「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症と容量性注意障害に関する当事者研究ブログです。主にワーキングメモリ(注意容量と音韻ループの関係)について研究しています。更新情報はツイッターで配信しています。(他キーワード:特異的言語発達障害、軽度三角頭蓋)

早期癒合症による頭蓋内圧亢進のメカニズム / 軽度三角頭蓋が引き起こす精神症状の発生原因を解明する

頭蓋内圧亢進のメカニズムという観点から、早期癒合症の精神症状の発生原因を考察します。

現在、頭蓋骨縫合早期癒合症(以下、早期癒合症と記述)の手術を受けるための基準として、「頭蓋内圧亢進」の所見が存在していることが必要である、と医学が定義づけています。

これに対し、軽度三角頭蓋の手術を肯定している下地一彰先生は、頭蓋内圧亢進症状の現れ方について、慢性的な頭蓋内圧亢進と急性的な頭蓋内圧亢進とでは異なるとする見解を提示しています。

手術の際に、「窮屈な部屋を広げることで症状改善する可能性がある」「あくまで頭蓋内圧亢進の治療」と説明していると述べると同時に、脳圧の亢進は、「急激に起こると頭痛や嘔吐をきたすが、慢性的に起こると発達障害になる」*1

 

早期癒合症による頭蓋内圧亢進について、脳ヘルニアによる頭蓋内圧亢進とは異なる病理(メカニズム)を持つと私は考えています。

そして、早期癒合症では、「基準値以上の頭蓋内圧」が亢進していない場合においても、大脳皮質を圧迫する可能性は十分存在するという内容の仮説を立てるに至りました。

 

 

第1 頭蓋骨縫合早期癒合症の治療方針を決定づける「頭蓋内圧亢進」

1 治療方針アルゴリズムにおける「頭蓋内圧亢進」の役割

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P. 160より引用 

脳神経外科では、実際に頭蓋内圧を測定する前に、頭蓋内圧亢進症状の存否を確認します。具体的には、頭蓋内圧亢進の「三徴」に含まれる以下の身体症状があることを確認したうえで、手術に踏み切ります。

  • 眼球内のうっ血乳頭
  • 頭痛
  • 悪心のない嘔吐

逆に、頭蓋内圧亢進が見られなかった場合、早期癒合症の外見的悪影響が認められたとしても、手術は行わず、経過観察になります。

すなわち、頭蓋内圧亢進の有無を調べる検査は、手術の是非を決定するための「鍵」としての役割を担っています。

 

2 脳神経外科学の「性格」:生命維持の観点で判断する

脳神経外科学は、扱う病気の性質上、「生命維持の観点」で手術必要性を判断しています。

脳神経外科学の一般認識のなかでは、頭蓋内圧亢進症状を引き起こす早期癒合症を生命維持の観点からみても重篤な病気であると判断しているため、手術をしなければならないということになります。

一方で、頭蓋内圧亢進症状を引き起こしていない早期癒合症に対する、手術必要性の阻却は、生命維持の観点では問題ないと判断した結果であるといえます。

 

第2 「頭蓋内圧」の定義

頭蓋内圧亢進の有無を調べる手段は、症状の有無の確認だけでなく、実際に頭蓋内圧を測定することも可能です。厳密な基準でいえば、頭蓋内圧が亢進していると医学的に認められる基準値は200mmH2Oです(通常の脳圧は150mmH2O~180mmH2Oの範囲内)。

頭蓋内圧は、「髄液圧」ともいわれます。脳内のせき髄液を測定する際、測定に使用する「メモリ」を脳の中心部に刺すことになります。

ゆえに、頭蓋内圧が高い状態とは、脳の中心部の圧力が高まっている状態を意味し、同時に、脳全体の圧力が高まっているともいえます。このとき、中心部に限らず大脳皮質への圧迫も存在しています。

 

第3 頭蓋内圧亢進による精神症状とは?

当ブログでは早期癒合症が引き起こす3種類の悪影響を紹介しています。このうち身体症状と精神症状の原因が早期癒合症由来の頭蓋内圧亢進であることは、病理学的に認められています。

早期癒合症や水頭症を原因とする頭蓋内圧亢進が発生している状態では、精神発達遅滞がみられるケースが見られます。

頭蓋内圧亢進により、辺縁系の機能低下あるいは神経発達に悪影響を及んだ結果が、精神発達遅滞の出現であるという解釈が医学的に認められていると推測されます。 

脳卒中でいえば「前頭葉徴候」という意識障害が精神症状に該当するでしょう。

  

第4 頭蓋内圧亢進の2類型(自作概念)

頭蓋内圧亢進という現象を別の言葉を用いて表現すると、

脳組織の体積と、頭蓋骨内の容積との間に保っていた均衡が崩壊した状態

といえます。

つまり、「脳組織」と「頭蓋骨」という2つの要素によって均衡が成り立っており、その均衡の「崩壊」は実際に2通り存在するのです。

 

1 「体積膨張による頭蓋内圧亢進」

まず一つ目の類型とは、脳組織の体積膨張による頭蓋内圧亢進です。

脳ヘルニアにより脳組織の体積が膨張するのに対し、その変化に伴い頭蓋骨が広がることはなく、その容積が一定のままであるため、脳組織の体積と頭蓋骨の容積との間に保っていた均衡が崩壊し、頭蓋内圧亢進症状が発生します。

このタイプの頭蓋内圧亢進を引き起こす病因となるものは、以下の通りです。

そして、この頭蓋内圧亢進は急性的であるため、身体症状の急性的な出現、および意識障害(精神症状ではない)が発生します。 

 

2 「容積収縮による頭蓋内圧亢進」

2つ目の類型とは、頭蓋骨の容積収縮による頭蓋内圧亢進です。

早期癒合症による頭蓋内圧の亢進が、これに該当します。

この頭蓋内圧亢進は急性的ではなく、慢性的、あるいは徐々に進行するものであるため、身体症状の慢性的な出現、および精神症状が発生します。

  

第5 早期癒合症と頭蓋内圧亢進

1 「容積収縮による頭蓋内圧亢進」の症状進行の順序

早期癒合症によって引き起こされる「容積収縮による頭蓋内圧亢進」は、原因の所在が外部的であるため、一般の頭蓋内圧亢進とは異なる経過を踏むという仮説を私は立てました。その内容は以下の通りです。

  1. 頭蓋骨の狭小化による大脳皮質への圧迫
  2. 大脳皮質への圧迫の許容限度を超えたとき、脳脊髄液圧の上昇が開始
  3. 頭蓋内圧亢進症状に該当する身体的症状の出現

 この仮説の信憑性をさらに高める事実として、大脳皮質が柔らかいことが挙げられます。大脳皮質の柔らかさは「豆腐レベル」であるといわれます。ゆえに、脳脊髄液の圧力が高まる前に大脳皮質の機能に大きな問題が現れることは、有り得ることではないでしょうか。

 

2 髄液圧の上昇と「早期癒合症特有の精神症状」

そして、これに、早期癒合症による頭蓋変形の程度と、早期癒合症によって引き起こされる諸症状との相関関係に関する仮説を当てはめると以下のようになります。

軽度早期癒合症:症状なし ~ 大脳皮質への圧迫

通常の早期癒合症:髄液圧(頭蓋内圧)の上昇

早期癒合症による頭蓋内圧亢進は、脳の外側に位置する頭蓋骨が脳を圧迫しているので、外側から悪影響が出ると推定されます。すなわち本格的に頭蓋内圧が亢進する前段階において、頭蓋骨により大脳皮質が圧迫される段階があると私は考えています。

ゆえに、軽度三角頭蓋である場合、頭蓋内圧が高くなる前に大脳皮質が圧迫されることにより、精神症状が現れると考えるべきです。その精神症状が「早期癒合症特有の精神症状」です。 

 

3 仮説:早期癒合症の程度による精神症状の現れ方

早期癒合症による頭蓋変形の程度と、早期癒合症によって引き起こされる諸症状との相関関係を具体的に示すと、以下のようになります。

  1.   症状なし:軽度三角頭蓋でも症状が全く見られないケースが存在するというケースが存在する可能性は否定できません。
  2.  「早期癒合症特有の精神症状」の発現早期癒合症の頭蓋骨による大脳皮質への圧迫が開始される。
  3.  「頭蓋内圧亢進症状の三徴」精神運動発達遅滞(特有の精神症状の悪化)の発現辺縁系への悪影響

 

参考文献

日本児童青年精神医学会 『児童青年精神医学とその近接領域』 第57巻 第1号、2016年

*1:日本児童青年精神医学会 『児童青年精神医学とその近接領域』 第57巻 第1号、2016年 P. 152