「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症と容量性注意障害に関する当事者研究ブログです。主にワーキングメモリ(注意容量と音韻ループの関係)について研究しています。更新情報はツイッターで配信しています。(他キーワード:特異的言語発達障害、軽度三角頭蓋)

特異的言語発達障害による学業の悪影響に関する考察(学習障害との関係性の検討とともに)

 

第1 序論

特異的言語発達障害が学業を達成するうえでの障壁となることは、確実です。しかし、特異的言語発達障害学習障害に分類するという見方は不適切であると私は考えています。その根拠とは、特異的言語発達障害が学習の場面にとどまらず、学習障害よりも広範囲に症状が存在することにあります。

 

第2 先行研究

特異的言語発達障害学習障害の関係について考察した研究は、既に存在します。

・山根律子「特異的言語障害とそのサブタイプ」

 

ci.nii.ac.jp

 

この研究では、両者の関係について以下のように説明しています。

「特異的言語障害は、学習障害の一部としてとらえられる場合もある。 ・・・学習障害と特異的言語障害とでは、定義の問題に加えて、質的な類似性についての指摘もある。・・・特異的言語障害の原因となるメカニズムが、他の学習障害の領域と共通するかもしれないことが示唆される。このように、特異的言語障害の位置づけは未だあいまいである。「学習障害」「コミュニケーション障害」といった用語の定義が一定でないため、定義により特異的言語障害の位置づけが異なることがその理由としてあげられる。」

 

第3 学習障害の定義

まず、「学習障害」という概念の性質について軽く触れておきましょう。

1 定義の曖昧性

世間一般で広く認知されている「大人の発達障害」のなかには、。ADHDASDと並ぶ「三大巨塔」のひとつとして、学習障害(LD)を紹介するケースが多いように思います。どうやら世間一般には、この学習障害という精神障害があたかも存在するという「解釈」があるようです。

この「学習障害」という概念について、特殊な精神障害概念であると私は考えています。例えばADHDASDという精神障害概念は、根本的な症状および病理をおおよそ画一的に説明することができます。

これに対し、学習障害は包括的な概念であるため、一つに絞るということは不可能です。すなわち、「学習障害はこういった症状を持つ」という説明は妥当ではなく、「この精神障害学習障害である」、というように説明するほうが正しいということになります。

 

2 学習障害の内容

学習障害にカテゴライズされる条件を簡潔にまとめると、

「知能が正常であるが、学業を達成するうえでの困難さという性質を持つこと」

です。

言い換えると、社会不適合の性質が顕著となる場面が、学業にかかわる認知行為をするときに限られるという特徴を持つ精神障害であれば「学習障害」に含まれるということです。

 

3 「学習障害」の中身について(一般に学習障害として認知されている精神障害

学習障害という概念のなかに含まれる複数の精神障害は、病理および現れる症状が全く異なるもの同士となります。では、実際にどのような精神障害学習障害に該当するのでしょう。これについて紹介します。

 

学習障害」はDSM-5以降において「限局性学習障害」という名称に変化しました。これを構成する精神障害は以下の通りです。

ディスレクシア

視覚言語情報を入力する機能の無効化

・ディスグラフィア(書字表出障害)

視覚言語情報を運用する機能の無効化

・ディスカリキュア(算数障害)

数字およびそれに関係する概念の理解及び運用の困難さ

 

限局性学習障害は以上の3種類のみとなっています。

 

第4 学習障害言語障害の関係

ここで気になることがあります。

言語障害学習障害であるか?」

いいえ、両者は別物です。

言語障害」という概念に含まれる精神障害は、「感覚性言語機能」や「運動性言語機能」といった機能が無効化された状態であると説明できます。例えば、失語症(特にウェルニッケ失語)や表出性言語障害および受容性言語障害といった精神障害が、言語障害にカテゴライズされます。言語障害は、言語を使う場面において困難が生じている状態です。想像の通り、言語障害は学業の達成に与える悪影響は甚大なものです。

しかし、言語障害の悪影響は学業にとどまらず、社会生活はおろか日常生活を送る場面においても及びます。なぜなら、人間が言語情報を扱えることを前提として、人間社会が成り立っているからです。

 

一方の限局性学習障害を構成するディスレクシアやディスカリキュアとは、言語機能の無効化ではありません。言語情報のメディアとなっている視覚言語情報(言語学的に表現すると「記号表示」)を理解、あるいは運用する機能が無効化されている状態です。

 

では、話を冒頭に戻しましょう。

特異的言語発達障害学習障害ではありません。

しかし、学業の達成における支障の度合いは、限局性の学習障害に劣らないほどであると私は考えています。

 

第5 特異的言語発達障害による学業の悪影響の現れ方

1 特異的言語発達障害は不注意症状と併存する

特異的言語発達障害は、「ワーキングメモリ容量減少症候群」(自作概念、当記事末尾に詳細あり)の言語症状です。日常生活面においては不注意症状があることから、特異的言語発達障害と不注意症状は、「ワーキングメモリ容量減少症候群」のもとで必ず併存します。

ゆえに、学習面だけでなく日常生活面における精神症状も存在するため、学習障害の定義に収まるものではありません。また、言語障害であるともいえないので、やはり「ワーキングメモリ容量減少症候群」の一つというようにカテゴライズするのが妥当であると私は考えます。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 

2 症状と学業の達成との関係

特異的言語発達障害の症状とは、複雑な統語構造を持つ文の形態を持つ言語情報の理解及び運用の困難性による、処理速度の遅さです。

この症状が学業の達成に与える悪影響とは、大きく分類すると2種類の問題が存在します。

 

① 「実体的問題」

意味:学業の内容との相性の悪さ、要するに科目の内容との関係です。

例↓

・読解問題が大半となる国語、現代文

・英語の中でも、複雑な読解問題やリスニング、ライティングの精度が求められるもの

 

② 「手続的問題」

意味:学業の内容を伝達する「メディア」との相性の悪さを意味します。

例↓

・先生の話を理解するのが困難である。理解しようとすると、追唱により脳が余計に消耗し、疲労する。

・教科書の読解が困難である。これは文系科目及び一部の理系科目において顕著である。

 

第6 特異的言語発達障害による学業達成への悪影響を回避する方法

限局性学習障害とは異なり、特異的言語発達障害による学業に与える悪影響は、ある程度防ぐことが可能です。

まず、「実体的問題」について。以下の科目は特異的言語発達障害の悪影響を受けにくい科目の領域は以下のとおりです。

・理数系科目全般

・英語のなかでは英文法、語彙に関する問題

・国語のなかでは漢字に関する問題

 

なので、特異的言語発達障害を抱えている場合、理数系科目および、読解問題による配点の少ない言語科目を採用する試験を選択するべきです。

 

次に「手続的問題」について。特異的言語発達障害は、現実の授業を受けることによって得られる恩恵は少ないです。なので、反復が不可能な授業を選ぶことより、反復が可能な選択肢、例えば教科書を読んでいく方がよいでしょう。

現代は技術の発展により、現実の授業に代わる方法として、例えばオンラインの動画講座という選択肢を採用することにより、たとえ聞きもらした部分を繰り返すことが可能になります。

しかし、いずれにしても教科書および動画講座の中身は文章であるため、結局のところ理解するスピードは通常と比べ遅いため、理解するまでには時間がかかってしまします。

 

特異的言語発達障害は、学力の低下の要因としては有力であるため、根本原因である「ワーキングメモリ容量減少症候群」を治療することが妥当であるといえます。

 

「ワーキングメモリ容量減少症候群」の詳細については、以下の記事をご覧ください。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp