「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症の成人当事者、および認知心理学の研究者の視点で考えたことを発信しています。メインテーマは「注意」の認知科学的分析。なお当ブログの記事における内容及び理論は無断使用禁止です。

<頭蓋骨縫合早期癒合症の予後> 手術しないまま大人になったらどうなるか? 早期癒合症による3種類の悪影響について

国内においては、一般的な頭蓋縫合早期癒合症や症候群性頭蓋縫合早期癒合症は、手術適用となります。

しかし、一方の「軽度三角頭蓋」に代表される軽度の早期癒合症は、下地武義先生による施術を含め、ごく少数の医療機関でしか行われていないという状況です。そのうえ、軽度三角頭蓋の手術に対する否定的な見解を持つ団体も少なくありません。

現状こういった状態なので、お子様の頭蓋骨が軽度三角頭蓋であることが運良く発見できたとしても、親御さんは手術を受けるべきか、または受けざるべきかという選択肢の間で悩まれるかと思います。

そこで今回は、通常の早期癒合症と軽度の早期癒合症の双方において、手術をしないまま大人になった場合の症例を紹介しながら、頭蓋縫合早期癒合症がもたらす悪影響について説明します。

 

 

第1 通常の頭蓋骨縫合早期癒合症による悪影響

1 頭蓋骨縫合早期癒合症の説明

赤ちゃんの頭蓋骨は一体化されていません。人間が生まれるときには、母体の産道を通ります。しかし、人間の頭蓋骨は、人間の産道を通りぬけられないほどの大きさであるため、そのままの大きさでは通り抜けられません。

そこで、母体の産道を通り抜けるほどの大きさに頭蓋骨を変形させるという役割を担うかたちで、人間の頭蓋骨は分割されています、。ちなみに、この変形機能(児頭の応形機能)を「骨重積」といいます。

そのため、赤ちゃんの頭蓋骨(顔より上の部分)は骨が一つに固まっていないのが通常です。そして成長するにしたがって大泉門や小泉門といった隙間が閉じていきます。こうして人の頭蓋骨は一つの強固な骨になっていきます。

 

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https://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/605.html より引用

一方で、頭蓋骨が早い時期に閉じることがあります。これが頭蓋骨縫合早期癒合症(以下、早期癒合症)です。その発生頻度は1万人に4~10人*1と、少数にとどまっています。

しかし、私はこのデータは正確性に欠けると私は考えています。なぜなら、この数値の中に、軽度の早期癒合症は含まれていないことは確実であるためです。その根拠はのちに説明します。

 

2 早期癒合症の鑑別方法

鑑別には、触診や頭蓋骨の3DCT映像、及び頭蓋内のX線写真の撮影を通して行われます。

通常の早期癒合症は、頭蓋の変形の程度が顕著なもの指します。その変形の度合いは、素人目線でも外見ですぐに異常だとわかります。

 

3 国内における治療に関する医学的見解

早期癒合症の状態においては、手術の適用条件となる頭蓋内圧亢進症状が併存しています。ゆえに、頭蓋内圧亢進の改善を目的とした手術が、脳神経外科及び形成外科によって施されます。

ここで重要なのは、早期癒合症の手術の目的が、あくまで頭蓋内圧亢進状態の改善であることです。

関係性が報告されている精神症状の発生の抑止や美容的な問題の改善が目的なのではないということです。

 

4 通常の早期癒合症の症状(3種類の悪影響)

 早期癒合症がもたらす症状を、私は3種類の悪影響として以下のように分類しました。

 

① 外見的な問題

頭蓋骨の変形の程度が顕著であるため。

 

② 身体症状

早期癒合症を原因とする身体症状は、頭蓋内圧亢進症状です。

 ・目に関する問題

眼球突出、外転神経麻痺、うっ血乳頭の発生

 ・ほかの身体的問題

悪心のない嘔吐、頭痛

 

③ 精神症状

 精神運動発達遅延(要するに精神発達遅滞、知的障害)

  

詳細は以下の小児慢性特定疾病情報センターのHPをご覧ください。

https://www.shouman.jp/disease/instructions/11_09_025/

 

5 通常の早期癒合症の成人当事者の症例

日本においては通常の早期癒合症であれば即刻治療対象となるため、通常の早期癒合症の成人当事者に関するデータは日本に存在しないことは前にも記しました。しかし、一方で医療後進国では、通常の早期癒合症の患者が未治療のままになる可能性は十分存在します。

実際、インターネットで調べると、通常の早期癒合症の成人当事者の症状に関するデータが存在することが判明しました。

その詳細は以下の海外ウェブサイトで紹介されています。

 

www.annalsofian.org

 

ウェブサイトの内容を要約しますと、

  • 31歳女性、非症候性頭蓋縫合早期癒合症
  • 出生時より重篤な精神発達遅滞、全般的な発達遅滞
  • 両親は健常
  • 脳組織は正常
  • しかし、クモ膜下腔およびクモ膜下槽は消失していた(著しく体積が減っていたの意味か?)

 

成人の症例というものはなかなか希少なものらしく、ウェブサイトにはこんなことが書かれていました。

The uniqueness of our case lies in the presentation of imaging findings of the patient with primary craniosynostosis who survived into adulthood without undergoing any corrective surgical procedure, whereas the literature describes such findings in infants and children only.

