「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

認知心理学の研究をする頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者が考えたことを書いていきます。扱っている症状は原因不明のものばかり(泣)。当ブログの記事における内容及び理論は無断転載及び引用は禁止です。更新情報はツイッターでも配信しています。

<「不注意症状」について考察してみた①> ADHDの症状の原因

当ブログの最終目標地点のひとつに、ADHDとは異なる障害として不注意症状を持つ精神障害概念を新たに提唱することが含まれています。

心理学による一般解釈によると、不注意症状とは「実行機能の無効化」によって発生する行動障害であるというように説明できます。このことから「不注意症状といえばADHDである」と判断されるでしょう。

しかし、私はこの命題について疑義を抱いています。なぜなら、私自身がADHDではない、すなわち衝動性を持たないにもかかわらず、不注意症状が顕著であるためです。ちなみに私の不注意症状は心因的なものではなく、内因性のものであることは間違いありません。

そこで、ここではADHDの不注意症状の病理について振り返ってみましょう。

 

  

第1 (前置き)ADHDの症状とADHDのタイプ

1 ADHDの症状の特徴

ADHD注意欠陥多動性障害)は、神経伝達物質ドーパミン)の伝達過程上の異常によって引き起こされる障害です。DSM-5ではこれを神経発達障害のひとつとして分類しています。

ADHDの症状は行動障害や認知障害としてあらわれます。その特徴を表す言葉は以下の3種類の言葉が存在します。

・衝動性:実行機能が低下し、衝動の抑制が効かない状態

・多動性:上記の衝動性が行動として表れる頻度がより強い状態

・不注意性:実行機能が低下し、衝動により注意を制御できない状態

それぞれの症状の特徴に言葉が当てられていますが、精神医学による症状の鑑別の便宜を図るために作られた概念といっても過言ではありません。

厳密に言えば、ADHDの全症状の原因は実行機能の低下による「衝動性」です。

 

2 ADHDの種類

ADHDの当事者の行動として表れる上記の3種類の症状の強弱有無は、千差万別です。そこで、強く表れている症状という尺度によって、ADHDをさらに以下の3タイプに分類できます。

・多動性および衝動性優勢型ADHD:多動性が比較的強いADHD

・不注意優勢型ADHD:多動性を除いた衝動性および不注意性が強いADHD

・混合型ADHD:すべての症状が強いADHD

 

第2 ADHDの不注意性についての考察

1 ADHDの3つの症状の関係

この3つの言葉が示す内容の関係を表した図式は以下の通りです。

  •  「衝動性」≒「多動性」

多動性症状が認められる状態は、先天的な器質として持つ衝動性が行動として表れる頻度が多くなった状態を意味します。

実行機能が低下によるものです。すなわち、当事者の観点で説明すれば、抑制機能(=実行機能)の低下により顕現した衝動性の存在によって、注意制御を低下された結果の「心理状態」を、不注意性と評価します。

 

  • 「不注意性」=「衝動性」(ただしADHDに限る)

結局のところ、「抑制機能」と「注意制御機能」は、実行機能の側面を説明するために便宜的に使われている言葉であり、結局のところ深層構造的な意味として示すところが「実行機能」であることには変わりありません。

ゆえに、ADHDの「不注意性」と「衝動性」の関係も上記と同じく、注意制御機能の低下の結果現れる不注意性と、抑制機能の低下の結果現れる衝動性の間には、以下のような因果関係が成立します。

「衝動的ならば、不注意的である」

 

2  ADHDの絶対条件である「衝動性」

衝動性がないADHDは存在しません。具体的には、「衝動性→×、多動性→〇」というのは普通に考えてあり得ませんし、「衝動性→×、不注意性→〇」というのも、ADHDの定義上あり得ません。

 

第3 不注意優勢型ADHDについて

1 不注意優勢型ADHDの「不注意症状」は衝動性由来

不注意優勢型ADHDで強く表れている不注意症状の原因とは、ほかのADHD類型と同じく、実行機能が低下したことです。すなわち、当事者の観点で説明すれば、抑制機能(=実行機能)の低下により顕現した衝動性の存在によって、注意制御を低下された結果の「心理状態」を、不注意性と評価します。

つまり、不注意優勢型ADHDとはいっても、不注意性だけでなく衝動性も強く存在しているということになります。多動性については、あくまで目立たない状態、というように解釈したほうが良いみたいです。

 

2 「注意欠陥障害(ADD)」=「不注意優勢型ADHD

「ADD(注意欠陥障害)」という名称についての説明記事を引用します。

ADDという診断名が登場したのは『DSM-Ⅲ』が出版された1980年です。それまでは、子どもの多動性のみが主に取り上げられていましたが、この改訂では「注意の持続と衝動性の制御の欠如」にも焦点が当てられました。その結果、ADD(注意欠陥障害)という障害概念が導入されました。

その後、1987年に改訂された『DSM-Ⅲ-R』では、再び多動性の影響力が重視され「ADHD(注意欠陥障害,多動を伴う/多動を伴わない)」という分類名になりました。この改訂から不注意、多動、衝動性の3つが診断基準になったのです。*1

 「注意欠陥障害」とは、多動症状が目立たないことを由来として「多動」という文字を抜き取って出来上がった名称と解釈するのが正しいわけですね。そして注意欠陥障害は不注意優勢型ADHDの旧称であるということ。すなわち注意欠陥障害は、不注意優勢型ADHDと同一です。

 

第4 不注意症状だけの精神障害は、「認知」されていない

ここで疑問点があります。

衝動性由来ではない不注意症状を主訴とする精神症状は、定義されているのでしょうか?

答えは、NOです。

厳密には、現在の精神科において「特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)」神経症性障害」みたいな診断名がつきます。これらの精神障害概念は、病理学的に未解明の精神症状の総称であるため、実態を伴わない恣意的な概念です。

「正体不明」精神障害として、診断後はさじを投げられたも同然の扱いを受けることになります。残念ながら。

 

第5 結論

これまでの内容を箇条書きにまとめると、以下のようになります。

・衝動性は、ADHDの絶対条件である。

ADHDの不注意性は、衝動性の結果である。

・「不注意優勢型ADHD」と「注意欠陥障害(ADD)」という表現は同じものを指す。

・不注意優勢型ADHDとは、多動性が比較的目立たないだけで、衝動性および不注意性が認められるADHDのタイプである。

・不注意性だけの精神障害概念は存在しない。

 

第6 (問題提起)「ワーキングメモリ容量減少症候群」という新たな精神障害の概念の提唱

同じ不注意障害でも、ADHDとは異なる精神障害として、私が提唱しているのが「ワーキングメモリ容量減少症候群」というものです。

詳細は下のリンク先の記事のなかで書きました。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp