「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症と容量性注意障害に関する当事者研究の記録です。主にワーキングメモリ(注意容量と音韻ループの関係)について研究しています。更新情報はツイッターで配信しています。(他キーワード:特異的言語発達障害、軽度三角頭蓋、ワーキングメモリ)

特異的言語発達障害の症状の特徴と病理、原因疾患とは?(ワーキングメモリ、容量性注意障害との関係)

特異的言語発達障害の病理、およびこれを引き起こす原因について、当事者の観点で考察しました。

(キーワード:ワーキングメモリ、音韻ループ、「注意の焦点」、聴覚情報処理障害(APD)、早期癒合症、前頭前野背内側部(DLPFC))

  

第1 本稿の目的:「特異的言語発達障害」概念からの具体性の「抽出」

1 特異的言語発達障害の定義

特異的言語障害(「言語機能の障害」の範疇に存在する)の定義について、公式的な見解は以下の通りである。

非言語性知能の低下、聴覚障害、神経学的異常などの言語発達を阻害する要因が認められないにもかかわらず、言語能力に著しい制約がみられる障害*1

 

2 「特異的言語発達障害」は不特定概念である

「特異的言語発達障害」という概念は、「言語機能の障害であるが、学術的に定義づけられていない言語障害」という意味を持つため、不特定概念です。冒頭で「特異的言語発達障害の病理を説明する」と記したが、一つの言語障害概念の具体性を抽出すると表現する方が正しいです。

 

3 考察方法について

私自身は、特異的言語発達障害の当事者です。私自身が抱いている他の疾病との関連や、認知心理学神経心理学の知見をもとに分析しています。

 

特異的言語発達障害の先行研究一覧

オンラインで閲覧できる先行研究を以下にピックアップしました。

 

・石田宏代:「特異的言語発達障害児の言語発達 -臨床の立場から-」

ci.nii.ac.jp

 

・「特異的言語障害を伴う発達性ディスレクシアの1例」

www.jstage.jst.go.jp

 

田中裕美子:「特異的言語発達障害言語学的分析」 

www.jstage.jst.go.jp

 

・室橋春光:「読みとワーキングメモリー:「学習障害」研究と認知科学ci.nii.ac.jp

  

・山根律子:「特異的言語障害とそのサブタイプ : 早期療育に向けての研究課題

ci.nii.ac.jp

 

特異的言語発達障害の症状

ここから特異的言語発達障害の症状を紹介しますが、先行研究ではなく私自身の症状を紹介します。

1 言語面での症状

処理の対象となる言語情報の種類が文であるときに、以下のような症状が認められる。

・ 言語理解の困難性(聴覚情報処理障害、言語発達遅滞)

リスニング能力の低下、読解力の低下

・ 言語運用の困難性

口下手、言い間違い、遅筆

・ 言語情報処理のマルチタスクの困難性

同時的に複数の言語情報を扱うことが困難である。

  • 新聞を読みながらラジオを聴く
  • 電話応対しながら、上司の話を聴き取る

 

2 そのほかの症状

・ ポリフォニー音楽の聞き取りの困難性

複数の旋律が存在する音楽(ポリフォニー)の鑑賞の際、同時に複数のメロディを聴き取れない。

・ 不注意症状

日常生活において、物忘れ等が多い。 

 

特異的言語発達障害の構造解析

ここでは認知心理学の概念を用いて、先述した特異的言語発達障害の症状が発生する原因を提示します。

1 序論

特異的言語発達障害は、容量性注意障害の言語症状である。

容量性注意障害は、ワーキングメモリネットワーク(WMN)の機能低下によって引き起こされる。容量性注意障害の性質について認知心理学における理論を用いて説明すると、「音韻ループの機能低下」、「注意の焦点の狭小化」(※)といえる。

独自の表現を用いると、同時に複数の事柄を思考するための「脳内マルチタスク機能」の無効化された状態である。

容量性注意障害に関する内容は以下の記事で扱っています。 

 ※ 注意資源(神経伝達物質)の供給に異常が認められるADHDとは異なり、容量性注意障害は、注意資源が十分に供給されている。

 

2 言語行為における「脳内マルチタスク機能」の役割

人間が言語情報を認知する際に利用する基本単位は「句」です。すると、句の連続である「文」の理解及び運用を即時に実行するためには、同時に複数の情報を短期記憶として保持するという「脳内マルチタスク機能」の有無によって決定づけられる。

通常、「脳内マルチタスク機能」が有効である場合、同時に複数の情報をワーキングメモリに保持できる。例えば文を理解する際には、保持した複数の句をまとめることで文の意味理解を達成できる。

  

3 「脳内マルチタスク機能」の無効化による、文の理解及び運用への悪影響(記事リンクあり)

 「文の運用及び理解の苦手さ」という特異的言語発達障害の症状を言い換えると、「保持した複数の情報のまとめることで達成可能な認知行為の達成困難性」といえる。厳密に言えば、容量性注意障害の病態により「脳内マルチタスク機能」が無効化された場合、複数の情報を同時に保持できない性質になる。

すると統合処理を効率的に実行できないため、文の運用及び理解を即時的に達成できない。しかし、同時に複数の情報を保持できないだけであり、統合処理の素材となる複数の情報を継時的に保持するという非効率な処理を実行することが可能である。ゆえに、文の運用及び理解は可能である。その非効率が、即時的に文の運用及び理解を達成できないという特異的言語障害独特の問題を引き起こす。

このテーマに関する詳細はブログ内で扱っている。

 言語運用力の低下についてはこちら↓


 一方の言語理解力の低下についてはこちらを↓

 

特異的言語発達障害(容量性注意障害)の原因疾患について

先述したように、特異的言語発達障害の根本疾患である容量性注意障害複数の情報を保持するための脳機能である「脳内マルチタスク機能」を回復させることで、特異的言語発達障害の症状は解消される

ワーキングメモリネットワークの機能低下を引き起こす疾病として、頭蓋骨縫合早期癒合症(以下、「早期癒合症」)が挙げられる。

ちなみに特異的言語発達障害の当事者である当方は、軽度の早期癒合症の成人当事者でもある。

早期癒合症は頭蓋骨の狭小化という病態を持つ先天的疾病である。すると、ワーキングメモリネットワークを構成する前頭前野背内側部(DLPFC)が頭蓋骨に圧迫されることが十分に想定される。他脳部位の圧迫の可能性も当然存在する。

圧迫されたDLPFCの機能低下は、脳血流シンチグラフィー(SPECT)などで観測可能である。

 

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