「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

認知心理学の研究をする頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者が考えたことを書いていきます。扱っている症状は原因不明のものばかり(泣)。当ブログの記事における内容及び理論は無断転載及び引用は禁止です。更新情報はツイッターでも配信しています。

斜視と併発する「軽度発達障害」の真相:頭蓋内圧が亢進したときに併発する(早期癒合症との因果関係あり)

「軽度発達障害児における眼疾患の検討」で記載されたデータを参照しながら、斜視と「軽度発達障害」の関係性について考察しました。(キーワード:頭蓋内圧亢進、早期癒合症、グレーゾーンとは )

 

序論

  • 頭蓋内圧が亢進したときに斜視と精神症状が併発する。
  • 通常の早期癒合症は、基準値以上の頭蓋内圧亢進を引き起こす
  • 基準値以上の頭蓋内圧亢進を引き起こさない軽度早期癒合症でも、「早期癒合症特有の精神症状」、および斜視が併発する。
  •  斜視と併発する「軽度発達障害」とは、「早期癒合症特有の精神症状」である。

 

斜視と「軽度発達障害」の関係についての先行研究

斜視と発達障害の関係について言及している研究は、過去に行われています。その研究が以下のものです。 

 

この研究では、「軽度発達障害を抱える人物に斜視が併発する確率が高い」という結論を、統計データから導き出しています。

 

「軽度発達障害」の意味

この言葉と同じ使われ方をしている概念として、「グレーゾーン」や「特定不能の広汎性発達障害」などの表現が存在します。

実は、DSM-5による精神障害概念ガイドラインには、これらの概念は存在しません。ですので、精神科においても正式な診断として用いることはできないはずです。

厳密にいえば、定義づけられている発達障害ではない精神症状を指します。すなわち、ADHD自閉症スペクトラム障害学習障害といった精神障害には当てはまらない精神症状、あるいは症候群が、「軽度発達障害」に代表される不特定概念を用いて説明されています。

  

斜視は「軽度発達障害」との因果関係をもたない

先に結論を言うと、斜視が「軽度発達障害」を引き起こすだとか、あるいはその逆のことは、ありえません。

たとえば、株式会社Litalicoのウェブサイトでは、上記の論文をベースに斜視と発達障害の関係について言及している記事があります。

発達障害の特徴を示す子どもの中には、キャッチボールが苦手だったり集中力が続かなかったりという症状を持つ子もいます。このような症状には、斜視を含めた目の病気が隠れていることもあります。

斜視には遠近感や立体感をつかみづらいという症状があります。遠近感がうまくつかめないと、ボールはキャッチできません。物が二重に見えたり立体感がつかめなかったりすると、折り紙やお絵かきも疲れてしまいます。二重に見えることで、学習障害(LD)に見られる文の読み書きの苦手も起こります

斜視を含めた目の病気には「見る力」を弱めてしまうものもあります。斜視であっても視力は良いというケースも珍しくありません。

もちろん、発達障害による症状と斜視を含めた目の病気による症状が混在していることもあります。発達障害のある子どもの困難に、目の病気が関わっている可能性があることも見過ごせません。

 

この記事の中には、学習障害にみられる文の読み書きの苦手」という表現を用いた意図は不明確ですが、これは誤解を生みやすい表現です。

注意するべきことは、「斜視による文の読み書きの苦手」は「学習障害」ではないということです。本来ならば「文の読み書きの苦手という学習面での悪影響」というべきでしょう。

たしかに、斜視による二次障害(眼精疲労など)により学習能力などの低下が起きる可能性は十分にあります。しかし、それは単なる悪影響であり、発達障害とは全く異なります。

「斜視が発達障害を引き起こす」という現象は病理学的にも考えられません。

 

斜視と精神症状を引き起こす「頭蓋内圧亢進」

これまでは、斜視だから「発達障害」になるとか、「発達障害」だから斜視になるという因果関係はあり得ない、という内容でした。しかし、精神症状と斜視の併発率が高いという研究結果があることから、斜視と「軽度発達障害」の関係の存在を否定できません。

実際、医学的にエビデンスとして認められている、精神障害と斜視の両方を発生させる「現象」があります。

それが、頭蓋内圧亢進です。

 

頭蓋内圧亢進が斜視を引き起こす病理(外転神経麻痺)

