「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)と容量性注意障害(聴覚情報処理障害)に関する当事者研究の記録です。主にワーキングメモリ(注意容量と音韻ループの関係)について研究しています。更新情報はツイッターで配信しています。

頭蓋骨の大きさ、形と精神障害(発達障害を含む)の関係

検索エンジンに「発達障害」という言葉を入力したあとに出てくる検索候補に、以下のような言葉が存在します。

発達障害 頭デカい」

発達障害 頭が大きい」

 また、

自閉症 頭が大きい」

自閉症 頭囲」

 という検索候補も存在します。

あとはYahoo知恵袋でも こういった質問があります。

 検索候補として挙がるということは、発達障害の原因を頭の大きさにあると考えている人が、ある程度存在することを裏付けています。

そこで今回は、精神障害と頭蓋骨の大きさ、および頭蓋骨の形のいびつさの関係について論じます。

キーワード:骨相学、類型論、外因性精神障害、内因性精神障害高次脳機能障害水頭症、頭蓋内圧亢進、容量性注意障害 

頭蓋骨の形態から性格および能力を導き出そうとした骨相学との違い

今回の「頭蓋骨の大きさや形から、精神障害の関係について論じる」というテーマとは内容が異なるのですが、人間の外見的特徴から、その人物が持つ性格の傾向を立てるという試みは、心理学の中でも行われてきました。これをパーソナリティの類型論といいます。歴史的にはクレッチマーやシェルドン、ユングといった心理学者が提唱した類型論が有名です。

実は、心理学(特に神経心理学)が行われる以前には、頭蓋骨の形から性格や認知、知能の傾向を導き出すことが目的である学問が存在しました。これを骨相学といいます。この骨相学も、一種の類型論であるといえます。

しかし、上記の類型論とは統計から導き出すというアポステリオリな手法にとどまっているため、「仮説」で終わってしまう手法でした。学問とは、仮説の真偽を確認するための論証あるいは実験を行い、考察に至らなければなりません。そのため、これらは非科学的であり、さらに言えば現代の観点から評価すると「学問」とはいえないでしょう。

骨相学の問題点はこれだけにとどまりません。骨相学は同一人種のなかでの性格の推論だけでなく、異なる人種との比較も行われてきました。すなわち、優生学的観点や人種差別的観点につながる学問であると評価されています。現在、骨相学がなくなったのは、神経心理学といった、技術の発展による先進的かつ科学的な学問が台頭したことです。

logmi.jp

さて、話が長くなりましたが、今回の記事の内容が「類型論」的ではないかという批判も発生するでしょう。しかし、類型論と異なり、脳神経外科学で扱われる疾病、そして、すでに解明されている外因性精神障害の病理を紹介することが目的です。しかし、頭蓋骨縫合早期癒合症の精神症状については、病理の存在が報告されていないものや、医学的に公式に認められていないものも、当ブログの情報発信のために注釈の上で紹介します。

頭囲が小さい、且つ精神障害が併発する疾患

1 小頭症

読んで字のごとく、頭蓋骨のうち脳組織を覆う部分の体積が小さいという外見的特徴が現れます。

後述する頭蓋骨縫合早期癒合症(狭頭症)とは異なり、脳組織の発達(体積)そのものも頭蓋骨と同時に小さくなります。神経発達にも悪影響があり、患者には「精神発達遅滞」が現れます。

小頭症による精神発達遅滞は、内因性精神障害に分類されるでしょう。

ブラジルのリオデジャネイロで五輪が開催されたときに、南米で流行していた「ジカウイルス感染症」に罹患した妊婦から産まれた胎児が患う疾病として、日本でも小頭症が注目されました。

2 レット症候群

レット症候群は、疾患の性質上、女児のみに認められます。

小頭症ほどではありませんが、頭囲の発達が悪く、小さいそうです。

発症早期の情動異常は自閉症との類似性があり、乳児期後半から知的障害が前面に出、多くの場合、最重度の知的障害を呈する。また。頭囲の拡大は乳児期後半より停滞し、幼児期には小頭を呈することが多い。てんかん発作、特異な呼吸を呈してくることもある。本例は特異な発達障害であり、中高年・老人の症例もみられる。*1

頭囲が大きい、且つ精神障害が併発する疾患:水頭症

1 脳脊髄液と頭蓋内圧

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山形中央病院webサイト(http://www.ypch.gr.jp/department/neurosurgery/topics07.html)から引用

脳組織は頭蓋骨に覆われていますが、手術などで頭蓋骨を開いたら、脳組織が丸見えになるというわけではありません。頭蓋骨の内側には、外部からの衝撃をやわらげるための機構が存在しています。

脳組織の周りには髄膜という膜が存在しています。そのうち、一番脳組織に近い軟膜とその外側を覆うくも膜の間のスペース(クモ膜下腔)には、脳脊髄液という液体が存在しています。脳組織だけでなく、背骨を通る脊髄を覆うように同じ機構が備わっています。

