封印されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

主に認知系統の学問を題材に、論文の下書きのような感覚で情報発信しています。読みにくい文章ですみません。きっかけは特異的言語障害(SLI)・聴覚情報処理障害(APD)・注意欠陥症状(ADD)。頭蓋縫合早期癒合症の成人当事者です。中央実行系(ワーキングメモリ)について研究中。

早期癒合症の手術適用条件に対する問題提起

 

 

第1 (序論)軽度三角頭蓋の症例の統計から導き出せる一つの仮説

脳神経外科学が定義付けた早期癒合症の手術適用条件に関する内容は、以下の記事の中で紹介しました。

今回は、早期癒合症の手術適用条件についての考え方について言及します。

 

下地先生による軽度三角頭蓋の統計のなかに、実は軽度三角頭蓋の「発達障害的症状」のヒントが隠されています。頭蓋内圧亢進症状の件数がコトバの遅れの件数よりも多いという情報から、以下のような仮説を導き出せます。

 

「軽度三角頭蓋(早期癒合症)による精神症状は、頭蓋内圧亢進症状よりも先に発生する」

 

精神症状の解決を目的とするのであれば、頭蓋内圧亢進症状の有無という手術適用条件はナンセンスです。

今回は、これを実証します。

 

手術適用条件に対する批判を以下のように箇条書きにおこしてみました。

・大脳皮質が圧迫された後に頭蓋内圧亢進症状が起きるので、頭蓋内圧亢進症状が認められない一方で精神症状があるというケースは十分に有り得る。

・ゆえに、軽度三角頭蓋の治療をするうえで、精神症状の改善を目標とする場合、早期癒合症の手術適用条件である「頭蓋内圧亢進症状」の有無は無関係である。

・軽度三角頭蓋の手術に年齢制限を設ける必要はない。成人でも適用するべきである。

 

上記のことがらを主張するためには、現段階では材料が足りません。

そのため、まずは早期癒合症による頭蓋内圧亢進症状の特異性を説明する必要があります。

 

第2 早期癒合症の頭蓋内圧亢進の特異性とは

1 頭蓋内圧亢進症状の原因の一覧

その他の原因による頭蓋内圧亢進症状と比較した際に浮き彫りとなる、早期癒合症による頭蓋内圧亢進症状の特異性を紹介するまえに、まずは一般的な頭蓋内圧亢進症状について焦点を当てます。

一般的な頭蓋内圧亢進症状には、脳組織内からの体積膨張という共通点があります。例えば脳内出血や脳腫瘍は脳組織内で発生する要因であるので、症状が進行すると脳ヘルニアに進行します。また水頭症とは脳内を通る髄液の通る構造の欠陥が原因で、髄液が漏れることで結果的に頭蓋骨内の環境が悪化するというものです。

それと比較すると早期癒合症のそれは、脳組織内の以上が原因ではなく、頭蓋骨の異常によって引き起こされるものです。

次の項では、頭蓋内圧亢進症状を分類します。

 

2 頭蓋内圧亢進症状の2類型

頭蓋内圧亢進症状を定義づける表現があるとすると、

脳組織の体積と、頭蓋骨内の容積との均衡が崩壊した状態

といえます。

つまり脳組織と頭蓋骨という2つの要素によって均衡が成り立っているのですから、その均衡の崩壊は2通り考えられます。

 

①体積膨張による頭蓋内圧亢進症状

まず一つ目の類型とは、脳組織の体積膨張による頭蓋内圧亢進です。

 

脳組織の体積が膨張するのに対し、その変化に伴い頭蓋骨が割れるわけではありませんので、その容積が一定のままです。故に2つの要素の均衡が崩壊し、頭蓋内圧亢進症状が発生します。

脳出血や脳腫瘍、水頭症による頭蓋内圧亢進症状が、これに該当します。

まず一つ目の特徴に、その原因は内部的であるといえます。なぜなら、これらの病気は脳組織の構造変化を伴う体積増加だからです。

次に2つ目の特徴として、急性症状を伴うことが挙げられます。上記の原因による均衡崩壊状態は絶えず進行していくゆえに症状は急激に悪化していく一途であり、その変化に脳が耐えられるとは考えられないからです。その結果が頭蓋内圧亢進症状の急性症状として現れると私は考えます。

 

