「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

認知心理学の研究をする頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者が考えたことを書いていきます。扱っている症状は原因不明のものばかり(泣)。当ブログの記事における内容及び理論は無断転載及び引用は禁止です。更新情報はツイッターでも配信しています。

特異的言語発達障害の言語運用の特徴:「脳内マルチタスク機能」の無効化による言語運用力の低下の論証的考察(言い間違いおよび口下手、遅筆の原因の心理学的考察)

 

第1 前提知識

この項では、当ブログで紹介している自作概念のうち、当記事のなかで関係性の高いと思われるものを紹介する。

1 言語情報の出力における「脳内マルチタスク」の役割

言語情報を出力する際には、ワーキングメモリにおいて3種類の情報が保持されている。

・変換及び出力処理対象の言語情報

・展望的記憶

・回想的記憶

言語情報のなかでも「文」という形態を持つものを出力する際に、文を構成する句の円滑な出力を実行するためには、以上の3種類の情報を同時に保持することが条件である。そのために必要な機能が、ワーキングメモリに備わっている「脳内マルチタスク機能」である。

 

詳細は以下の記事にて紹介している。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

  

2 「ワーキングメモリ容量減少症候群」の概要

「ワーキングメモリ容量減少症候群」とは、ワーキングメモリに複数の情報を同時に保持できないゆえに、「複数の情報の統合処理によって達成可能となる情報処理」を実行するのが困難である性質を原因とする精神症状の総称である。

その症状について、日常生活面においては「不注意症状」として認められる症状、そして言語活動面においては特異的言語発達障害(SLI)として認められる症状が出現する。

この精神障害を「機能の無効化」という表現を用いて定義づけるならば、「脳内マルチタスク機能」の無効化による精神障害であると私は考えている。

 

詳細は以下の記事にて紹介している。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

3 特異的言語発達障害の特徴

文の理解は「複数の情報の統合処理によって達成可能な認知行為」である。これを即時に達成するためには、ワーキングメモリによる脳内マルチタスク機能が備わっていることが必要不可欠な条件である。

すると、「脳内マルチタスク機能」が無効化されている「ワーキングメモリ容量減少症候群」となると、文の理解及び運用に支障が生じる。これが、今日において特異的言語発達障害として学術的に認知されている精神症状である。

私が導き出した特異的言語発達障害の特徴は、以下のとおりである。

・文の入力および出力が困難である。統語構造の複雑性に比例して困難の度合いが増す。

・句の入力および出力には問題がない。

・感覚性言語認知機能、および非言語認知機能に問題はない。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

第2 病理解析(脳内マルチタスク機能の無効化と言語情報の出力)

特異的言語発達障害(ワーキングメモリ容量減少症候群)による、言語情報を出力する際の症状の病理を解析する。

 

1 言い間違い

① 説明

「言い間違い」とは、意味情報から言語情報への変換処理において発生するミスである。そのミスは句レベルのものである。

例:「エスカレーターに乗る」と発言することを意図したのに対し、「エレベーターに乗る」と発言した。

 

② 特徴

言い間違いは、文を出力する際に発生する。句を出力する際には発生しない。

 

③ 原因

ワーキングメモリによる「脳内マルチタスク機能」によって保持されるべき情報のうち、「変換及び出力処理対象の言語情報」への注意がおろそかになったことが、言い間違いを発生させる。

「複数の情報の統合処理によって達成可能な行為」である文の出力行為において、「ワーキングメモリ容量減少症候群」では、「展望的記憶」や「回想的記憶」を保持することに集中した結果、「変換及び出力対象の言語情報」への注意がおろそかになる可能性がある。すると、言語情報に変換する際に、本来の言語情報に「近い」言語情報を選択することにつながり、意図した言語情報とは異なる言語情報を出力するという結果をもたらす。

 

2 口下手

① 説明

「口下手」とは、心因的なものと器質的なものとが存在する。ここでは文を組み立てるのが遅いという器質的な性質を持つものを扱う。

文を出力する際に、文を構成する複数の句の連続性の出力が流暢に行われない症状が存在する。言語情報の中でも聴覚言語情報を出力する際に発生するこの問題を、口下手という。

