「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋縫合早期癒合症、および「ワーキングメモリ容量減少症候群」(仮)の成人当事者および研究者の視点で考えたことを発信しています。メインテーマは「注意」の認知科学的分析。

不注意な精神障害:「ワーキングメモリ容量減少症候群」の紹介 (特異的言語障害など)

 

第1 序論 

「ワーキングメモリ容量減少症候群」とは、私が提唱している自作概念となる症候群です。現在の精神医学においては、特定不能の広汎性発達障害に含まれおり、具体的な精神障害として認知されていません。その特定不能の広汎性発達障害から「実行機能(ワーキングメモリ)の容量」という観点より抽出して形成された概念が、この「ワーキングメモリ容量減少症候群」です。

その本質は、現在定義されている概念を扱うならば、「実行機能の無効化」ではなく「実行機能の小容量化」であるため、精神障害の中では軽症の範囲に含まれると推測できます。しかし、世間一般どころか専門分野においても認知されていないこと、また「処世術」が提示されていないため、この精神障害がもたらす社会適応の困難さは独特のものであり、「内因性の適応障害」になる危険性を持っています。

そのため、この精神障害の存在を告知し、その病理を解明し、解決策を提示する必要性を感じたため、当ブログを通して発信することに決めました。

 

第2 「ワーキングメモリ容量減少症候群」の定義

「脳内マルチタスク」を実行する機能が無効化されているため、「連続する情報処理によって構成される認知行為」に困難が生じている状態を指す。

その原因は、ワーキングメモリの機能の一つである「注意の焦点」の狭小化である。

不注意症状が主な症状。しかしながら注意資源の供給に問題はなく、注意制御機能は十分であるため、ADHDとは異なる。ゆえに、衝動性は認められず、集中力も高い。

パソコンで例えるならば、メモリ容量が1gbしか搭載されていない状態である(すると、複数の動作を実行できない)。

早期癒合症、軽度三角頭蓋による前頭前野背外側部への圧迫などの異常によって引き起こされると想定される。

  

第3 概念説明:「注意の焦点」と「脳内マルチタスク

「注意の焦点」とは、ワーキングメモリ理論に付け加える形で、認知科学者ネルソンコーワン(Nelson Cowan)氏が提唱している、ワーキングメモリの機能に関する概念です。

その意味は、短期記憶容量とでもいうべきでしょうか。

人間が認知する際には、ワーキングメモリに情報を貯蔵します。次の新しい情報を貯蔵する際に、前に貯蔵した情報を忘却してはいけない場合(後述する連続する情報処理によって構成される認知行為)が存在します。そのためには保持をしなければなりません。

すると、保持をしながら貯蔵をするという行動様式となります。これはまるで脳内で行われるマルチタスクであることから「脳内マルチタスク」と定義づけました。

そして、情報の貯蔵時に保持可能な情報の最大個数というのが、「注意の焦点」の容量に該当するそうです。

 

以下の記事の中で脳内マルチタスクについて紹介しています。 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

第4 症状の現れ方について

1 ワーキングメモリ容量減少症候群の症状→「連続する複数の情報の統合処理によって達成可能な認知行為」の困難

認知行為には以下の2種類が存在します。

・単独の情報処理で達成可能な認知行為

・連続する複数の情報の統合処理によって達成可能な認知行為

「ワーキングメモリ容量減少症候群」の場合、「単独の情報処理で達成可能な認知行為」を実行するのは全く問題ありません。

しかし、保持をしながら貯蔵をするという「脳内マルチタスク」を実行できないため、それを必要とする、「連続する複数の情報の統合処理によって達成可能な認知行為」の実行が困難です。

 

2 なぜ「症候群」か?

