「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者、および認知心理学の研究者の視点で考えたことを発信しています。メインテーマは「注意」の認知科学的分析。なお当ブログの記事における内容及び理論は無断使用禁止です。

<頭蓋骨縫合早期癒合症の手術適用条件に対する問題提起②> 早期癒合症による頭蓋内圧亢進のメカニズムの特異性

 

前回の記事のあらすじ

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

前回の記事の中では、一般の早期癒合症が手術対象とされるのに対して、脳神経外科学によって「大人の早期癒合症」の手術の必要性が阻却される事由(うっ血乳頭や頭痛、嘔吐といった所見が見られないこと)が存在することを紹介しました。  

この阻却事由が設けられている理由について私が推定していることとは、以下の通りです。

  • 脳神経外科が治療対象としている病変は、早期癒合症ではなく頭蓋内圧亢進症状であること。すなわち、早期癒合症の手術は頭蓋内圧亢進症状の治療という目的を達成するための手段にすぎない。
  • 早期癒合症(軽度三角頭蓋)特有の精神症状が、精神医学の概念を用いて説明不可能なものである。

 そして、脳神経外科学による早期癒合症と頭蓋内圧亢進症状との間に立つ関係についての解釈は、以下のような論理式で表現できます。

「頭蓋内圧が亢進していれば、脳は頭蓋骨により圧迫されているといえる。」

「頭蓋内圧が亢進していなければ、脳は頭蓋骨により圧迫されていないといえる。」

  

第1 序論

頭蓋内圧の亢進と頭蓋骨による脳への圧迫とは、別々の概念であると私は考えています。すなわち、「頭蓋内圧亢進をしていなければ、脳は頭蓋骨により圧迫されていない」は不適切であると私は主張します。

早期癒合症による頭蓋内圧亢進症状の病理は、脳ヘルニアによる頭蓋内圧亢進症状の病理とは異なると私は考えています。そこで早期癒合症による頭蓋内圧亢進症状の現れ方にも特異性があり、頭蓋内圧が亢進していない場合においても、大脳皮質が圧迫されている可能性が存在するという仮説を立てるに至りました。

 

第2 早期癒合症の程度と頭蓋内圧亢進症状の関係についての仮説

下地武義先生による軽度三角頭蓋を持つ児童の症状の統計資料*1によると、全体のうち頭蓋内圧亢進症状が認められる症例数はごく少数にとどまっているのに対し、「特有の」精神症状(「ワーキングメモリ容量減少症候群」を指す)が認められる症例数が多いことがわかります。

このことから、「早期癒合症特有の精神症状が現れているならば、頭蓋内圧亢進症状がみられる」と断定することは不可能となります。

 

早期癒合症による頭蓋変形の程度と、早期癒合症によって引き起こされる諸症状との相関関係を具体的に示すと、以下のようになります。

 

軽度: ①

↑  

中程度: ②

↓  

重度: ③

 

①:症状なし

軽度三角頭蓋でも症状が全く見られないケースが存在するという症例の存在によるもの。

 

②:内斜視嘔吐特有の精神症状の発現

→ 早期癒合症の頭蓋骨による大脳皮質への圧迫が開始され、早期癒合症特有の精神症状が出現する。

内斜視、嘔吐が出現するという情報については、当方の身体症状をもとにとったものである。

 

③:②の段階の症状 +  頭痛うっ血乳頭、(眼球突出、)精神運動発達遅滞(特有の精神症状の悪化)

 

赤文字「頭蓋内圧亢進症状の三徴」です。

  

第3 頭蓋内圧亢進症状の定義づけの背景(「三徴」とは)

現在、脳神経外科学においては、以下の身体症状が頭蓋内圧亢進症状に該当すると定義づけています。

  • 悪心のない嘔吐
  • 頭痛
  • うっ血乳頭

これらの症状は頭蓋内圧が亢進したときに発生する代表的な3つの症状であり、このことから「頭蓋内圧亢進の三徴」という通称で認知されているそうです。

頭蓋内圧亢進症状について、脳神経外科学では一般的に脳ヘルニア(脳内部からの体積膨張)によって引き起こされると考えられています。脳ヘルニアによって引き起こされる頭蓋内圧亢進は急性症状を持ちます。

