「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

認知心理学の研究をする頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者が考えたことを書いていきます。扱っている症状は原因不明のものばかり(泣)。当ブログの記事における内容及び理論は無断転載及び引用は禁止です。更新情報はツイッターでも配信しています。

頭蓋骨縫合早期癒合症の精神症状の病理の考察: 早期癒合症による精神発達遅滞、および軽度三角頭蓋の「発達障害」の病理に関する論考

 

第1 序論

軽度な早期癒合症によって引き起こされる精神症状は、頭蓋骨によって圧迫されたことで機能不全に陥った前頭前野背外側部(DLPFC)が担う、タスクポジティブネットワークの不活性化を原因とする情報処理障害である。その特徴は、日常生活面での不注意、言語面では特異的言語発達障害として報告されているものである。

一方で、重度な早期癒合症によって発生する精神発達遅滞は、タスクポジティブネットワークおよびデフォルトモードネットワークの双方に悪影響が及んだことで引き起こされた精神症状の結果である。

 

第2 早期癒合症の程度と精神症状の相関性

早期癒合症によって精神症状が発生するメカニズムを論証するためには、まず早期癒合症によって発生する症状を紹介する必要があります。そこで、下地先生による軽度三角頭蓋の精神症状をまとめた資料*1をもとにして、早期癒合症の程度と精神症状の相関性について考察します。

 

1 軽度三角頭蓋の精神症状を解析する理由

早期癒合症の程度と精神症状の相関性を考察するためには、軽度三角頭蓋の精神症状に関する資料を用いることが、より正確なデータを収集することにつながります。

通常の早期癒合症によって引き起こされる精神症状は、精神発達遅滞のみであると報告されています。この精神発達遅滞は早期癒合症による精神的悪影響の最終的結果であるため、早期癒合症の程度と精神症状の相関性の考察は困難です。そのうえ精神発達遅滞の原因は多種多様であり、病理の特定が困難です。

これに対し、軽度三角頭蓋による精神症状の病理は、通常の早期癒合症による精神発達遅滞と共通にする部分があると推定できます。そのうえ、精神症状の現れ方が多種多様であり、それぞれの精神症状の症例数が存在することから、早期癒合症の程度によって発生する精神症状の段階(「ステージ」)が存在することを、下地先生による統計資料から読み取ることが可能です。

 

2 統計資料からわかること

早期癒合症の程度によって発生する精神症状がどれに該当するかを解析するための指標として、「症例数が多い症状は、早期癒合症の程度が軽いときにあらわれる精神症状」、一方で「症例数が少ない症状は、早期癒合症の程度が重いときにあらわれる精神症状」であると仮定します。

 

言語発達遅滞 → 407例

多動症状 → 322例

パニック・いらいら → 179例

運動遅滞 → 114例

自傷行為 → 103例

睡眠障害 → 77例

(全症例数:420)

 

言語発達遅滞の発生確率は420件のうち407件と、発生頻度が非常に多いことから、頭蓋骨の狭小化の程度が軽度であったとしても発生する確率が高い精神症状であるといえます。

一方で、発生確率の低い精神症状が発生している場合は、早期癒合症による悪影響が及んでいる脳組織の範囲がより広い状態である仮定できます。

 

第3 早期癒合症による大脳皮質への悪影響の存在

通常の早期癒合症では、頭蓋内圧亢進症状が発生しているケースが多いです。また、重度の早期癒合症の患者には精神発達遅滞が認められることから、一般論として、頭蓋内圧の亢進という現象が、精神症状が発生させていると推定されています。

しかし、早期癒合症による脳への物理的な悪影響は、脳中心部に位置する脳脊髄液圧の異常だけではないようです。

実は大脳皮質周辺の異変が認められるという研究結果が存在します

以下のURLにてその詳細が記載されています。

 

www.annalsofian.org

 

通常程度の早期癒合症の成人当事者からサンプリングして得られた特徴は以下の通りです。

  • 精神発達遅滞
  • クモ膜下腔およびクモ膜下槽の体積の著しい減少

この二つの現象の間に関係性があると仮定した結果、頭蓋骨の狭小化による大脳皮質への圧迫が、「早期癒合症特有の精神症状」を発生させるといえます。 

  

第4 早期癒合症による頭蓋内圧亢進の特異性

早期癒合症によって引き起こされる頭蓋内圧亢進のメカニズムは、脳ヘルニアによって発生する頭蓋内圧亢進とは多少異なると私は考えています。

この件についての詳細は以下の記事で紹介しています。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

  

頭蓋骨のの容積が徐々に小さくなるという現象があると仮定します(ありえないことですが)。

小さくなるにつれて頭蓋内環境が悪化することは明白です。最終地点は脳の中心部の圧力(これが頭蓋内圧を表す)の上昇でしょう。しかし、頭蓋内圧亢進よりも前に、大脳皮質への圧迫という段階が存在すると私は考えています。

もしそうであるとすると、頭蓋内圧亢進症状が現れていないが、「早期癒合症特有の精神症状」が発生しているというケースは十分に想定できます。であれば、頭蓋内圧亢進症状を引き起こすほど頭蓋変形が強くない軽度三角頭蓋が精神症状を引き起こしている可能性は否定できません。

この精神症状は、頭蓋内圧亢進症状の一つではありません。圧迫された大脳皮質の機能低下が原因の「早期癒合症特有の精神症状」です。

 

第5 「早期癒合症特有の精神症状」= 軽度三角頭蓋の「発達障害

1 「ワーキングメモリ」を担う部位(DLPFC)

大脳皮質のなかでも前頭前野背外側部(DLPFC)は、タスクポジティブネットワークの一部としてワーキングメモリの重要な役割を担っている部位です。

DLPFCが頭蓋骨によって圧迫されたことによって機能が低下したことによって現れる情報処理障害が、早期癒合症特有の精神症状に該当します。

この精神症状の詳細については以下の記事で紹介しています。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

2 言語発達遅滞の病理

早期癒合症における発生頻度が最も高い言語発達遅滞は、大脳皮質が圧迫されたことによりDLPFCの機能障害に陥ったことを原因とする特異的言語発達障害の性質がもたらした結果であると考えられます。

  

第6 早期癒合症による精神発達遅滞の病理

下地先生による統計資料の解析から、早期癒合症の程度が頭蓋内圧亢進を引き起こすほどに重度であるほど、精神発達遅滞が発生する可能性が高くなるという仮説を導くことが可能です。しかし、大脳皮質の悪影響を原因とする情報処理障害単独では、精神発達遅滞という結果をもたらすことは考えられません。

早期癒合症による精神発達遅滞の原因について、大脳皮質の機能不良による情報処理障害の性質に加え、大脳辺縁系への悪影響が加わった影響によるものであると私は考えています。早期癒合症による大脳辺縁系への悪影響の可能性を表す所見は、頭蓋内圧亢進症状に該当します。

ワーキングメモリ理論でいえば、大脳辺縁系は「デフォルトモードネットワーク」であり、苧阪直行教授の言葉を表現すると「社会脳」としての役割を担っています。頭蓋内圧亢進という脳組織内側部分の環境悪化は大脳辺縁系の機能低下にとどまらず、神経発達に悪影響を及ぼすことが想定できます。

 

ちなみに社会脳については以下の文献をご覧ください。

苧坂直行「社会脳からみた意識の仕組み」

www.jstage.jst.go.jp

 

第7 結論

軽度三角頭蓋の「発達障害」 = 「早期癒合症特有の精神症状」

早期癒合症による精神発達遅滞 = 「早期癒合症特有の精神症状」+ 頭蓋内圧亢進による精神症状