「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

認知心理学の研究をする頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者が考えたことを書いていきます。扱っている症状は原因不明のものばかり(泣)。当ブログの記事における内容及び理論は無断転載及び引用は禁止です。更新情報はツイッターでも配信しています。

聴覚情報処理障害(APD)は何科で検査できる? / タイプ別診断チェックリスト(ADHD, ASD, 特異的言語発達障害)

聴覚情報処理障害を診断できる専門の施設に関する情報、および聴覚情報処理障害のタイプ別診断チェックについての記事です。(キーワード:ADHD、聴覚過敏、特異的言語発達障害、口下手) 

聴覚情報処理障害を扱っている医療施設について

数は少ないですが、聴覚情報処理障害は音声言語医学で扱われています。

なかでも、聴覚情報処理障害の専門家がいらっしゃる施設は以下の通りです。

www.iuhw.ac.jp

こちらの施設では、聴覚情報処理障害の専門家である小渕千絵先生が、在籍しております。 

小渕千絵先生の共同研究者である原島恒夫先生がいらっしゃいます。 

 ただし、聴覚情報処理障害は精神障害として定義づけられている障害ではありませんので、「聴覚情報処理障害」であることが認められた場合でも、精神科のように正式な診断を受けることは難しいと私は推測しています。

また、場合によっては精神科にかかった方が効率が良い場合があります(詳細は後述)。

  

聴覚情報処理障害を診断できる「病院」は存在しない

聴覚情報処理障害を扱っている研究領域は、現時点では音声言語医学だけであり、一般的な医学においては疾患概念として認知されていません。

実際、聴覚情報処理障害研究の第一人者である小渕千絵先生の著書では以下のような文が書かれています。

APDに関しては原因や評価、支援方法などが確立されているとは言えず、医療機関教育機関での混乱も大きい(p. 302)

なので、聴覚情報処理障害の診断を目的とする場合、一般的な医療機関ではなく、例えば言語聴覚士が在籍しているような、先述した専門機関にかかるのが確実です。

 

聴覚情報処理障害と耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科は、例えば難聴のような外耳や内耳といった感覚器官の構造異常を扱う科目です。ゆえに、音声言語医学の知識を持たない耳鼻咽喉科では、聴覚情報処理障害の診断ができません。

これは私の経験ですが、もし耳鼻咽喉科にかかったとしても、多くの場合でストレス、あるいは神経症が原因であると判断され、「経過観察」、すなわち匙を投げられることになるでしょう。

たとえ耳鼻科医が聴覚情報処理障害のことを知っていたとしても、その診断をくだせないので、専門機関を紹介してもらうべきでしょう。

 

聴覚情報処理障害と精神科

初めに結論を言いますと、聴覚情報処理障害のうち聴覚過敏、およびADHDのタイプでは、根本原因である精神障害の解決を目的とした治療が行われるので、見方によれば二度手間にならずにすみます。

ただし、やはり精神科においても「聴覚情報処理障害」の診断を受けられません。聴覚過敏の症状の対応策については精神科では対応しきれない可能性もあるので、その場合は専門医(言語聴覚士)を紹介してもらうべきでしょう。

  

APDのチェック診断:あなたの聴覚情報処理障害はどのタイプ?

聴覚情報処理障害の疑いがある症状について、正確な診断を受けるならば、聴覚情報処理障害の専門家に直接診断してもらうことに越したことはありません。

しかし、遠隔地に住んでいらっしゃる方々は専門家が在籍している施設に行くことは難しいでしょう。

そこで、聴覚情報処理障害のタイプがわかるオリジナルの問診表を簡単に作りました。是非参考にしてください。 

まず、聴覚情報処理障害には3種類の原因が存在します。

  • 聴覚過敏ASDの疑いが強い)
  • ADHD
  • 特異的言語発達障害:音声言語医学では「特定不能」と判断されています。

1 口下手 → 特異的言語発達障害

まず、聴覚情報処理障害のひとつである特異的言語発達障害の性質は、言語理解だけでなく言語運用にも悪影響が見られます。

ここでの「口下手」とは、重文複文といった複雑な統語構造を持つ言語情報を出力するための情報処理に時間がかかることを意味します。口下手ならば、特異的言語発達障害タイプです。

(ちなみに、ADHDは口下手ではありません。話すという行為は能動的行為であり、受動的行為である聴覚情報処理とくらべるとADHDによる悪影響は少ないと考えられます。)

 

2 読解力が低い → 特異的言語発達障害、あるいはADHD

言語性知能が高い(文法に対する理解度や語彙力が高い)にもかかわらず、読解力が低い場合が存在します。その病理は2つ存在します。

  • ADHD:読む行為自体に対する集中が困難であることに由来する読解力の低さです。
  • 特異的言語発達障害ADHDとは異なり、読む行為自体には集中できていますし、単語レベルを理解できています。しかし、短期記憶力が低く、文として理解するのが遅いため、読解力が低下します。

読解などの学習と特異的言語発達障害の関係に関する詳細は、以下の記事で紹介しています。 

  

 

3 多声音楽を聴きとれない → 特異的言語発達障害

ポップスなどの音楽では存在しませんが、クラシックの楽曲のなかには、同時に複数の声部(旋律)が対等に進行する楽曲が存在します。これを「多声音楽(ポリフォニー)」といいます。楽曲形式ではフーガやカノンが多声音楽に該当します。

 <バッハ:フーガの技法


J.S.Bach - The Art Of Fugue BWV 1080.

 

ベートーヴェンピアノソナタ第29番 ”ハンマークラヴィーア” 第4楽章>  


Glenn Gould - Beethoven Sonata 29 in B flat major "Hammerklavier" 4th movement

特異的言語発達障害の場合、単一の旋律を聴き取ることは容易です。しかし、同時に複数の旋律を聴き取ることが困難なのです。できたとしても2声が限界でしょう。

これは言語理解においても同じことがいえます。すなわち、特異的言語発達障害は同時に複数の言語情報(複雑な文)を理解するのが困難という特徴を持ちます。

 

4 不協和音で構成された音楽が苦手 → 聴覚過敏

<視聴注意:不協和音まみれのプロコフィエフ交響曲第3番>


Prokofiev – Symphony No. 3 Opus 44 (Mariinsky Theatre Orchestra, Valery Gergiev)

 

聴覚過敏の方は、不協和音が多用されている前衛的音楽(プロコフィエフショスタコーヴィチなど)を聴くのを苦手です。

自閉症スペクトラム障害と不協和音に関する研究(下記リンク)が実際に行われており、「自閉症スペクトラム障害は、不協和音の聞き取りを苦手な性質を持つ」という結論が提示されています。

 

(別記事リンク)聴覚情報処理障害の原因と病理について

さらに聴覚情報処理障害に関することを知りたい場合は、その原因とそれぞれの病理についての記事を当ブログで載せていますので、ぜひご覧ください。 

 また、聴覚情報処理障害の一つである、特異的言語発達障害の病理に関する論考も当ブログ内で発表しています。 

 

引用文献

音声言語医学 56巻 4号 2015年10月

小渕千絵「聴覚情報処理障害(auditory processing disorders, APD)の評価と支援」