されることで、言語理解が困難になるだけでなく、同時処理が必要になる聴覚情報を処理する機能の低下も引き起こされます。

私を含めて、容量性注意障害の患者はワーキングメモリが必要になる二重課題を遂行しているとき、健常者であれば活性化する大脳皮質全体の血流量が低下し、逆に不活性になります。容量性注意障害の症状の特徴や原因疾患に関しては、下のリンクの記事のなかで紹介しています。  

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

3 多声音楽を構成する複数の旋律を同時に聴きとれない 

A. 容量性注意障害

ポップスなどの音楽では存在しませんが、クラシックの楽曲のなかには、同時に複数の声部(旋律)が対等に進行する楽曲が存在します。これを「多声音楽(ポリフォニー)」といいます。楽曲形式ではフーガやカノンが多声音楽に該当します。

ベートーヴェンピアノソナタ第29番 ”ハンマークラヴィーア” 第4楽章>  


Glenn Gould - Beethoven Sonata 29 in B flat major "Hammerklavier" 4th movement

ネルソンコーワン氏が提唱する、「マジカルナンバー4」というワーキングメモリの容量に関する理論に従うと、健常者であれば、同時に4つ前後の旋律を聴き取ることが可能です。

一方の容量性注意障害の場合、保持可能な短期記憶の個数が1であるため、聴くことに集中したとしても同時に複数の旋律を聴き取ることができません

このことは言語理解においても同じことがいえます。すなわち容量性注意障害は、同時に複数の言語情報、および複雑な文を理解するのが困難という特徴を持ちます。

4 不協和音で構成された音楽を聴くのが苦痛である

A. 聴覚過敏(自閉症ペクトラム障害)

以下の音源、聴覚過敏を持つ方は視聴注意。

プロコフィエフ:悪魔的暗示>


S. Prokofiev : "Suggestion Diabolique" op. 4 no. 4 (Chiu)

<アイヴズ:ピアノソナタ第2番 (特に第1楽章)>


Charles Ives - Piano Sonata No.2, "Concord, Mass., 1840-1860"

聴覚過敏の方は、不協和音が多用されている前衛的音楽(クラシックの代表例:プロコフィエフショスタコーヴィチによる一部の曲など)を聴く行為そのものが苦手です。

自閉症スペクトラム障害と不協和音に関する研究(下記リンク)が実際に行われており、「自閉症スペクトラム障害においては、不協和音の聴き取り行為に苦痛を感じる傾向が認められる」という結論が提示されています。

聴覚情報処理障害を扱っている医療機関一覧(敬称略)

聴覚情報処理障害を扱っている研究領域は、現時点では音声言語医学だけであり、一般的な医学においては疾患概念として認知されていません。聴覚情報処理障害研究の第一人者である小渕千絵先生の著書では以下のような文が書かれています。

APDに関しては原因や評価、支援方法などが確立されているとは言えず、医療機関教育機関での混乱も大きい*2

なので、聴覚情報処理障害の診断を目的に医療機関にかかる場合は、言語聴覚士、あるいは聴覚情報処理障害を知る医師(精神科、耳鼻科に限られるでしょう)が在籍している専門機関にかかるのが確実です。

以下、聴覚情報処理障害を診断できる医療機関を列挙します。紹介する医療、研究機関の選抜基準は、聴覚情報処理障害に関する論文を執筆している先生方が在籍している医療機関であることです。

聴覚情報処理障害の啓発活動を行っている耳鼻咽喉科の医師は稀有です。その一人でいらっしゃる平野先生が開業している病院です。聴覚情報処理障害のためのウェブサイトを開設していらっしゃいます。

福島先生は、聴覚情報処理障害に関する論文を執筆しています。

福島邦博 医師(ふくしまくにひろ)|ドクターズガイド|時事メディカル

聴覚情報処理障害の診断の現状と、受診することについての持論

聴覚情報処理障害の専門機関では、予約が殺到しているようです。

聴覚情報処理の問題点に対する分析に特化した先述の専門機関で診察を受けることに越したことはありませんが、「広義の聴覚情報処理障害」(聴覚過敏やADHD由来の聴覚情報処理機能の低下症状)の場合は、上記の聴覚情報処理障害の専門医療機関への受診することよりも、原因疾病に対する治療を精神科で受けることのほうが、手っ取り早いと私は考えています。

これに対して、狭義の聴覚情報処理障害であると私が考えている容量性注意障害の方は、残念ながら精神医学ではその疾病単体の病理の研究は行われていません。音声言語医学においても、容量性注意障害と聴覚情報処理の関係について言及している研究者はいらっしゃらないようです。

この現状を打開するために、私は当事者研究を「一般化」させるなど、研究活動を展開し、啓発活動を行う所存です。

私の聴覚情報処理障害の原因疾患は頭蓋骨縫合早期癒合症です

かくいう私も、聴覚情報処理障害を抱えている当事者の一人です。過去には言語発達遅滞があり、読解やリスニングが非常に苦手であることや、機能代償に起因すると推測している疲労感を覚えるといった症状があります。

私の聴覚情報処理障害のサブタイプは、容量性注意障害に該当します。そして、私の容量性注意障害は、頭蓋骨縫合早期癒合症に起因する高次脳機能障害です。

詳細は以下のリンク先の記事で紹介しています。 

<引用文献>

音声言語医学 56巻 4号 2015年10月

小渕千絵「聴覚情報処理障害(auditory processing disorders, APD)の評価と支援」

*1:

www.nhk.or.jp

*2:小渕, 2015, p. 302