 

② 特徴

ワーキングメモリ容量減少症候群による口下手は以下のような場面において発生する。

・統語構造が成立している文の形態をもつ言語情報を話す

発話行為のように、意味情報から変換された言語情報を話すとき

例えば、以下のような場合においては、連続する「文の中の句」を出力する際の流暢性が阻害されることはない。

 

・名詞の羅列の発話:意味情報から聴覚言語情報への変換行為であるが、この言語情報は文としての統語構造を持たない。ゆえに、この言語情報の出力を達成する際に、「展望的記憶」及び「回想的記憶」のうち統語構造に関する部分を保持する考慮する必要性がない。

 

・音読:音読とは、入力された視覚言語情報から変換した聴覚言語情報を出力する行為であり、これを達成するためには意味情報への変換処理をする必要性は存在しない。音読における流暢性と言語情報の出力における流暢性は別問題である。ただし、当然のごとく「入力した視覚言語情報の意味を理解するのと同時に、聴覚言語情報を出力する」行為となると、流暢性が阻害されることになる。

 

ちなみに、音読行為に関する詳細は以下の記事の中で紹介している。

 atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

  

③ 原因

言語情報を出力する際にワーキングメモリで保持されるべき情報のうち、「展望的記憶」および「回想的記憶」の統語構造に関する部分が、「出力および変換処理の対象の言語情報」と同時に保持されていないことが原因である。

文を出力する場合、本来ならば「文のなかの句」を変換及び出力すると同時に、「文をどのように話せばよいか」ということを認識するために、展望的記憶及び回想的記憶を保持しなければならない。

では、「展望的記憶」および「回想的記憶」を「脳内マルチタスク機能」によって保持できない状態で文を出力するためには、どうすればよいか。同時処理ができなければ継時処理をするのである。すなわち、「ワーキングメモリ容量減少症候群」による言語情報を出力する際の情報処理様式とは、「変換及び出力」をした後、「展望的記憶」および「回想的記憶」の確認をするという継時処理である。すると、「脳内マルチタスク機能」による句の出力と統語構造の確認の同時処理と比較すると、連続する「文の中の句」を出力するのが遅くなることは明白である。

 

3 遅筆

「遅筆」とは文章を書くのが遅いことを意味する。

それには、書きたい内容を形成できないという心因的な「遅筆」と、文を構成するのが遅いという器質的な「遅筆」とが存在する。ここでは、器質的な「遅筆」を扱う。

文の統語構造および文章の構成を意識しながら、文を書くという行為がうまくできない状態を意味する。

口下手とは、意味情報から変換される情報が視覚言語情報である点で異なるのみで、遅筆の病理は、口下手と病理と共通する。ゆえにその病理については、口下手の病理解析を参考されたい。

 

第3 結論

文を出力する際に、脳内マルチタスク機能によって保持されている3種類の情報の統合処理を必要とするのは、人間が言語を認知する際に利用する基本単位が句であることに由来する。

ワーキングメモリ容量減少症候群による言語情報の出力における症状は、おもに2種類の問題が存在する。その原因となる脳内現象とは、言語情報を出力するときに脳内マルチタスク機能によってワーキングメモリに同時に保持されるべき情報のうち、いずれかの情報の保持が実践できなかったことにより発生する。

文を出力する際、脳内マルチタスクのうち「変換及び出力処理対象」のパートへの注意がおろそかになった場合、「言い間違い」という問題が発生する。一方、文を出力する際に、脳内マルチタスクのうち「展望的記憶」および「回想的記憶」のパートを「変換及び出力処理対象」のパートと同時に保持できない状態である場合、出力する言語情報の種類の違いにより「口下手」や「遅筆」という問題が発生する。

これらの問題は出力対象の言語情報の種類が文である際に発生する。ただ文を出力する際に、ここで紹介した問題が必ずしも現れるというわけではない。出力する言語情報の統語構造の複雑性や言語類型によって、現れる頻度は変化すると私は推測する。

 

特異的言語障害の実態解明のためにも、「脳内マルチタスク機能の無効化」と相性の悪い言語情報の特徴に関する法則を考察することが今後の課題である。