すなわち、脳ヘルニアによって頭蓋内圧が亢進すると同時に、嘔吐や頭痛、うっ血乳頭といった症状が突然出現し、急速に悪化するという病態がみられることから、以上の3つを「三徴」として定義づけるに至ったのでしょう。

 

第4 頭蓋内圧亢進症状の2類型(自作概念)

しかし、なかには通常とは異なるプロセスを経る頭蓋内圧亢進症状が存在すると私は考えています。それは早期癒合症を病因とする頭蓋内圧亢進症状です。

これの存在を論証するため、頭蓋内圧亢進を分類しました。頭蓋内圧亢進という現象を別の言葉を用いて表現すると、

脳組織の体積と、頭蓋骨内の容積との間に保っていた均衡が崩壊した状態

といえます。

つまり、「脳組織」と「頭蓋骨」という2つの要素によって均衡が成り立っているのですから、その均衡の崩壊は2通り存在するのです。

 

1 体積膨張による頭蓋内圧亢進症状

まず一つ目の類型とは、脳組織の体積膨張による頭蓋内圧亢進です。

脳ヘルニアにより脳組織の体積が膨張するのに対し、その変化に伴い頭蓋骨が広がることはなく、その容積が一定のままであるため、脳組織の体積と頭蓋骨の容積との間に保っていた均衡が崩壊し、頭蓋内圧亢進症状が発生します。

このタイプの頭蓋内圧亢進症状を引き起こす病因となるものは、以下の通りです。

 

2 容積収縮による頭蓋内圧亢進症状

2つ目の類型とは、頭蓋骨の容積収縮による頭蓋内圧亢進です。

早期癒合症による頭蓋内圧の亢進が、これに該当します。

  

第4 早期癒合症と頭蓋内圧亢進の関係についての仮説(加筆中)

 1 「容積収縮による頭蓋内圧亢進症状」の症状進行の順序

早期癒合症によって引き起こされる「容積収縮による頭蓋内圧亢進」は、原因の所在が外部的であるため、一般の頭蓋内圧亢進とは異なる経過を踏むという仮説を私は立てました。その内容は以下の通りです。

  1. 頭蓋骨の狭小化による大脳皮質への圧迫
  2. 大脳皮質への圧迫の許容限度を超えたとき、脳脊髄液圧の上昇が開始
  3. 頭蓋内圧亢進症状に該当する身体的症状の出現

 

この仮説の信憑性をさらに高める事実として、大脳皮質が柔らかいことが挙げられます。大脳皮質の柔らかさは「豆腐レベル」であるといわれます。ゆえに、脳脊髄液の圧力が高まる前に大脳皮質の機能に大きな問題が現れることは、有り得ることではないでしょうか。

 

2 持論→「大脳皮質への圧迫は脳脊髄液圧の上昇より優先する」

そして、これに、早期癒合症による頭蓋変形の程度と、早期癒合症によって引き起こされる諸症状との相関関係に関する仮説を当てはめると以下のようになります。

 

軽度: ①

↑  {大脳皮質への圧迫}

中程度: ②

↓  {脳脊髄液圧の上昇}

重度: ③

 

脳ヘルニアによる頭蓋内圧亢進は脳組織の体積が膨張するため、脳の中心に位置する脳脊髄液の圧力が上昇することは明白です。

しかし、早期癒合症による頭蓋内圧亢進は、脳の外側に位置する頭蓋骨が脳を圧迫しているので、外側から悪影響が出ると推定されます。すなわち本格的に頭蓋内圧が亢進する前段階において、頭蓋骨により大脳皮質が圧迫される段階があるということです。

ゆえに、軽度三角頭蓋である場合、頭蓋内圧が高くなる前に大脳皮質が圧迫されることにより、精神症状が現れると考えるべきです。