「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

考えたことを発信しています。メインテーマは認知科学。頭蓋縫合早期癒合症、および「ワーキングメモリ容量減少症候群」(仮)の成人当事者です。実行機能(ワーキングメモリ)について研究中。

不注意症状だけの状態は障害か?(不注意優勢型ADHD(注意欠陥障害)、および不注意性の考察)

 

第1 記事の目的

今回の記事のテーマは、ADHDの不注意症状の再検討です。

その目的は、ADHDの不注意症状とは異なる原因による不注意症状の存在を主張するというものですが、同じ不注意性という認知症状をもつADHDの不注意症状の本質に迫る必要があると私は考えました。そこで不注意優勢型ADHDという神経発達障害に焦点を当てたのは、不注意症状が他症状と比べ強いと評価されるADHDのタイプだからです。

ADHDに関する以下の事柄について振り返ります。

 

第2 (前置き)ADHDの症状とADHDのタイプ

1 ADHDの症状の特徴

ADHD注意欠陥多動性障害)は、神経伝達物質ドーパミン)の伝達過程上の異常によって引き起こされる障害です。DSM-5ではこれを神経発達障害のひとつとして分類しています。

ADHDの症状は行動障害や認知障害としてあらわれます。その特徴を表す言葉は以下の3種類の言葉が存在します。

・衝動性:実行機能が低下し、衝動の抑制が効かない状態

・多動性:上記の衝動性が行動として表れる頻度がより強い状態

・不注意性:実行機能が低下し、衝動により注意を制御できない状態

それぞれの症状の特徴に言葉が当てられていますが、精神医学による症状の鑑別という便宜上作られた概念といっても過言ではありません。ADHDの全症状の原因は「衝動性」です。

 

2 ADHDの種類

ADHDの当事者の行動として表れる上記の3種類の症状の強弱有無は、千差万別です。そこで、強く表れている症状という尺度によって、ADHDをさらに以下の3タイプに分類できます。

・多動性および衝動性優勢型ADHD:多動性が比較的強いADHD

・不注意優勢型ADHD:多動性を除いた衝動性および不注意性が強いADHD

・混合型ADHD:すべての症状が強いADHD

 

第3 ADHDの不注意性についての考察

1 ADHDの3つの症状の関係

この3つの言葉が示す内容の関係を表した図式は以下の通りです。

 

・「衝動性」≒「多動性」

多動性症状が認められる状態は、先天的な器質として持つ衝動性が行動として表れる頻度が多くなった状態を意味します。

実行機能が低下によるものです。すなわち、当事者の観点で説明すれば、抑制機能(=実行機能)の低下により顕現した衝動性の存在によって、注意制御を低下された結果の「心理状態」を、不注意性と評価します。

 

・「不注意性」=「衝動性」

結局のところ、「抑制機能」と「注意制御機能」は、実行機能の側面を説明するために便宜的に使われている言葉であり、結局のところ深層構造的な意味として示すところが「実行機能」であることには変わりありません。

ゆえに、ADHDの「不注意性」と「衝動性」の関係も上記と同じく、注意制御機能の低下の結果現れる不注意性と、抑制機能の低下の結果現れる衝動性の間には、以下のような因果関係が成立します。

「衝動的ならば、不注意的である」

ADHDの場合のみならずこの因果関係は絶対的真であるといえます。

 

2  ADHDの絶対条件である「衝動性」

衝動性がないADHDというのは存在しません。具体的には、「衝動性→×、多動性→〇」というのは普通に考えてあり得ませんし、「衝動性→×、不注意性→〇」というのも、ADHDの定義上あり得ません。

 

第4 不注意優勢型ADHDについて

1 不注意優勢型ADHDの「不注意症状」は衝動性由来

不注意優勢型ADHDで強く表れている不注意症状の原因とは、ほかのADHD類型と同じく、実行機能が低下によるものです。すなわち、当事者の観点で説明すれば、抑制機能(=実行機能)の低下により顕現した衝動性の存在によって、注意制御を低下された結果の「心理状態」を、不注意性と評価します。

つまり、不注意優勢型ADHDとはいっても、不注意性だけでなく衝動性も強く存在しているということになります。多動性については、あくまで目立たない状態、というように解釈したほうが良いみたいです。

 

2 「注意欠陥障害(ADD)」=「不注意優勢型ADHD

「ADD(注意欠陥障害)」という名称についての説明記事を引用します。

ADDという診断名が登場したのは『DSM-Ⅲ』が出版された1980年です。それまでは、子どもの多動性のみが主に取り上げられていましたが、この改訂では「注意の持続と衝動性の制御の欠如」にも焦点が当てられました。その結果、ADD(注意欠陥障害)という障害概念が導入されました。

その後、1987年に改訂された『DSM-Ⅲ-R』では、再び多動性の影響力が重視され「ADHD(注意欠陥障害,多動を伴う/多動を伴わない)」という分類名になりました。この改訂から不注意、多動、衝動性の3つが診断基準になったのです。*1

 「注意欠陥症状」とは、多動症状が目立たないために「多動」という文字を抜き取って出来上がった名前と解釈するのが正しいわけですね。そして注意欠陥障害は不注意優勢型ADHDの旧称であるということ。すなわち注意欠陥障害という名前が示すものは、不注意優勢型ADHDと同一です。

 

第4 結論

これまでの内容を箇条書きにまとめると、以下のようになります。

・衝動性は、ADHDの絶対条件である。

ADHDの不注意性は、衝動性の結果である。

・不注意優勢型ADHDと注意欠陥障害(ADD)は同一。

・不注意優勢型ADHDとは、多動性が比較的目立たない一方で、衝動性および不注意性が認められるADHDのタイプである。

 

第5 (問題提起)不注意症状だけの「発達障害」はありますか?

1 不注意症状だけの場合はどうなるのか?

これまでの話の中に登場していた不注意性とはADHDの症状の一つでした。しかし、私はADHDとは別の不注意症状、すなわち衝動性を原因としない不注意症状の存在を提唱しています。これは発達障害なのでしょうか?

結論を言えば、答えはNOです。「衝動性→×、不注意性→〇」という状態はADHDの定義から外れるので、ADHDではなくなります。私の実体験ですが、ほかに該当する発達障害は存在しないので、こうなると基本的に神経症という扱いです。あるいは社会生活あるいは日常生活に悪影響を与えるほどのものである場合、「特定不能の広汎性発達障害」になります。

 

2 「注意欠陥症状」という名辞が示すもの

この衝動性が原因ではない不注意症状については、わかりにくいですが当ブログでは「注意欠陥症状」という名辞を与えています。

注意欠陥症状が示すものは、ADHDとは異なりますが、認知プロセスに発生した障害であることは間違いありません。私は中央実行系モデルのひとつであるワーキングメモリと関係させて話を進める予定です。

この注意欠陥症状に関する詳細をテーマとした記事は、書きあがり次第、以下のスペースにアップします。