「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症と特異的言語発達障害(聴覚情報処理障害)の当事者研究ブログです。主にワーキングメモリ(注意容量と音韻ループの関係)について研究しています。当ブログの記事における内容及び理論は無断での引用は禁止ですが、リツイート推奨(笑)。更新情報はツイッターで配信しています。(キーワード:特異的言語発達障害(聴覚情報処理障害)、音韻ループ、軽度三角頭蓋)

特異的言語発達障害の言語理解の特徴:「脳内マルチタスク機能」の無効化による言語理解力の低下の論証的考察

ここでは、言語情報を入力する際における特異的言語発達障害(ワーキングメモリ容量減少症候群)の症状の病理を解析する。

 

 

第1 前提知識 

この項目では、当ブログで紹介している自作概念のうち、当記事のなかで関係性の高いと思われるものを紹介する。

1 言語情報の入力における「脳内マルチタスク」の必要性について

言語情報を入力する際、ワーキングメモリにおいて保持された以下の2種類の情報を統合処理することによって、文の理解が可能となる。

・句の意味情報(前の段階でワーキングメモリに貯蔵したもの)

・句の意味情報(新しくワーキングメモリに貯蔵したもの)

 

すなわちその統合処理を達成するためには、ワーキングメモリに2種類の情報を同時に保持しなければならない。これが、言語情報の入力時における「脳内マルチタスク(同時処理)」である。

そして脳内マルチタスクを実行するワーキングメモリの機能を「脳内マルチタスク機能」と私は定義づけている。

 

詳細は以下の記事にて紹介している。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 2 「ワーキングメモリ容量減少症候群」の概要

「ワーキングメモリ容量減少症候群」とは、ワーキングメモリに複数の情報を同時に保持できないゆえに、「複数の情報の統合処理によって達成可能となる情報処理」を実行するのが困難である性質を原因とする精神症状の総称である。

その症状について、日常生活面においては「不注意症状」が出現し、そして言語活動面においては特異的言語発達障害(SLI)として認められる症状が出現する。

この精神障害を「機能の無効化」という表現を用いて定義づけるならば、「脳内マルチタスク機能」の無効化による精神障害であると私は考えている。

 

詳細は以下の記事にて紹介している。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

3 特異的言語発達障害の特徴

文の理解は「複数の情報の統合処理によって達成可能な認知行為」である。これを即時に達成するためには、ワーキングメモリによる脳内マルチタスク機能が備わっていることが必要不可欠な条件である。

すると、「脳内マルチタスク機能」が無効化されている「ワーキングメモリ容量減少症候群」となると、文の理解及び運用に支障が生じる。これが現在特異的言語発達障害として学術的に認知されている精神症状である。

私が導き出した特異的言語発達障害の特徴は、以下のとおりである。

・文の入力および出力が困難である。統語構造の複雑性に比例して困難の度合いが増す。

・句の入力および出力には問題がない。

・感覚性言語認知機能、および非言語認知機能に問題はない。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

第2 序説 

脳内マルチタスク機能が無効化されると、言語の入力時に保持されるべき2種類の情報を同時に保持するという情報処理様式を実行することが不可能になる。すると、継時に保持するという情報処理様式を選択せざるを得ない。その結果、入力された視覚言語情報および聴覚言語情報を知覚しているにもかかわらず、統合処理に必要な言語情報の意味情報を保持していないため、文を理解できない。

しかし、実際は完全に文を理解できないというわけではなく、文を即座に理解するのが困難な状態という程度にとどまっている。この現象は、入力された視覚言語情報あるいは聴覚言語情報を、あたかも自分自身が出力しているかのごとく「催眠」させる効果を持つ「追唱」を言語中枢が実行していることに由来する。

 

第3 脳内マルチタスク機能の無効化による情報処理様式の変容

1 脳内マルチタスク機能の無効化による、言語情報理解における情報処理様式

通常(脳内マルチタスク機能の有効化状態)の場合、新たな句の言語情報の貯蔵と同時に、既存の句の意味情報の保持が可能である。

一方で脳内マルチタスク機能が無効化された場合では、統合処理(文の理解の最終プロセス)の材料となる句の保持あるいは貯蔵のどちらかしかできない情報処理様式を選択せざるを得ない状況になる。

 

2 「貯蔵の専念あるいは保持の専念」という極端な情報処理様式パターン

それでは、具体的に脳内マルチタスク機能が無効化された状態では、言語理解時においてどのような情報処理様式を行うのか。それは、保持、あるいは貯蔵しかしないというものである。

