「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症と特異的言語発達障害(聴覚情報処理障害)の当事者研究ブログです。主にワーキングメモリ(注意容量と音韻ループの関係)について研究しています。更新情報はツイッターで配信しています。(キーワード:特異的言語発達障害(聴覚情報処理障害)、音韻ループ、軽度三角頭蓋)

人の話を聴き取れない、理解できない聴覚情報処理障害(APD)は何科で診断できる? / タイプ別診断チェックリスト(ADHD, 聴覚過敏, 容量性注意障害)

聴覚情報処理障害を診断できる専門の施設に関する情報、および聴覚情報処理障害のタイプ別診断チェックについての記事です。(キーワード:ADHD、聴覚過敏、容量性注意障害、特異的言語発達障害、口下手) 

 

聴覚情報処理障害の定義と原因疾患(別記事リンク)

このページで紹介されている聴覚情報処理障害についての情報(聴覚情報処理障害のタイプ、メカニズムの観点)は、以下の記事のなかで導き出された考察をもとにしています。 

原因疾患についての記事はこちら。

この記事の内容を要約しますと、以下の通りです。

  • 聴覚情報処理障害の原因疾患は器質性精神障害に限られる。
  • 音声言語医学のなかでは、「聴覚情報処理障害」という概念の定義が定まっておらず、現在もなお論争が継続中。
  • 聴覚情報処理障害には原因不明のサブタイプが存在する。これが聴覚情報処理障害の最大の論点。
  • 私自身の症例に基づくと、原因不明の聴覚情報処理障害に該当する「容量性注意障害」の原因の一つとして、頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)による脳の圧迫が挙げられる。

ちなみに聴覚情報処理障害の定義をめぐる論争についての記事はこちらです。 

 「聴覚情報処理障害」は多くの問題点を抱える疾病概念です。その根本的原因は、原因疾患が不明である聴覚情報処理障害が存在していることであることは確実です。

ここからは独自のアプローチになりますが、聴覚情報処理機能が低下する症状を引き起こす疾病を以下のように列挙しました。

① 広義の聴覚情報処理障害:聴覚情報処理機能の低下症状を引き起こす器質性精神障害

② 狭義の聴覚情報処理障害:上記の2つを除く器質性精神障害。現状、音声言語医学においては、原因が明らかになっていない。

  • 容量性注意障害(これに起因する特異的言語発達障害
  • その他

 

耳鼻科は専門外 

耳鼻科で一般的に行われる、聴覚に関する検査とは、機能性難聴の有無を調べるものです。この検査では、聴覚情報処理障害の有無の判断は不可能です。

なかには、音声言語医学に精通する耳鼻咽喉科の医師も、福島邦博先生(後述)を筆頭に存在するようです。しかし、ほとんどの耳鼻咽喉科においては、音声言語医学は専門外ですので、基本的に聴覚情報処理障害を知らないと考えるべきでしょう。

となると、検査をしても異常箇所が見つからないはずなので、多くの場合でストレス(神経症)が原因であると推察的な判断され、「経過観察」となるでしょう。言い換えれば匙を投げられるということです。

  

聴覚情報処理障害と精神科

聴覚情報処理障害のうちの「広義の聴覚情報処理障害」の原因疾患は、ADHD自閉症スペクトラムといった器質性精神障害です。もしあなたの「聴覚情報処理障害」の原因がこれらであった場合は、精神科にかかった場合でも対処できるでしょう

精神科では、原因疾患の検査を受け、診断が下りた際にはSST、あるいは投薬などの治療を受けられます。しかし、精神科での治療では聴覚過敏などの症状に対応できない可能性があるので、その場合は専門家(言語聴覚士など)を紹介してもらうべきでしょう。

 

聴覚情報処理障害を扱っている医療機関(専門家)一覧(敬称略)

聴覚情報処理障害を扱っている研究領域は、現時点では音声言語医学だけであり、一般的な医学においては疾患概念として認知されていません。聴覚情報処理障害研究の第一人者である小渕千絵先生の著書では以下のような文が書かれています。

APDに関しては原因や評価、支援方法などが確立されているとは言えず、医療機関教育機関での混乱も大きい*1

なので、聴覚情報処理障害の診断を目的に医療機関にかかる場合は、言語聴覚士、あるいは聴覚情報処理障害を知る医師(精神科、耳鼻科に限られるでしょう)が在籍している専門機関にかかるのが確実です。

以下、聴覚情報処理障害を診断できる医療機関を列挙します。紹介する医療、研究機関の選抜基準は、聴覚情報処理障害に関する論文を執筆している先生方が在籍している医療機関であることです。

※注意点

聴覚情報処理障害の専門機関では、予約が殺到しているようです。

専門機関で診察を受けることは、自身の聴覚の問題点を客観的に分析してもらうという点で効果的です。

しかし、「広義の聴覚情報処理障害」(聴覚過敏やADHD由来の聴覚情報処理機能の低下症状)の場合は、専門医療機関への受診よりも、原因疾病に対する治療を精神科で受けるほうを優先するべきだと私は考えています。

原島先生は、小渕千絵先生の著書の共同執筆者です。

福島邦博 医師(ふくしまくにひろ)|ドクターズガイド|時事メディカル

福島先生は、聴覚情報処理障害に関する論文を執筆しています。  

  

聴覚情報処理障害のチェック診断:あなたの聴覚情報処理機能の低下症状はどのタイプ?