ワーキングメモリ容量減少症候群の「連続する複数の情報の統合処理によって達成可能な認知行為」の実行の困難は、日常面における「不注意症状」だけでなく、言語面でも悪影響をおよぼします。特異的言語障害(SLI)や言語発達遅滞の原因の一つであると私は考えています。

 

3 症状①:不注意症状1「保持エラー」

日常生活で現れる問題というのが不注意症状です。

例えば、モノを紛失するというケースについて分析すると、以下のようになります。

通常であれば、手元に持っていたモノを手放した直後に、新しい別の情報の貯蔵をしたとしても、モノを置いた場所に関する情報が保持が同時が同時に行われるので、モノを紛失を防止できます。

一方で、ワーキングメモリ容量減少症候群の人は、モノを置いた場所に関する情報の保持をしないままに、新しい別の情報の貯蔵をしてしまいます。

要は、脳内マルチタスクのうち、新しい情報の貯蔵だけをしてしまった結果の保持エラーが、不注意症状に該当します。

 

4 症状②:不注意症状2「マルチタスクの困難」

注意の焦点が狭小化されていると、一つの認知行為に対する注意だけで注意の焦点が使われてしまうので、マルチタスクが困難です。

例えば、2つのマルチタスクを構成する認知行為のうち、一方が「連続する情報処理によって構成される認知行為」であるならば、それをするだけで手一杯になります。

一方で、両方が「単独の情報処理によって達成可能な認知行為」である場合は、マルチタスクが簡単です。 

例えば、自動車の運転をする際のマルチタスクは、すべて「単独の情報処理によって達成可能な認知行為」で構成されているため、問題ありません。

一方で、新聞を読みながらラジオを聞く行為は、新聞もラジオも文の読解という「連続する情報処理によって構成される認知行為」であるため、絶対に不可能です。

 

聖徳太子はすごいなあと思いますね。(同時に10人の話し相手になったという逸話)

 

5 症状③:特異的言語障害

注意の焦点の狭小化は、言語理解および運用に悪影響を与えます。

言語性知能に問題はない一方で、その処理が遅くなるためです。その原因は、本来「脳内マルチタスク」として処理するべき部分を継時処理しているためです。

統語構造が複雑な言語情報になるほど、言語の理解・運用に困難を感じます。

私は、これを特異的言語障害の真相であると考えています。

詳細は別の記事で扱います。

 

特徴は以下の通りです。

・リスニング能力のとぼしさ

・口下手(展望記憶)

・作文が苦手(書きたいことがあっても、構造を練られない)

・文章読解が苦手(言語能力が高くても)

 

これらの特徴に共通することは、句の運用及び理解ではなく、文の運用及び理解であることです。

 

6 症状③:言語発達遅滞

特異的言語障害の状態は、幼児期における言語能力発達においても悪影響を与えます。すると、言語性知能が高かったとしても、特異的言語障害の性質を持っていると、言語発達遅滞になる可能性が高くなると私は考えています。

 

第5 対策

「古い情報の保持」と「新しい情報の貯蔵」を同時に処理できない状態においては、これらのタスクを継時的に処理することを常日頃から意識することが、対策になります。

しかし、残念ながらそれは日常生活の範囲内での症状の緩和ができるだけで、言語面の問題を解決できません。

 

第6「ワーキングメモリ容量減少症候群」を引き起こすもの

これは私の場合ですが、早期癒合症による前頭前野背外側部(DLPFC)への圧迫が、ワーキングメモリ容量減少症候群を引き起こすと仮定しています。 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 

第7 (結論)ワーキングメモリ容量減少症候群 = 「脳内マルチタスク」の実行機能の無効化状態

ワーキングメモリ容量減少症候群における問題点とは、「脳内マルチタスク」、すなわち古い情報の保持と新たな情報の貯蔵の同時処理が不可能になることで、社会適合に支障をきたすことです。

精神障害として認知されていない理由に、認知科学によって定義づけられている機能概念の無効化では説明できないことにあります。

それでは、精神障害を「機能の無効化」状態であるという論理に基づいて、ワーキングメモリ容量減少症候群を精神障害とみなすために、「脳内マルチタスク」(古い情報の保持と新たな情報の貯蔵の同時処理)を実行する行為を、実行機能の下位分類に該当する新たな脳機能として提唱します。

 

すると、ワーキングメモリ容量減少症候群とは「脳内マルチタスクの実行機能」の無効化状態といえます。