斜視は、視神経の麻痺によって発生します。

視神経は、脳内の長い距離を走る運動神経です。ゆえに脳内環境の変化の影響を最も受けやすい運動神経なのです。頭蓋内圧亢進のような脳内部の圧力が上昇すると状態ですので、視神経が圧迫される、というのは想像に難くないでしょう。

頭蓋内圧亢進を引き起こす症例の一つに、脳内出血を例にあげましょう。このとき識障害と同時に、内斜視も現れます。頭蓋内圧亢進によって、圧迫された外転神経が麻痺するためです。これを外転神経麻痺といいます。

ちなみに手術で頭蓋内圧亢進が解消されると、麻痺していた視神経の機能が回復するので、意識障害とともに外転神経麻痺も根本的に治癒します。

 

頭蓋内圧亢進による精神症状

急性的な頭蓋内圧亢進による精神症状(脳卒中

頭蓋内圧亢進が急性的であるか、あるいは慢性的であるかによって、頭蓋内圧亢進による精神症状の現れ方が異なってきます。

先述した脳内出血は頭蓋内圧亢進のうち急性症状のほうに該当します。急性症状とは通常の脳の状態から急速に頭蓋内圧亢進が悪化するものを指します。精神症状は、「前頭葉徴候」に代表される意識障害が発生します。

 

慢性的な頭蓋内圧亢進による精神症状(早期癒合症)

一方の慢性的な頭蓋内圧亢進には、頭蓋骨縫合早期癒合症や水頭症が該当します。慢性的な頭蓋内圧亢進は辺縁系の神経発達に悪影響を及ぼし、その結果、多動を伴う「精神運動発達遅滞」が認められるようになります。この精神症状は見方によっては「発達障害」と評価することも可能です。

臨床研究では、早期癒合症の手術の効果は以下の通りです。

  • 頭蓋内圧亢進が解消される。
  • 多動症状が解消される。
  • 手術時の年齢が早ければ早いほど、神経発達の悪影響を防ぐことができ、知能面の発達が見込められる。

 しかし、斜視との関係性を疑われる精神症状は「軽度発達障害」でした。これに対し、頭蓋内圧亢進時の精神症状である「精神運動発達遅滞」は、「軽度発達障害」という表現に当てはまらないほど重篤な症状を呈します。

おそらく、冒頭の研究で報告されている「軽度発達障害」と斜視の併発は、頭蓋内圧がさほど亢進していない軽度の早期癒合症の場合でみられる、斜視と精神症状(≠精神運動発達遅滞)の併発に一致すると思われます。

 

早期癒合症には軽度のものが存在する

頭蓋内圧亢進を発生させる早期癒合症や水頭症といった頭蓋骨の変形を伴う疾患は、外見的特徴が素人でもわかるほど顕著なものであるため、治療の機会を逃すことはめったにありません。

しかし、実際に存在する軽度の早期癒合症は、専門医以外の医療従事者の間では認知されていません。そのうえ患者自身にとっても気づきにくい特徴を持つため、治療を受けていないまま、早期癒合症による身体症状や精神症状が現れている状態で毎日をすごしている人が多く存在すると私は推測しています。

 

斜視と併発する「軽度発達障害」→「早期癒合症特有の精神症状」

頭蓋内圧がさほど亢進していない軽度の早期癒合症においても、精神障害が発生する可能性があります。

早期癒合症の頭蓋骨による脳への圧迫が、頭蓋内圧が亢進する程のものではない、言い換えれば、頭蓋内圧亢進が認められる基準値を満たさなかったとしても、頭蓋骨が脳を圧迫しているという状態であることには変わりありませせん。

この状態で発生する症状は、早期癒合症以外の疾病では想定できないことから、「早期癒合症特有の精神症状」と私は呼んでいます。これの病理に関する詳細は以下の記事で紹介しています。  

 

 

 一方で、頭蓋内圧亢進が基準値未満だったとしても、早期癒合症と精神症状、および斜視が併発する可能性は存在します。*1

「早期癒合症特有の精神症状」は慢性的なものであるため、「意識障害」というよりは「発達障害」として見られやすいです。

これらのことから、斜視と併発する「軽度発達障害」とは、「早期癒合症特有の精神症状」であると私は考えています。 

  

斜視の種類は問わない

早期癒合症と併発している斜視は、種類を問いません。内斜視もあれば外斜視もあります。

早期癒合症による頭蓋内圧亢進が斜視を引き起こす病理についての詳細は、以下の記事で扱っています。 

*1:リンク先の「軽度早期癒合症の悪影響」の項を参照いただきたい。