②容積収縮による頭蓋内圧亢進症状

2つ目の類型とは、頭蓋骨の収縮による頭蓋内圧亢進です。

頭蓋骨の容積が収縮するのに対し、脳が縮まるのにも限界があり、その体積は一定のままと考えてよいです。故に2つの要素の均衡が崩壊し、頭蓋内圧亢進症状が発生します。

早期癒合性による頭蓋内圧亢進症状が、これに該当します。

まず一つ目の特徴に、その原因は外部的であるといえます。早期癒合症は頭蓋骨の容積の収縮によるものなので、先に上げた「体積膨張による頭蓋内圧亢進症状」のように脳組織に原因があるのではなく、その外部である頭蓋骨に原因があるという意味です。

次に2つ目の特徴として、症状の多くは慢性症状のみであると推測できることが挙げられます。容積収縮による頭蓋内圧亢進は均衡崩壊状態の進行は頭蓋縫合の早期癒合の完了、あるいは脳組織の発達とともに終了すると考えられます。そして、症状の進行も緩やかであるため、頭蓋内圧亢進症状は比較的穏やか(あくまでも脳内出血と比較してですが)だと考えられます。

 

3 「容積収縮による頭蓋内圧亢進症状」の症状進行の順番

早期癒合症のような「容積収縮による頭蓋内圧亢進症状」とは、頭蓋骨という外側からの圧迫によって引き起こされるものであるため、以降の順番で頭蓋内圧亢進するという仮説を私は立てます。

 

・まず大脳皮質が圧迫される。この時点で脳脊髄液の圧力は同じ。

・圧迫が強くなるほどの大脳皮質の縮小比率が強まる。

・そして縮小比率が最低限に達するほどに、頭蓋骨内の容積が小さくなったとき、脳脊髄液の圧力が高まり始める。

・頭蓋内圧亢進症状が強くなる。

 

第3 早期癒合症の頭蓋内圧亢進と精神症状の前後

つまり、頭蓋内圧(脳脊髄液圧)が上昇する前の段階に、頭蓋骨により大脳皮質が圧迫される段階があるということです。早期癒合症による頭蓋内圧亢進において、大脳皮質は外側からの衝撃を守る、いわば「ヘルメットの緩衝材」としての役割を担っているのです。早期癒合症とは、いわば硬膜より内側の部分が、早期癒合した頭蓋骨という衝撃を受けている状態であるといえます。

 

この仮説の信憑性をさらに高める事実として、大脳皮質の柔らかさが挙げられます。大脳皮質は豆腐レベルの柔らかさであることを踏まえると、脳脊髄液の圧力が高まる前に大脳皮質の機能に大きな問題が現れることは、有り得る話です。

 

故に、軽度三角頭蓋である場合、頭蓋内圧が高くなる前に精神症状が現れると考えるべきです。

 

第4 (結論)早期癒合症の手術適用条件に対する批判

1.脳神経外科学に対する批判

脳神経外科学が定義付けた早期癒合症の手術適用条件に振り返りますと、早期癒合症の手術について、早期癒合症ではなく、頭蓋内圧亢進症状の解決を目的としているであることはすでに述べたとおりです。

問題なのは、「容積収縮による頭蓋内圧亢進」の仕組みを知らない脳神経外科学の従事者が、早期癒合症による頭蓋内圧亢進症状に対して「体積膨張による頭蓋内圧亢進症状」の病理を当てはめてしまっていることです。つまり、早期癒合症による頭蓋内圧亢進症状を、脳内出血による頭蓋内圧亢進症状と同じ基準で考えてしまっているという間違いを犯してしまっているのです。だから、早期癒合症の手術適用条件として、頭蓋内圧亢進症状の有無が必要であるという見方をしているのです。

「容積収縮による頭蓋内圧亢進」は、実際に髄液圧が高くなる段階に達するよりも前に大脳皮質が圧迫されてしまうと仮定すると、精神症状の解決を目的とした早期癒合症の手術をする際に、頭蓋内圧亢進症状の有無を問うのはナンセンスであると思います。

 

軽度三角頭蓋によって引き起こされる「発達障害的症状」の全容が明らかになれば、こうした脳神経外科学が姿勢を変わるのでしょうか?

 

2.下地先生の見解に対する批判

実は下地先生の軽度三角頭蓋の手術の適用条件についても、私は不満を持っています。

それは、手術適用条件となっている年齢制限の存在です。年齢が上がるにつれて軽度三角頭蓋の手術の効果が薄まるとの見解を示しています。

しかし、早期癒合症がほったらかしになれば成人になっても、早期癒合症によって引き起こされた中央実行系の機能障害に悩むことになります。成人になると脳の神経発達が終了するという「観念」に基づく見解でしょうが、軽度三角頭蓋によって圧迫されている大脳皮質がもつ中央実行系(ワーキングメモリ)についてはこの限りではないと私は考えています。

精神症状の解決を主な目的とする軽度三角頭蓋の手術は、もっと評価されるべきだと思います。