「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

認知心理学の研究をする頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者が考えたことを書いていきます。扱っている症状は原因不明のものばかり(泣)。当ブログの記事における内容及び理論は無断転載及び引用は禁止です。更新情報はツイッターでも配信しています。

軽度の頭蓋骨縫合早期癒合症を抱える成人当事者に対する手術の必要性、有効性についての考察

 

第1 手術の対象年齢に制限が設けられている根拠

軽度三角頭蓋の手術は、対象年齢が制限されています。根拠については明かされておりません。そこで、私はその根拠についての仮説を立てました。

 

1 神経心理学の一般認識

神経心理学の一般認識では、脳内神経細胞の発達は、幼少期がピークであり、年を重ねるにつれて神経発達の「勢い」が緩やかになるといわれています。つまり、神経発達を妨げている問題が存在すると仮定した場合、問題を解消するべき時期は幼少期の間であるといえます。

 

2 脳神経外科学の一般認識

早期癒合症は頭蓋内圧亢進の要因であり、大脳辺縁系に悪影響を与えた結果が精神症状の発症である、というのが脳神経外科学の一般認識です。

 

3 推論

脳神経外科学の一般認識と、先の神経心理学の一般認識を掛け合わせると、早期癒合症由来の精神症状を解消するための手術は幼少期に行われるべきであり、成年以降に行っても効果がないという理論が形成されます

 

第2 頭蓋内圧亢進症状ではない「早期癒合症特有の精神症状」

しかし、軽度三角頭蓋の症例で多く報告されている症状の原因は、頭蓋内圧亢進による辺縁系機能の低下によって引き起こされる神経発達障害ではなく大脳皮質の機能低下であると私は考えています。もし、大脳皮質由来の精神症状であれば、神経細胞に関する神経心理学の一般認識は適用されません。

この精神症状については「早期癒合症特有の精神症状」と名称を用いながら詳細を別の記事で紹介しているのでご覧ください。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

第3 成人に対する手術の有効性

早期癒合症に対する減圧開頭術の効果は、文字通り頭蓋内圧亢進の解消に役立つといわれています。しかし、これは脳中心部の髄液圧を低下させるだけでなく、「大脳皮質への圧迫」という病態の解消も伴います。クモ膜下腔およびクモ膜下槽の容積が拡張されることで、早期癒合症特有の精神症状を解消できると私は考えています。

 

先ほど提示した神経心理学の一般認識は、「早期癒合症特有の精神症状」の原因となっている大脳皮質に当てはめるべきではありません。すなわち、成年期以降でも大脳皮質の機能低下を回復させることは十分に可能です。なぜなら、「十分に神経発達している大脳皮質」の機能を低下させているのが早期癒合症だからです。

 

第4 成人患者に対する手術が行われるべき理由

早期癒合症の成人患者に対し、開頭減圧術を行うべき根拠は、病理学的根拠だけではありません。現行の軽度三角頭蓋の手術に対する否定説を一つ退けることが可能になります。

 

1 小児科学による軽度三角頭蓋の手術の否定説

実は軽度三角頭蓋の手術は、医学的には認められていないため、「美容整形手術」として行われていることは、「軽度三角頭蓋の手術をめぐる論争」の記事で紹介した通りです。

軽度三角頭蓋の手術に対する否定説は、様々な種類の医学関係者から上がっています。そのうちの一つである小児科学の否定説の内容は、軽度三角頭蓋の手術の対象年齢が幼年であることに対する批判です。詳細については以下の記事をご覧ください。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

2 成人患者に対する臨床研究ならば問題ない

臨床研究としての性格を持つ軽度三角頭蓋の手術を、成人患者に対して行うようにすれば、少なくとも小児科学の否定説を退けられます。なぜなら、患児に対する場合とは異なり、手術の承諾を成人患者本人に求めることが可能だからです。

軽度三角頭蓋であれば、精神発達遅滞ではないケースが多いので、制限行為能力者ではないので、承諾を求めることが可能です。患者本人にとっても強い希望になること、そして下地武義先生にとっても臨床研究のデータを集めることが可能になるので、成人当事者に対する開頭減圧術の施行は、患者と研究者の利害が一致するのです。

 

第5 成人患者に対する手術の実現を阻む要因:術式が未確立

成人に対する軽度三角頭蓋の手術が仮に行われたとしましょう。そのためにはそれなりの準備が必要になるでしょう。

最も懸念すべきことは、手術の手法が確立されていないことです。

現在存在する早期癒合症の手術の手法は既存の頭蓋骨を使ったものですが、それは患者が成長期であることが術式の有効性を形成しています。

それに対して、成人の頭蓋骨の場合は癒合が終了しているため、患児に対する手術が有効的であるとはいえません。

早期癒合症は小児慢性特定疾病として認知されてきたものですので、成人に対する手術が行われたことがないという事実が、術式の未確立の要因になっているのでしょう。

 

ただ、現在は頭蓋骨のインプラント技術があるので、手術が実現不可能というわけではないということは、確実に言えます。