「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者、および認知心理学の研究者の視点で考えたことを発信しています。メインテーマは「注意」の認知科学的分析。なお当ブログの記事における内容及び理論は無断使用禁止です。

特異的言語発達障害が示す症状の病理および原因についての論考

  

第1 本稿の目的:「特異的言語発達障害」概念からの具体性の「抽出」

1 特異的言語発達障害の定義

特異的言語障害(「言語機能の障害」の範疇に存在する)の定義について、公式的な見解は以下の通りである。

非言語性知能の低下、聴覚障害、神経学的異常などの言語発達を阻害する要因が認められないにもかかわらず、言語能力に著しい制約がみられる障害*1

 

2 特異的言語発達障害の曖昧性

「特異的言語発達障害」という概念は、「言語機能の障害であるが、学術的に定義づけられていない言語障害」という意味を持つため、恣意的なものであるといえる。病理が解明されていないことからこのような名称が与えられているという点で、言語障害概念における特異的言語発達障害の位置づけは、発達障害における特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)の位置づけと同じである。

特異的言語発達障害は、無効化されている認知機能を学問によって定義することが不可能である言語障害の「集まり」であるため、その範疇の中に複数の別個のものが存在するという可能性も多分に考えられる。

冒頭で「特異的言語発達障害の病理を説明する」と記したが、その表現は本稿の作成を目的とするうえでの便宜的なものである。特異的言語発達障害という「集まり」から、一つの言語障害概念の具体性を抽出すると表現する方が正しい。

 

3 考察方法について

当方は、特異的言語発達障害の当事者である。

この視点を通して、私自身の経験や知見に基づいた分析内容を当ブログのなかで紹介している。

 

第2 先行研究

オンラインで閲覧できる先行研究を以下にピックアップしました。

 

・石田宏代:「特異的言語発達障害児の言語発達 -臨床の立場から-」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/44/3/44_3_209/_pdf

 

・「特異的言語障害を伴う発達性ディスレクシアの1例」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/36/3/36_432/_pdf

 

田中裕美子:「特異的言語発達障害言語学的分析」 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/44/3/44_3_216/_pdf

 

・室橋春光:「読みとワーキングメモリー:「学習障害」研究と認知科学

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/42649/1/murohashi_JJLD18.pdf

  

第3 特異的言語発達障害の症状

処理の対象となる言語情報の種類が文であるときに、以下のような症状が認められる。

 ・言語理解の障害

リスニング能力の低下、読解力の低下、言語発達遅滞

 ・言語運用の障害

口下手、言い間違い、遅筆

 

第4 病理解析

言語情報を認知する際に人間が利用する基本単位が句であることを踏まえたうえで、文の理解及び運用の特徴を考察することで、特異的言語発達障害の病理を導出できると私は考えている。

1 特異的言語発達障害と「ワーキングメモリ容量減少症候群」

特異的言語発達障害は、「ワーキングメモリ容量減少症候群」の精神症状のうち、言語機能の面で認められる症状である。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 

2 無効化されている脳機能の定義づけ

特異的言語発達障害精神障害としての具体性を与えるためには、無効化されている機能を定義づける必要がある。

「ワーキングメモリ容量減少症候群」を、私は「脳内マルチタスク機能」の無効化によって発生する精神症状の総称であると説明している。すなわち、特異的言語発達障害とは「脳内マルチタスク機能」の無効化により現れる言語機能面での症状であると私は考えている。

 

3 「脳内マルチタスク機能」の有無による文の理解及び運用への影響

「文の運用及び理解の苦手さ」という特異的言語障害の症状は、「複数の情報の統合処理によって達成可能な認知行為」即時的に達成するのが不可能な体質由来のものである。

文の理解及び運用は、「複数の情報の統合処理によって達成可能な認知行為」である。これを即時的に実行できるか否かという問いに対する答えは、同時的に複数の情報をワーキングメモリに保持するという「脳内マルチタスク機能」の有無によって決定づけられる。

① 「脳内マルチタスク機能」の有効化と文の理解及び運用

通常、すなわち「脳内マルチタスク機能」が有効である場合、同時に複数の情報をワーキングメモリに保持できるため、統合処理を効率的に実行できる。ゆえに文の運用及び理解を即時に達成できる。

② 「脳内マルチタスク機能」の無効化と文の理解及び運用

しかし、「脳内マルチタスク機能」が無効化されている場合、複数の情報を同時に保持できない性質になる。すると統合処理を効率的に実行できないため、文の運用及び理解を即時的に達成できない。しかし、同時に複数の情報を保持できないだけであり、統合処理の素材となる複数の情報を継時的に保持するという非効率な処理を実行することが可能である。ゆえに、文の運用及び理解は可能である。その非効率が、即時的に文の運用及び理解を達成できないという特異的言語障害独特の問題を引き起こす。

このテーマに関する詳細はブログ内で扱っている。

 言語運用力の低下についてはこちら↓

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

一方の言語理解力の低下についてはこちらを↓

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp