「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者、および認知心理学の研究者の視点で考えたことを発信しています。メインテーマは「注意」の認知科学的分析。なお当ブログの記事における内容及び理論は無断使用禁止です。

<頭蓋骨縫合早期癒合症の手術適用条件に対する問題提起①> 早期癒合症の治療に対する脳神経外科学による見解(手術必要性の阻却事由の存在について)

現在、脳神経外科学において早期癒合症の手術は一般的に行われています。しかし、一方でその手術必要性の阻却事由となるような基準を設けていると私は推測しています。

例えば、軽度三角頭蓋の手術に対する反対の声が存在しているのは、手術を実施するための絶対条件が備わっていないことが理由です。

例えばの話ですが、早期癒合症の成人患者になんらかの精神障害が発生しているとしましょう。その患者が精神障害の改善を目的として早期癒合症の手術を脳神経外科に依頼した場合、脳神経外科は手術をしません。

そこで、今回は手術の必要性の阻却事由の内容、およびそれが存在する背景について私が考えたことをここに書いていきます。

 

   

第1 早期癒合症の治療過程について

1 早期癒合症の手術の危険性

早期癒合症の手術は、大きく分けて2段階あります。

まずは頭蓋内圧を測定するための「手術」です。

簡単にその内容を説明すると、頭蓋骨に開けた穴に「メモリ」を刺し、脳圧を測定するというものです。ご想像の通り、全身麻酔をかけたうえで行われます。通常、脳圧は150mmH2O~180mmH2Oに保たれています。このとき、頭蓋内圧が亢進していると医学的に認めらえる基準値は200mmH2Oです。

この段階で頭蓋内圧が亢進していると判断された場合には、頭蓋骨の形成手術が行われます。ご存知の通り、頭皮をはがしたうえで頭蓋骨を分解し、組み立て直すというプロセスを踏みます。こちらも当然のごとく全身麻酔をかけたうえで行われる手術です。

手術による医療過誤はないようですが、術中の危険性だけではなく、頭蓋骨より内側への細菌の侵襲といった術後の危険性もあることから、治療する側は安全に手術を実行できる環境および知識を準備することが求められます。

早期癒合症は小児期の病気であることから、その診断は「小児科的」ですが、手術は脳神経外科および形成外科の管轄となります。

 

2 鑑別の基準(早期癒合症を受けるための絶対条件)

実は、頭蓋内圧の測定をする前に、脳神経外科は患者が早期癒合症によって頭蓋内圧亢進症状の存否について確認します。それは、以下に列挙する所見の存否によって判断されます。

  • 眼球内のうっ血乳頭
  • 頭痛
  • 嘔吐

これらの所見は頭蓋内圧が亢進していると診断できる決定打的症状(頭蓋内圧亢進の「三徴」ともよばれる)であり、且つ早期癒合症の治療の「扉を開ける」ための「カギ」といえます。

 

第2 手術必要性の阻却事由について

1 脳神経外科学の特徴と阻却事由の関係

脳神経外科学が扱う病気は生命にかかわるものがほとんどの割合を占めています(例えば脳梗塞や脳腫瘍など)。このことが原因だとすると変な話ですが、おそらく脳神経外科重篤でない病気、すなわち生命にかかわらない程度の病気の治療に対して、消極的な傾向をもちます

このことは早期癒合症の例でもいえるのです。実際には脳神経外科学は早期癒合症の手術を行っています。しかし、一方で手術必要性の阻却事由となるような基準を設けていると私は推測しています。

 

第3 阻却事由の内容

阻却事由となる基準について、これまで私がかかった病院の医師の主張をもとにして、早期癒合症の手術必要性が阻却される事由を割り出しました。

それは、頭蓋内圧亢進の三徴がすべて見られない早期癒合症は、手術対象外となります。

 

その背景となる解釈について以下の通りです。

  • 頭蓋内圧亢進症状を引き起こす早期癒合症重篤なものであるため、手術適用となる。
  • 一方で、「頭蓋内圧亢進の三徴」が認められない早期癒合症は、頭蓋内圧亢進症状を引き起こしていないといえるため、手術の必要性が阻却される。

頭蓋内圧の亢進とは、脳ヘルニアによって引き起こされる症状であることから、重篤な症状として認知されています。そしてその頭蓋内圧亢進症状を早期癒合症が引き起こしうることは、病理学的にも実証されていることです。

ゆえに、早期癒合症は重篤な病気と定義づけられ、手術する必要性がある疾患として認知されています(もちろん手術する理由はほかにもあります、特に外見的問題がそれに該当する)。すなわち、頭蓋内圧亢進症状が存在することによって初めて、早期癒合症に重篤性(手術必要性)が帯びるのです。

よって、頭蓋骨が早期癒合症の外見的特徴を持っていたとしても、頭蓋内圧亢進症状が認められなければ手術する必要がないという結論にいたります。脳神経外科学は早期癒合症の頭蓋骨に対する手術について、あくまで頭蓋内圧亢進症状を解消するという目的のもとで行われるものと解釈しています。

 

第4 さらなる拍車:早期癒合症特有の精神症状の病理が未解明である

医学的見解によりますと、通常の早期癒合症によって引き起こされると考えられる精神症状は、「精神発達遅滞」とされています。また、国内の病院による早期癒合症の紹介文の中で、発達障害といった精神的症状が現れるという文言が明記されています。

しかし、早期癒合症が精神症状を引き起こす仕組み、およびいかなる精神障害概念であるかということは医学的に解明されていません。

また、「大人の早期癒合症」、すなわち比較的軽度な頭蓋変形を伴う疾患によって引き起こされる精神障害は、現在定義づけられている精神障害概念では説明できないものであり、精神障害が発生するという現象そのものを精神医学、神経心理学的に論証するという試みが行われていません。

 

第5 軽度三角頭蓋の手術は「美容整形手術」として行われている

実は現在、「大人の早期癒合症」のひとつである軽度三角頭蓋の手術は、「美容整形手術」という名目で行われています。もちろん実際に手術を担当しているのは脳神経外科であって、美容整形外科ではありません。

軽度三角頭蓋の手術をおこなうためには、知識や環境が整備されている必要があります。ゆえに現在の美容整形外科にとってもこの手術を行うことは想定外の領域ですので不可能でしょう。

「美容整形手術」として行われている背景には、これを手術対象とすることが医学的に「認可」(行政的なものではない)されていないことにあります。このことに関する詳細は以下の記事の中で紹介しています。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp