「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

認知心理学の研究をする頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者が考えたことを書いていきます。扱っている症状は原因不明のものばかり(泣)。当ブログの記事における内容及び理論は無断転載及び引用は禁止です。更新情報はツイッターでも配信しています。

頭蓋骨縫合早期癒合症の外見的悪影響(2):軽度三角頭蓋(「大人の早期癒合症」)の外見的特徴 / 通常の三角頭蓋との比較(画像あり)

頭蓋骨縫合早期癒合症は、現在医学的に広く認知されている疾病であり、治療方法として手術が行われています。

頭蓋骨縫合早期癒合症には軽度のものが存在しており、中でも下地武義先生が報告している「軽度三角頭蓋」がもっとも有名です。

頭蓋骨縫合早期癒合症には、大きく分類して3種類存在しますが、今回の記事では前頭縫合の早期癒合という病態を持つ「三角頭蓋」と、「軽度三角頭蓋」(「大人の早期癒合症」)の外見的特徴(※)を、紹介していきます。

 

※「外見的悪影響」と「外見的特徴」の意味について

私は早期癒合症の「外見的悪影響」の一つに「外見的特徴」を挙げています。外見的悪影響、すなわち頭蓋の変形以外にも外見的悪影響が存在すると考えております。

早期癒合症による外見的悪影響 ↓

  • 外見的特徴(=頭蓋の変形)
  • 頭皮の下垂

 

 

第1 三角頭蓋の外見的特徴

冒頭でも説明しましたが、三角頭蓋とは前頭縫合の早期癒合という病態を持ちます。診断の基準となる外見的特徴は、以下の通りです。

前頭縫合隆起のみでは病的初見とは呼べず、前頭部大脳圧迫初見、眼窩間距離短縮、眼窩の変形を伴うものが三角頭蓋と診断される。*1

まず、三角頭蓋の外見的悪影響である前頭部の変形の度合いは、素人目で見ても判別できるほどのものです。それに加え、前頭部の狭小化は、眼窩(眼球が収まる空洞)の形成にも悪影響を与えるとのこと。

「眼窩間距離」とは前頭部の幅を指します。

前頭部の幅と側頭部の幅の割合が、健常例と比べ著しく側頭部の幅が広くなるということでしょう。これによって

両目の距離が小さくなるという現象も診断基準の一つとして脳神経外科学にて規定されている、とのことです。

 

以上の内容をまとめると、三角頭蓋の外見的悪影響とは、

  • 前頭縫合上の骨性隆起
  • 眼窩の変形
  • 前頭部の幅の著しい狭小化

ということになります。

 

第2 軽度三角頭蓋の外見的特徴

三角頭蓋と同じく、軽度三角頭蓋も前頭縫合の早期癒合という病態を持ちますが、その外見的特徴には相違点が存在します。

前頭部の骨性隆起を認め、前側頭部の陥没が顕著である特徴的な頭蓋形態を呈する群が存在し、これらの患児は脳そのものの機能的異常に加えて、前頭蓋の狭小化による前頭葉への圧迫が存在する…*2

 

しかし、軽度三角頭蓋特有の外見的特徴が存在するようで、それに関する詳細は以下の通りです。

改善例の代表例を示す。…前頭部横径と比較して頭頂後頭部横径の拡大を認め、頭部MRI軸位断ではだるま型を呈していた。*3

 

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P. 154 より引用

引用元の内容を大まかにまとめると、軽度三角頭蓋の一部の症例では、側頭部の幅が広がっているという特徴を持つ、とのことです。

 

下地武義先生の研究によりますと、

健常児のならば、↓

側頭部の幅:前頭部の幅 = 1:0.62(0.60 ~ 0.63)

という比率であるのに対し、軽度三角頭蓋のケースは

側頭部の幅:前頭部の幅 = 1:0.57

と、正常値からは逸脱した比率の値が認められる患者群が存在した、とのことです。しかし、これがすべてではないようで、健常児と同じ比率を呈する軽度三角頭蓋の患者群も存在するとのことです。

 

以上の内容をまとめると、軽度三角頭蓋の外見的悪影響とは、

  • 前頭縫合上の骨性隆起
  • 側頭部の幅の広大化(前頭部の幅の狭小化とも解釈できますが、前頭部の幅の狭小化は著しくないという意味が含まれると推測されます)
  • 前側頭部の陥没