いわば、脳組織の脊髄は、脳脊髄液という「水槽」に浮かんでいる状態といえます。

2 水頭症による外因性精神障害について

厳密に言えば水頭症は疾患ではなく、二次的症状であるといえます。水頭症とは、以下の順序で発生する症状です。

1 脳組織内の中で発生した何らかの原因によって、脳脊髄液の循環障害が発生する。

2 脳組織内に脳脊髄液が貯まる。

3 脳組織が膨張する。頭蓋骨内で脳組織が圧迫される。

すると、脳脊髄液の圧力が高まり(頭蓋内圧亢進)、その結果頭蓋内圧亢進症状が現れます。水頭症の患児の場合、頭蓋骨の癒合が未完成であるため、頭蓋骨そのものも肥大化します。このように頭蓋骨と脳組織の間に脳脊髄液が大量に貯まる病態が見られる疾患であることに由来して、水頭症という名前になったのでしょう。

水頭症によって認められる精神症状は、「精神運動発達遅滞」と報告されています。この症状は一時的な「意識障害」としての性質を持つと評価されます。治療において水頭症を引き起こしている脳の構造異常を解消することで、精神障害の解消が期待されます。

まとめると、水頭症に起因する「精神運動発達遅滞」とは、器質性精神障害としての精神運動発達遅滞ではなく外因性精神障害かつ高次脳機能障害であると評価できます。

水頭症の詳細は以下のHPをご覧ください。

頭の大きさと自閉症には関係が存在するのか?

詳しいことは存じ上げておりませんが、実際、脳内の細胞の数と自閉症スペクトラム障害の病理を解明するといった研究(例えば「刈り込み」との関連性に関する研究)は存在していたかと思います。神経細胞の数の多さと、脳組織および頭蓋骨の大きさは全く異なる次元の話ですので、頭蓋骨の大きさが自閉症スペクトラム障害との間に関係を有するとはいえません。

頭の形に悪影響を及ぼす頭蓋骨縫合早期癒合症

赤ちゃんの頭蓋骨は一体化されていません。人間が生まれるときには、母体の産道を通ります。しかし、人間の頭蓋骨は、人間の産道を通りぬけられないほどの大きさであるため、そのままの大きさでは通り抜けられません。

そこで、母体の産道を通り抜けるほどの大きさに頭蓋骨を変形させるという役割を担うかたちで、人間の頭蓋骨は分割されています。ちなみに、この変形機能(児頭の応形機能)を「骨重積」といいます。

そのため、赤ちゃんの頭蓋骨(顔より上の部分)は骨が一つに固まっていないのが通常です。そして成長するにしたがって大泉門や小泉門といった隙間が閉じていきます。こうして人の頭蓋骨は一つの強固な骨になっていきます。

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https://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/605.html より引用

しかし一方で、頭蓋骨が病的に早い時期に閉じる疾患が存在します。それが、頭蓋骨縫合早期癒合症(以下、早期癒合症と記述)です。その発生頻度は1万人に4~10人*2と、少数にとどまっています。 

場合によっては先に列挙した小頭症と同じく、脳組織を覆う頭蓋骨の体積が小さくなります。しかし、脳組織の神経発達が正常である点が小頭症とは異なります。そのため、狭小化した頭蓋骨のなかでは、正常な脳組織の神経発達(脳組織の容積膨張)が妨げられるだけでなく、脳組織が圧迫されることで頭蓋内圧亢進が発生します。

例えるならば、頭蓋骨縫合早期癒合症とは、外見では小頭症、しかし中身のほうは水頭症と共通する頭蓋内圧亢進が発生しているという疾患です。

頭蓋骨縫合早期癒合症に起因する精神障害とは?

頭蓋内圧亢進は身体症状だけでなく、以下に列挙する精神症状を引き起こします。

早期癒合症は小児慢性特定疾患として認定されている疾患であるため、症状に関する統計は患児の症状のものになります。

以下のリンクでは、早期癒合症に起因する精神症状を紹介しています。

あなたも軽度の頭蓋骨縫合早期癒合症かもしれない

軽度の早期癒合症が引き起こす頭蓋骨形成のいびつさは、素人の観点だけでなく医師にとっても鑑別しにくいほどの軽微なものです。

専門家による臨床研究によると、軽度三角頭蓋の外見的特徴は以下の通りであると報告されています。

・前頭部の骨性隆起

・前側頭部の陥凹*3 

しかし、軽度の早期癒合症による悪影響は臨床研究が提示している部分だけに限りません。そこで、当ブログでは、軽度の早期癒合症による外見的悪影響を紹介していますので、ご覧ください。  

*1:www.nanbyou.or.

*2:

http://www.jichi.ac.jp/keisei/surgery/disease1.html

*3:日本児童青年精神医学会「児童青年精神医学とその近接領域 57(1)」, p.152 2016年