当事者研究ブログ:大人の頭蓋骨縫合早期癒合症

頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)と高次脳機能障害(容量性注意障害)についての当事者研究のノートです。言語性ワーキングメモリと日本語(右側主要部の規則)の関係について研究しています。目的①頭蓋骨縫合早期癒合症を成人症例、生活史を記事としてまとめること。目的②特異的言語発達障害の当事者研究をもとに、日本語が日本人の思考に与える影響(サピアウォーフ仮説)を考察すること。

英語脳と日本語脳(1):主要部後置型言語(SOV)の英語が論理的である理由

文中語句の優先順位について、意味の観点で最も高い文中語句は主語と述語です。次に統語論の観点から評価すると、術語がなければその言語情報は文として成り立たないため、第一優先事項として術語は文の主要部として規定されています。そして、術語が示す「動作」には、必ず動作の主体が存在します。ゆえに統語論の観点から見ても主語と述語の優先順位が最も高いといえます。

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空気を読みすぎる日本人、同調圧力に対する感受性の違い(HSPと集団同調性バイアス)

キーワード:公的自己意識、HSP、自我不確実感、べき論、日本語、語順

  • 日本人の国民性と公的自己意識
  • 同調圧力に屈しない人は嫌われることを恐れない
  • HSPにみられる過剰同調性の特徴
  • 同調圧力を発する集団同調性バイアス
    • 集団同調性バイアスの自己意識
    • 同調圧力という「べき論」
    • 集団同調性バイアスが抱える不安
  • 日本人の過剰同調性と日本語文法
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日本人の国民性と言語相対性仮説(4):空気を読む能力(忖度、同調)と日本語の主要部後置型語順

日本社会の息苦しさを感じる、言い換えると生きづらいと考える日本人が多い、あるいはそう考えるようになってしまうリスクが周辺諸国より高いことについて、まず日本人の公的自己意識が過度に高いことに注目するべきと私は考えます。公的自己意識が過度に高い状態であり、自分の欲求よりも社会的評価を優先する思考様式であるため、危機的状況に対して発生した不安を処理するために本来発するべき怒りの感情の矛先を相手にぶつけることができません。そのかわりに「自分が悪い」とか「多くの人に迷惑をかけてしまう」などと考えやすくなるなど、つまり自尊感情が低くなる傾向が強いと思います。
atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

公的自己意識が過度に高いことのメリットといえば、自分の社会的立場に意識を向けるようになるため、自分自身の社会的評価を上げることに注力します。表向きには例えば相手に対して礼節を尽くさなければならない(いわゆる「おもてなし」)と考えるようになったり、上下関係を意識するようになったり敬語を使うようになったり、といった行動様式となりますが、その実は不安であり、相手を不愉快にさせないために自分の振る舞いに気を付けているというものでしょう。

冒頭で説明した日本人が感じる「息苦しさ」とは、公的自己意識が高いせいで、同調圧力を感じ取るという状態によるストレスに起因すると私も考えます。そして、「空気を読むべき」という「べき思考」によって発生しているともいえるでしょう。言い換えるならば忖度という認知的共感を酷使しなければならない環境下に、日本人はおかれているということです。日本人は空気を読むことに対する「べき思考」を持ち、そしてそう考える日本人が多いゆえに、同じ内容の「べき論」が日本人で構成されている社会に浸透しているというふうに言えます。

しかし、べき思考を持っているから空気を読む力を活用しているのではないと私は考えています。日本人について、他の民族と比べてその力、すなわち空気を読んだり、相手の真意をくみ取るという認知的共感に優れている民族ではないでしょうか。その理由には、日本語の特徴から導き出せると私は考えています。

別の記事で私は「日本人にとっても日本語が難しいはず」という持論を展開しています。その根拠として私が列挙している日本語の難しい要素は、以下の3つです。

  • 敬語
  • 漢字
  • SOV語順

相手に敬意を伝達させるための言語表現である敬語については、自分の社会的立場を意識していることで発生したのだろうと私は思います。つまり、敬語は日本人の忖度力を示す行動の一つに過ぎません。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

残りの二つ、漢字とSOV語順こそが、日本人の忖度力を挙げている要因だと私は考えています。

漢字には同音異義語があります。同音異義語を聴き言葉から適切に導き出すためには、相手の考えていることを周辺状況や相手の状態から推察する必要があります。

他方の日本語のSOV語順が日本人の忖度力に与える影響は、漢字より大きいものと思います。日本語の文は、主要部となる術語が一番最後に配置される言語であることから、相手が冒頭で話し出す言葉が無限であり、英語のように予測できません。そのうえ主語の省略が頻繁に行われます。日本語の文を完全に理解するためには、当然のことながら冒頭に出現する目的語、従属節なども聞き取らなければいけません。これを達成するためには、これもまた相手の考えていることを周辺状況や相手の状態から推測する必要があります。

そのうえ、英語とは違い、日本語の文は話す人によって語順が違うため、相手の語順に自分を合わせなければなりません。つまり、相手の話を理解するためには、頭の中で相手の話を追唱(シャドーイング)するくらいしなければなりません。自分の文法ではなく相手の文法に従わなければならないのですから、このとき日本人は公的自己意識に注意を向けているに違いありません。

日本人は日本語を母国語として習得しているため、日本語のSOV語順の難しさを自覚することが難しいですが、普段何気なく実行している会話で頻繁にエラーが発生しています。聴く側が聴いた文が、その冒頭が主要部(主語や術語)ではない文であった場合、その目的語を聞き逃した際に実行する聞き返しやフィラー、重言などです。

まとめると日本語のSOV語順を処理するためには、公的自己意識に注意を向ける必要性があります。相手の文法に合わせる行為の繰り返しによって、日本人の公的自己意識が過度に高くなり、その結果認知的共感の一つである「空気を読む力」を使うことが習慣となり、その結果「空気を読む」という強迫性(べき思考)に思考が支配されてしまった結果ストレスにさいなまれたケースが、日本人の生きづらいという感情、あるいは日本社会の息苦しさではないかと私は考えます。