とのことです。

 

第3 成人当事者にみられる早期癒合症の外見的特徴

1 判別は「至極」困難

当ブログの名称に含まれる「大人の早期癒合症」とは、頭蓋骨縫合早期癒合症のうち、変形が軽度であり、軽度三角頭蓋も含まれます。

脳神経外科学の間でも広く認知されているとはいえないため、大人になっても気づかない当事者が多く存在すると推測されています。

それに拍車をかけているのが、判別の難しさでしょう。脳神経外科や形成外科の医師にとっても、患者の訴えがなければその存在に気付くのは困難であると思われます。

 

2 「大人の早期癒合症」のCT画像

ここでは早期癒合症の当事者である私の頭蓋骨の画像を提示していきます。

まずはCT画像をご覧ください。

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① 「骨性隆起」:前頭縫合及び矢状縫合に沿ったもの

 

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② 「側頭部の陥没」

私の早期癒合症は、「前頭縫合および矢状縫合の軽度な早期癒合」という病態を持ちますので、軽度三角頭蓋とは若干異なります。

先述の軽度三角頭蓋の外見的特徴に関する説明には、前頭部における所見のみが記載されていました。

これに対し、私の場合は前頭縫合だけでなく矢状縫合も早期癒合しているため、外見的悪影響は頭蓋骨全体にあらわれています。「骨性隆起」は、前頭縫合及び矢状縫合にみられます。一方で「骨性陥没」とでもいうべきでしょうか、これは前側頭部及び後ろ側頭部にかけて存在します。

 

 3 「大人の早期癒合症」の画像(現物)

頭蓋骨の3D-CT画像を撮影すると、何となく軽度三角頭蓋であることを確認できます。しかし現物、すなわち頭皮で覆われた状態から軽度三角頭蓋であることを判別することは、困難です。

 

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まずは、「前頭縫合上の骨性隆起」がうっすらと浮き上がっているのがおわかりいただけたでしょうか。

当方が眉間をよらせることでようやくわかる所見ですが、光の当たり具合がわるい場合は見えません。

しかし、触診で骨性隆起の存在を確認することは可能です。


 

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上の画像では、「骨性陥没」を確認できます。先ほどの骨性隆起よりは見つけるのが容易です。

 

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実は、真正面から見ても「骨性陥没」の輪郭が確認できます。

骨性陥没より前の前頭部が一回り小さくなっています。

 

第4 「大人の早期癒合症」の判別方法について

これまで、軽度の早期癒合症の外見的悪影響について紹介してきました。

冒頭でも書いたようにこれらの外見的特徴はわかりにくいものです。もし、前髪で額を隠している場合は、外見的特徴を直接判断することは不可能です。

しかし、前髪で額が隠れていたとしても、「大人の早期癒合症」の推定ができるような判別項目を、私は作りました。

 

① 前髪および頭頂部の髪の毛の量が少ない(M字はげ気味)

② 側頭部、後頭部の毛が跳ねる、ボリューミー(ハチ張り)

③ 童顔

④ 頭が大きい(顔のつくりが大きい)

⑤ そのわりに、額の高さが狭い(絶対的には狭くない)

 

まず、①~③の項目について、これは早期癒合症の外見的悪影響の一つである「頭皮の下垂」によって引き起こされる特徴です。

次の④および⑤の項目の根拠は、軽度早期癒合症の原因についての考察(下に記事リンク)にあります。その原因とは、生来の頭蓋骨のつくりが大きいことです。しかし、人相学・骨相学に近い観点ですので判別方法としては不確実性が伴います。私の経験上、軽度の早期癒合症の人は頭蓋骨のつくりが大きい人が多いような気がします。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

参考文献

下地一彰、秋山理、木村孝興、宮嶋雅一、新井一、下地武義「臨床症状を伴う前頭縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)の2施設コホート研究」、日本児童青年精神医学会 『児童青年精神医学とその近接領域』 第57巻 第1号、2016年

井原哲「頭蓋骨縫合早期癒合症の治療と精神発達」、同上

*1:井原、2016、P.159

*2:下地、2016、P. 152

*3:同上、P.154