「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

考えたことを発信しています。メインテーマは認知科学。頭蓋縫合早期癒合症、および「ワーキングメモリ容量減少症候群」(仮)の成人当事者です。実行機能(ワーキングメモリ)について研究中。

マルチタスクの意味と分類、およびワーキングメモリとの関係についての持論  

 

 

第1 マルチタスクの意味

突然ですが、ここで問題です。

マルチタスクの意味を説明した文として、適切なのはどちらでしょうか。

A 複数の情報処理を、同時に行うこと。

B 複数の情報を、同時に処理すること。

 

両方とも同じ言葉を使っていますが、結構異なります。

Aのほうは、「異なる情報処理を同時に行うこと」を意味します。これは情報の内容だけでなく、処理するという行為の内容も異なる状態ですね。認知科学ではAのほう、すなわち異なる複数の情報処理が同時に行われる仕組みのほうに興味が向かっていることは確実です。

一方のBのほうは、「異なる情報を同時に、そして同様に処理すること」を意味します。

小難しい話になりますが、例えば「私は同時にパンツと靴下を洗った」というように、複数の名詞を目的語とする文として表現することができますが、あくまでもそれは文の構造です。実際にやるとなると、靴下を使ってパンツを洗うみたいな状況で、少し趣向がかわってきます。つまり複数の情報を同時に処理することはできないわけで、順次的なものになっているはずです。

よって、Bが示すような行動の実行は不可能であるように思います。

 

正解はAです。

今回はマルチタスクについて考えたことを書いていきます。

 

第2 マルチタスクの例

「受話器を肩と頭の間に挟み、相槌を打ちながら、聞き取った相手の話をメモに取る」

上に書いた文は、現代における社会人が行うマルチタスクの代表例として書いたものです。

このマルチタスクはいろいろな動作の塊です。これを一般的に意識している行為区分(後述する行為的マルチタスクで構造を分析すると以下のようになります。

・受話器を頭と肩の間に挟む(姿勢の維持)

・相手の話を聞く

・聞き取った話の内容をメモに取る(ペンを持ち、文字を書くという行為も存在する)

・相槌を打つ

 

第3 マルチタスクの種類 (自作概念)

マルチタスク」ということばは、認知心理学における学術的用語としては見かけません。学術的には、脳に備わっている認知実行機能(遂行機能)がもたらした産物としての結果の一つとしてマルチタスクの存在を理解しているといった具合でしょうか。

マルチタスクは、あまり認知心理学で顧みられていない概念です。そこで今回、私はあえてマルチタスクについて考え、これを分類してみました。ここからは私が考えた2種類のマルチタスクについて説明します。

 

1 行為的マルチタスク

まず1つ目の「行為的マルチタスク」とは、マルチタスクのうち、同時に行われている対象の単位が情報処理であるものと定義します。

先の例のようなマルチタスク、すなわち

ラジオを聴きながら新聞を読む

というマルチタスクは行為的マルチタスクです。

 

2 認知的マルチタスク

2つ目のマルチタスクとは、脳内の情報認知プロセスに存在するマルチタスクで、ゆえに「認知マルチタスク」と名付けました。

いわば1つの認知プロセスを達成するために遂行されるべきマルチタスクです。

たとえば言語情報認知に用いて話をしますと、その認知プロセスにはワーキングメモリ内への言語情報の「貯蔵」「保持」という機能が同時に働いています。

例えば、相手の話を理解する場面を例にしますと、言語情報を解釈するために入力された言語情報を「貯蔵」します。しかし、言語情報は次から次へと入力され、貯蔵されるため、貯蔵した言語情報を「保持」する必要があります。

先に紹介した行為的マルチタスクとは異なり、認知主体であったとしても基本的にその存在を意識するのは不可能です。なぜなら、この「貯蔵」「保持」の機能は脳の認知プロセスのなかに存在するものだからです。

 認知的マルチタスクの例は以下の通りです。

・入力された言語情報の貯蔵と保持

・出力した言語情報の貯蔵と保持

私が知る限りでは、この貯蔵と保持しか思いつきませんでした。

 

認知的マルチタスクの詳しい説明は、以下の記事で紹介しました。
atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 

 

第4 マルチタスクとワーキングメモリの関係

マルチタスクというのは脳に備わっている実行機能(遂行機能)による産物であることは、前に説明したとおりです。

その実行機能に関する概念である、Alan Baddeleyが提唱した中央実行系(ワーキングメモリ)と、マルチタスクとの間の関係について以下のように仮説を立ててみました。

・行為的マルチタスクの成績は、ワーキングメモリの注意制御機能の有無に依存する

・認知的マルチタスクの成績は、「注意の焦点の大きさ」、すなわち「ワーキングメモリの容量」に依存する