 

6 <仮説>なぜ精神発達遅滞になるか

通常の早期癒合症の成人当事者の症例から、

クモ膜下腔やクモ膜下槽の「消失」

精神発達遅滞

の二つの概念の間に、何らかの関係性があるといえます。これについて私は以下のような仮説を立てました。

「早期癒合症による精神発達遅滞は、頭蓋骨による大脳皮質への圧迫によって発生する?」

 

第2 小児慢性特定疾患としての早期癒合症と「大人の早期癒合症」

1 早期癒合症は幼少期だけのものではない

通常、早期癒合症は幼少期に発見される病気であるため、現在、早期癒合症は小児慢性疾患として扱われています。そして、少なくとも現代の日本を含めた先進国では、早期癒合症の状態で成長することは、想定されていません(ただし医療後進国ではこの限りではない)。

しかし、私は早期癒合症を小児慢性特定疾患とすることについて、いささか疑問を感じます。なぜなら、早期癒合症のまま放置されてしまった成人が存在するからです。それが、後に紹介する軽度の早期癒合症です。

 

2 見過ごされたまま大人になる軽度な早期癒合症、それが「大人の早期癒合症」

頭蓋骨の変形の程度が軽度な早期癒合症は、エビデンスが十分に存在していないどころか、専門家の間でも認知されておりません*2。ゆえに現在の早期癒合症の鑑別方法に準拠したとしても、医師がその存在を見過してしまう可能性を十分に存在します。

軽度の早期癒合症が見過ごされてしまった場合、そのまま大人になってしまいます。

このことから軽度な早期癒合症を、私は「大人の早期癒合症」と呼んでいます。

 

第3 「大人の早期癒合症」とは

1 「大人の早期癒合症」は、軽度三角頭蓋のみとは限らない

なかでも前頭縫合の軽度な早期癒合という病態を現す「軽度三角頭蓋」は、「大人の早期癒合症」の代表例です。しかし、「大人の早期癒合症」は軽度三角頭蓋だけではありません。「軽度舟状頭蓋」や「軽度短頭蓋」に加え、合併するという可能性もあります。

 

2 「大人の早期癒合症」の原因

「大人の早期癒合症」の原因についての見解を、私は当ブログの中で提示しています。その内容は、通常の早期癒合症の原因とは異なります。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

3 「大人の早期癒合症」のエビデンスとなる情報はまだ存在しない

通常、早期癒合症が幼少期に発見される疾病であることは前にも書きました。

こういった事情もあり、日本国内において「早期癒合症の成人」という可能性は医学的に想定されていません。実際、軽度の早期癒合症についての情報をオンライン上のホームページに記載している病院は、日本国内に存在しません。

 

4 軽度三角頭蓋のエビデンスとなる資料の存在

下地武義先生による軽度三角頭蓋の手術が行われ始めた時期は近年のことですので、軽度三角頭蓋の医療の歴史は、まだ浅いですし、世間一般に認知されていません。

そんな中で、下地先生によって軽度三角頭蓋の罹患者の症状を統計資料として纏めており、インターネット上で公開されています。

それは以下のURLです。

 

www.geocities.jp

 

これは、唯一の軽度三角頭蓋のエビデンスといえる情報であるといえます。

 

5 「大人の早期癒合症」のエビデンスを確立させるために

しかし、この情報は、下地先生が手術対象とする幼児期の患者の症状のみをまとめた作られた資料です。軽度な早期癒合症の全容を解明するためには、より幅広い年齢の患者の症状をまとめることが必要になるので、成人当事者のデータが必要となります。

 

第4 軽度な早期癒合症(「大人の早期癒合症」)の症例

ここでは、軽度な早期癒合症の成人当事者である私の症例を紹介します。

 

1 早期癒合症の病態について(CT画像あり)

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まず、私の頭蓋骨のCT画像を用いた自己紹介をします。

私の頭蓋骨は、以下の部分が早期に癒合している状態です。

  • 前頭縫合
  • 矢状縫合

要するに頭蓋骨の縦に走る縫合線が早期に癒合した状態です。医師によると早期癒合症の程度は軽度であるとのこと。

 

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赤線で示した部分は、通常の頭蓋骨では見られない所見です。

 

2 軽度な早期癒合症による3種類の悪影響とは

この早期癒合症によって発生していると推測している、現在抱えている諸症状を以下ように分類しました。

 

① 外見的な問題(二次障害を含める)

軽度の早期癒合症は、頭蓋骨の変形の程度が軽いですが、一方で「頭皮の下垂」を発端とする美容面での問題が存在します。

  • いびつな髪の毛の生え方(前髪が少ない、側頭部のボリューム大など)
  • 一重まぶた
  • 二重あご

そしてこれらの症状は、頸筋症候群を引き起こす可能性があります。

単に美容的な悪影響にとどまらず、本格的な二次障害を発生させる可能性があることがポイントです。

 

 身体症状

  • 目に関する症状

内斜視(外典神経麻痺、あるいは開散麻痺によるもの)、それに由来する眼精疲労

頭蓋内圧亢進症状の所見のなかで決定打的存在である「うっ血乳頭」はありません。

  • ほかの身体的症状

悪心のない嘔吐

 

 精神症状

・特異的言語発達障害(聴覚情報処理障害)

・特定不能の広汎性発達障害

 

第5 早期癒合症についてさらに知りたい方のために(記事リンク)

1 軽度三角頭蓋の治療に関する肯定説および否定説

「大人の早期癒合症」のひとつである軽度三角頭蓋の治療に関しては、その是非を問う論争が存在します。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

2 早期癒合症の手術適用条件の存在(⇔手術必要性の阻却事由)

早期癒合症の手術の目的を、早期癒合症の改善より頭蓋内圧亢進症状の解消とすることに重きを置く脳神経外科学についてです。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

3 早期癒合症の精神症状について

早期癒合症が精神症状を引き起こすメカニズムに関する内容は、以下の記事で紹介しています。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 

4 早期癒合症の身体症状について

嘔吐症状については以下の記事で紹介しています。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

5 早期癒合症の外見的な問題について

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

*1:

http://www.jichi.ac.jp/keisei/surgery/disease1.html

*2:国内のcraniosynostosis研究会において扱われたことはない