「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

考えたことを発信しています。メインテーマは認知科学。頭蓋縫合早期癒合症、および「ワーキングメモリ容量減少症候群」(仮)の成人当事者です。実行機能(ワーキングメモリ)について研究中。

「認知的マルチタスク」の具体例 (言語情報認知プロセスにおける認知的マルチタスク)

 

第1 まえがき

マルチタスクについて、自作概念ですが、「行為的マルチタスク「認知的マルチタスクの二つが存在するという内容を、以下の記事の中で紹介しました。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

初めにこの二つの自作概念について簡単に説明しましょう。行為的マルチタスクとは、行為レベルで区分される複数のタスクを同時に行うこと。俗にいう「マルチタスク」と同じ意味を持ちます。

一方の認知的マルチタスクについては、一つの行為を実行するための認知プロセスの中に存在するマルチタスクと説明しました。例として言語情報認知プロセスの中に存在する「貯蔵」と「保持」をあげました。

しかし通常、言語情報認知プロセスを構成する貯蔵と解釈、保持といった脳内処理は、それぞれ順番に処理されるものとして考えられています。私はこの考えに賛同していますし、異論の余地など全くありません。

 本稿の目的は、言語情報の認知プロセスを構成するこれらの脳内処理とマルチタスクを結び付けた視点についての説明をすることです。

ヒントは、言語情報の連続性(線条性ともいえる?)です。

そして、認知的マルチタスクとワーキングメモリの容量の関係について結論の中で言及します。

 

第2 言語情報の特徴

言語情報の特徴について説明します。ここでは言語情報の入力処理における認知プロセスに焦点を当てます。

まず、認知対象となる言語情報の性質について以下のように抽出しました。

 

(表1) 言語情報の性質

A 言語情報を解釈するときに脳が参考とする単位は、句構造である。

B 言語情報は句構造の連続である。

 

第3 言語情報認知プロセスの構造

言語情報の入力時における認知プロセスの構造を表2のように解析しました。

 

(表2) 句構造レベルの言語情報認知プロセス

① 「貯蔵」

知覚した言語情報のワーキングメモリへの貯蔵

② 「解釈」

貯蔵した音声を解釈し、概念情報を構成する。解釈のシステムについては、「音韻ループ」および「エピソードバッファ」を参考に。

③ 「保持」

構成された「概念情報」を短期記憶として保持する。

 ④ 次の句の認知

概念情報を保持しながら、次の句の認知に進む。

 

文を構成する句の入力が終わるまで、これらの一連のタスクは繰り返し行われます。

実は言語情報認知の完遂のためには、この後の文レベルの言語情報の認知プロセスが必要です。しかし、言語情報認知における認知的マルチタスクを説明するためには句構造レベルの認知プロセスの紹介までで十分なので割愛します。

 

第4 句の認知と文の認知

1 句の認知ならば、認知的マルチタスクは不必要

貯蔵、解釈、保持といった脳内処理は、感覚的には順番に処理されているとは思えないほどの速さで処理されていますが、これらのタスクは継時的に行われています。

これだと、マルチタスクなんて存在しない、となりますが、それは一つの句の処理について考察した場合です。

 

2 文の認知 = 句の認知の連続

文とは、複数の句で構成されている言語情報です。ゆえに、文を句構造レベルでの認知をするためには、前の概念情報の保持と同時に、次の言語情報の貯蔵および解釈をするというマルチタスクが必要になります。そのタスクは表2の④に該当します。これが言語情報認知における認知的マルチタスクです。

 

例えば、

句A、句B、句C

という順番で構成された文が存在すると仮定し、この文を理解する際の句構造レベルでの認知プロセスの構造は以下の通りです。

 

① 句Aの貯蔵

② 句Aの解釈 → 概念Aの創出

③ 概念Aの保持 & 句Bの貯蔵

④ 概念Aの保持 & 句Bの解釈 → 概念Bの創出

⑤ 概念Aの保持 & 概念Bの保持 & 句Cの貯蔵

⑥ 概念Aの保持 & 概念Bの保持 & 句Cの解釈 → 概念Cの創出

⑦ 概念Aの保持 & 概念Bの保持 & 概念Cの保持

 

赤:言語情報処理A

緑:言語情報処理B

青:言語情報処理C

 

そして最後に保持していた句レベルの概念情報を統語構造に従い構成し、文としての概念を創出する、というのが、文レベルでの認知プロセスの全容です(日本語の場合、統語構造に対する意識は厳格なものではなく、語順による直観的な処理が多いと私は考える)。

 

この色分けした言語情報処理プロセスはそれぞれ異なる次元にあります。

③のメインタスクは句Bの貯蔵ですが、概念Aを保持しながら行われますので、この時点での言語情報処理の個数はです。

⑤のタスクに関しては「概念Aの保持概念Bの保持」をしながら句Cの貯蔵をしますので、この時点での言語情報処理の個数はです。

 

第5 (結論)ワーキングメモリの容量は認知的マルチタスクの可否を決める

言語情報認知の際に、複数の言語情報処理を同時に行わなければならないというのが、おわかりいただけたかと思います。

本来、言語情報認知プロセスは継時的なタスクの連続として解釈されています。しかしそれは単一の言語情報の認知プロセスに限定した場合であり、連続した言語情報の認知プロセスをするとなれば、「保持をしながら処理をする」という認知的マルチタスクを実行する必要があります。

 

言語情報認知の場合、概念情報の最大可能保持数は、「ワーキングメモリの容量」を表すと考えています。すると、ワーキングメモリが大容量であれば、概念情報の最大可能保持数が多くなります。

一方でワーキングメモリが小容量になると、概念情報の保持に困難が生じ、「特異的」な神経症状を発生させます。例えば、ワーキングメモリとの関連が疑われる特異的言語障害がそれに該当すると私は推測します。