ただし、ここで注意してほしいのは、以下に紹介するものは脳内マルチタスク機能が無効化された状態のものであって、特異的言語発達障害(「ワーキングメモリ容量減少症候群」)のものではないということである。言い換えれば、以下に紹介する情報処理様式の例は、脳内マルチタスク機能の無効化によると理論的に考えられる情報処理様式の極端例である。

 

・情報処理様式A:「貯蔵に専念する」

不注意症状のうちの、保持エラーに該当する。

S = P(a), P(b), P(c)

 

① P(a)の入力: 言語情報Aの貯蔵および変換

 

② P(b)の入力: 言語情報Bの貯蔵および変換

 (意味情報Aの保持が不安定になる)

 

③ P(c)の入力: 言語情報Cの貯蔵および変換          

 (意味情報Bの保持が不安定になる)

 

④ 意味情報Cの保持(Sの成立時)

 

・情報処理様式B:「保持に専念する」

S = P(a), P(b), P(c)

 

① P(a)の入力 → 言語情報Aの貯蔵および変換

 

② P(b)の入力時 → 意味情報Aの保持 

言語情報Bの貯蔵および変換が実行されない)

 

③ P(c)の入力時 → 意味情報Aの保持 

言語情報Cの貯蔵および変換が実行されない) 

 

④ 意味情報Aの保持(Sの成立時)

 

文の入力(知覚)が終了したとき、どちらの情報処理様式においても、ワーキングメモリに保持されている情報は不完全なものであるため、文の理解は不可能になるという結論が得られる。

 

第4 特異的言語発達障害の言語理解時における情報処理様式について

1 代償機能の存在

しかし、実際は脳内マルチタスク機能が無効化されている特異的言語発達障害は、文の理解が不可能になるという性質を持たない。

なぜなら人間の脳内には、言語理解のための脳内マルチタスク機能に代わり、言語理解をするための仕組みが存在するからである。それは「追唱」という言語情報の擬似的な出力処理機能を用いた情報処理様式である。すなわち追唱とは、脳内マルチタスク機能の代償機能である。

疑似的と表現した根拠とは、その出力処理が自分に向けられる行為であることにある。追唱による言語理解の仕組みとは、言語情報を出力した際にワーキングメモリに保持される情報の一つに該当する「回想的記憶」(既に出力した言語情報に関する記憶)を参照することにより、間接的に言語情報を理解することが可能になる。

 

2 追唱機能を用いた言語理解の特徴

追唱機能を用いた情報処理様式は、貯蔵と保持の継時処理である。しかし、これは非効率であると言わざるを得ない

「言語のシステム」(普遍文法とでもいうべきだろうか?)は、それの認知の効率化を実現するために、人間の脳に含まれる脳内マルチタスク機能が有効であることを前提に形成されている。すると、追唱を用いた継時処理は非効率なものであり、言語理解の処理速度の低下を招くことは避けられない。その具体例は以下のとおりである。

 

S = P(a), P(b), P(c)

① P(a)の入力: 言語情報Aの貯蔵および変換

 

② P(b)の入力: 意味情報Aの保持

 

③ P(c)の入力: 意味情報Aの保持 & 言語情報Cの貯蔵および変換

 

④ 意味情報Aの保持  &  意味情報Cの保持(Sの成立時)

 

句bが入力されたとき、意味情報Aの保持に専念しているため、句bの意味情報は、ワーキングメモリに貯蔵及び保持ができない。(→②)。

ゆえに、この場合、文の意味情報を創出するための統合処理をするための材料である意味情報Bがワーキングメモリに存在しない(→④)ため、文の意味を理解するのは不可能となる。

このように、処理速度の低下により、入力するべき言語情報の貯蔵するタイミングを失う事態に陥る。すると、文の理解が不可能になるのである。 

言語理解時において、追唱という脳内マルチタスク機能の代替手段として追唱機能を利用することは、特異的言語発達障害において言語理解をするための手助けにはなるが、やはり不完全なものであるという結論を導き出さざるを得ない。

 

第5 特異的言語発達障害と小児慢性疲労症候群の関係についての仮説

追唱機能という代替手段を用いることのデメリットはほかにも存在する。

追唱機能に限らず、代償あるいは代替機能の使用は、通常であれば使わなくてもよい脳機能を使っていることになるため、小児慢性疲労症候群につながるのではないかと私は推測している。

小児慢性疲労症候群については、考えがまとまり次第、詳しく紹介する。