「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

認知心理学の研究をする頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者が考えたことを書いていきます。扱っている症状は原因不明のものばかり(泣)。当ブログの記事における内容及び理論は無断転載及び引用は禁止です。

<軽度三角頭蓋の治療をめぐる論争③> (論評)軽度三角頭蓋のケースから導出される、精神医学の盲点と「情報処理障害」を扱う学問の必要性

「軽度三角頭蓋の論争②」(下記にリンク)で紹介した日本児童青年精神医学会の機関誌「児童青年精神医学とその近接領域」のなかには、軽度三角頭蓋の精神症状の解消を目的とした手術についての、肯定説及び否定説の根拠理論が記載されていました。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

今回の記事の内容とは、手術に対する精神医学の姿勢から考察した精神医学の性格(弱点)や、早期癒合症特有の精神症状に対する研究の理想像についてです。

 

 

第1 精神医学は早期癒合症の精神症状を研究していない

「軽度三角頭蓋と精神症状の関係性」、および「早期癒合症特有の精神症状の存在」に関する研究を行っているのは、手術肯定派である一部の脳神経外科医のみです。一方で、病理解明を目的とした研究は、精神医学においては存在しません。存在するのは、手術肯定派に対する批判的研究ばかりです。

たしかに、軽度三角頭蓋の手術が実施されていることに対し、日本児童青年精神医学会が否定的であることについて、現時点においては反論の余地がありません。しかし、軽度三角頭蓋の手術の必要性を全否定することは、精神医学に対しても進展を与えず、病理解明という目的から遠のくばかりです。

私自身、「軽度三角頭蓋の精神症状のデータから未定義の精神障害の病理を解明するのが、医学としての精神医学の道理であるはず」と考えていた時期がありました。

しかし、現実はそうではなかったのです。「軽度三角頭蓋の精神症状」が、いわば「精神医学の盲点」をつく案件だったのです。

 

第2 どうすれば軽度三角頭蓋の手術が認可されるようになるか

精神医学の盲点を説明する前に、軽度三角頭蓋の手術を日本児童青年精神医学会に認めさせるためには、精神医学が定義づける精神障害概念に当てはまることを論証しなければなりません。しかし、早期癒合症を原因とする精神症状は、精神医学によって実体性をもって定義されている精神障害概念のいずれにも当てはまりません。

そのため、精神症状の存在を立証する必要があります。そこで、早期癒合症を原因とする精神症状の病理を提唱し、新たな精神障害概念として精神医学に認めさせるというステップを踏むことで、軽度三角頭蓋の手術は認可されるのではないでしょうか。

 

第3 精神医学の盲点

精神医学の役割とは、精神医学で定義づけられている精神障害に関する研究や実務を行うことです。一方、定義づけられていない精神障害概念に関する現象に対しては、お手上げなのです。軽度三角頭蓋の精神症状について、日本自閉症協会は自閉症スペクトラム障害との関連性がないという結論を下していますし、また軽度三角頭蓋の手術を行っている下地武義先生も、自閉症スペクトラム障害との関連性を否定しています。もし、自閉症スペクトラム障害との関連性があるとなれば、精神医学が参入する余地はあったでしょう。

精神医学が研究をしていない根拠とは、早期癒合症の精神症状が、既存の精神障害概念では説明がつかないためです。あえて軽度三角頭蓋の案件の中で精神医学ができることを挙げるならば、既存の精神医学の知見に基づく批評しかないでしょう。

現状では、脳神経外科学は早期癒合症による精神症状発症の病理を解明しているとはいえません(性質上、解明は不可能です)。ですので、精神医学が新たな精神障害概念を構築することは、現状においては不可能です。

以上のような根拠があるため、「精神障害」の解消を目的とする軽度三角頭蓋の手術が実施されていることに対して否定的な立場をとること以外の選択肢は、精神医学には残されていません。

 

第4 早期癒合症研究の理想像

1 早期癒合症の精神症状は「情報処理障害」である

精神医学で定義づけられている精神障害概念の「目録」は、もはや隙のないほど充実しています。しかし、驚くべきことに早期癒合症特有の精神症状が、精神医学が認知している精神障害概念では説明ができないという事態が発生しています。

このような事態が発生している原因について、早期癒合症の精神症状が、「情報処理障害」という新しい概念に分類されるからだと私は考えています。

精神医学は情報処理障害を扱っていません。これを扱っているのは心理学なのです。

 

2 学問の範疇を超える必要性

早期癒合症の精神症状は情報処理障害であるため、これを対処するためには心理学の知見が必要になります。

では、具体的にどのような研究形態をとればよいのでしょう。

早期癒合症特有の精神症状に関する研究は大まかに2つに分ける必要があります。まず、早期癒合症が与える脳に対する悪影響(頭蓋内圧亢進や大脳皮質の病変)に対する即物的な研究が挙げられます。これを達成するためには、脳神経外科学と神経心理学のクロスオーバーが必要となります。

次に、言語発達遅滞などの精神症状そのものの仕組みを分析するためには、認知心理学の知見が必要になります。

 

3 早期癒合症研究のメリット

軽度三角頭蓋特有の精神症状を上記の手法を用いて考察することによって、通常の早期癒合症で発生する精神運動発達遅滞の病理の解明にもつながると私は考えています。

また、病理解明が不十分であるために、精神医学が情報処理障害や「特定不能の広汎性発達障害」を放置している、という現状の改善につながるとも私は考えます。