聴覚情報処理障害の疑いがある症状について、正確な診断を受けるならば、聴覚情報処理障害の専門家に直接診断してもらうことに越したことはありません。しかし、遠隔地に住んでいらっしゃる方々は専門家が在籍している施設に行くことは難しいでしょう。

そこで、聴覚情報処理障害のタイプがわかるオリジナルの診断を簡単に作りました。是非参考にしてください。 

1 口下手 

→ A. 容量性注意障害

まず、聴覚情報処理障害のひとつである特異的言語発達障害の性質は、言語理解だけでなく言語運用にも悪影響が見られます。

ここでの「口下手」とは、重文複文といった複雑な統語構造を持つ言語情報を出力するための情報処理に時間がかかることを意味します。口下手ならば、特異的言語発達障害タイプです。

ちなみに、ADHDは口下手ではありません。受動的行為である聴覚情報処理とくらべると、話すという行為は能動的行為であるため、ADHDによる悪影響は少ないと考えられます。

 

2 文章読解力が低い 

→ A. 容量性注意障害、あるいはADHD

言語性知能が高い(文法に対する理解度や語彙力が高い)にもかかわらず、読解力が低い場合が存在します。その病理は2つ存在します。

ADHDの場合

読む行為自体に対する集中が困難であることに由来する、読解力の低さです。ADHDに限らず、実行機能(注意制御・衝動抑制)が未発達である子供も含まれます。

例えば、両者は読解問題を説いているときに、頭の中で突発的に音楽が再生される現象を体験するはずです(音楽への嗜好が高いは特に)。そして、その音楽の脳内再生を止めることは困難です。この現象をイヤーワームといいます。そしてイヤーワームは衝動性のひとつであるといえます。

 

容量性注意障害の場合

ADHDとは異なり、読む行為自体には集中できており、単語レベルの意味を理解は達成できています。しかし、短期記憶として覚えられる情報量が少ないという性質を持つのが、特異的言語発達障害の特徴です。

ゆえに、理解する対象の文が複雑な統語構造を持つものであるほど、その意味を理解するのが遅くなります。文章とは文の集合体なのですから、その結果、文章全体の読解の速度の低下につながります。

読解などの学習と特異的言語発達障害の関係に関する詳細は、以下の記事で紹介しています。 

 

3 多声音楽を構成する複数の旋律を同時に聴きとれない 

→ A. 容量性注意障害

ポップスなどの音楽では存在しませんが、クラシックの楽曲のなかには、同時に複数の声部(旋律)が対等に進行する楽曲が存在します。これを「多声音楽(ポリフォニー)」といいます。楽曲形式ではフーガやカノンが多声音楽に該当します。

 <バッハ:フーガの技法


J.S.Bach - The Art Of Fugue BWV 1080.

 

ベートーヴェンピアノソナタ第29番 ”ハンマークラヴィーア” 第4楽章>  


Glenn Gould - Beethoven Sonata 29 in B flat major "Hammerklavier" 4th movement

ネルソンコーワン氏が提唱する、「マジカルナンバー4」というワーキングメモリの容量に関する理論に従うと、健常者であれば、同時に4つ前後の旋律を聴き取ることが可能です。

一方の容量性注意障害の場合、聴くことに集中したとしても同時に複数の旋律を聴き取ることができません

このことは言語理解においても同じことがいえます。すなわち容量性注意障害は、同時に複数の言語情報、および複雑な文を理解するのが困難という特徴を持ちます。

 

4 不協和音で構成された音楽を聴くのが苦痛である

→ A. 聴覚過敏

<視聴注意:不協和音まみれのプロコフィエフ交響曲第3番>


Prokofiev – Symphony No. 3 Opus 44 (Mariinsky Theatre Orchestra, Valery Gergiev)

聴覚過敏の方は、不協和音が多用されている前衛的音楽(プロコフィエフショスタコーヴィチなど)を聴くのを苦手です。

自閉症スペクトラム障害と不協和音に関する研究(下記リンク)が実際に行われており、「自閉症スペクトラム障害は、不協和音の聞き取りを苦手な性質を持つ」という結論が提示されています。

 

<引用文献>

音声言語医学 56巻 4号 2015年10月

小渕千絵「聴覚情報処理障害(auditory processing disorders, APD)の評価と支援」

*1:小渕, 2015, p. 302