「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

考えたことを発信しています。メインテーマは認知科学。頭蓋縫合早期癒合症、および「ワーキングメモリ容量減少症候群」(仮)の成人当事者です。実行機能(ワーキングメモリ)について研究中。

発達障害とワーキングメモリの関係(原因は容量か?それとも機能か?)

目次

 

 

 第1. ワーキングメモリについて

1. ワーキングメモリとは

例えば、ワーキングメモリ(「作業記憶」、「作動記憶」ともいう)についての公式的な見解は以下のようになっています。

「短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。」

*1

 

もともとワーキングメモリとは、心理学者Alan Baddeleyが唱えた実行機能に関する概念であって、脳の中に「ワーキングメモリ」という名前の部位があるわけではありません。ワーキングメモリとは実行機能であると理解してください。

実行機能に関する説明は以下の通りです。

複雑な課題の遂行に際し、課題ルールの維持やスイッチング、情報の更新などを行うことで、思考や行動を制御する認知システム、あるいはそれら認知制御機能の総称である。*2

 

「外部」から入力された情報に反応するという行為(実行課題)をするうえで必要な機能が実行機能というわけです。

その機能を表現した言葉として、「注意制御機能」や「抑制機能」が有名です。

 

2. 記憶との関係

ワーキングメモリは、情報認知をするための領域としての性質上、処理するために貯蔵した情報を短期記憶として保持する役割を担っています。

 

3. 脳の部位

ワーキングメモリの脳領域について、興味深い情報を発見しました。

「ワーキングメモリの個人差を測定するために,日本語版のリーディングスパンテスト(J-RST)を開発しました。また,fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用い,実験参加者がRSTを行っているさいの脳活動を測定した結果,ワーキングメモリの注意制御システムに関わるもっとも重要な脳領域を発見しました。そして,3つの主要な領域(前頭前野(PFC),前部帯状皮質(ACC),後部頭頂皮質PPC)から構成される中央実行系機能のモデルを提案しました。」

*3

ワーキングメモリ概念が指す認知活動を担う脳領域は多くある、というより、直接関係がない領域とのつながりによって初めて実行課題を遂行できるわけですが、認知心理学が注目しているのは、以下の領域です。

前頭前野背外側部(DLPFC):認知実行機能

前頭前野背内側部(MPFC):内向的思考

・前部帯状皮質(ACC):ドーパミン(DLPFCとMPFCの「バッテリー」)の分泌にかかわる?

 

第2. ワーキングメモリと発達障害

1. 分類方法

ワーキングメモリは、発達障害を論じる上でも関わりの強い概念です。そこで、今回はワーキングメモリの観点で以下の発達障害を分類してみます。

自閉症スペクトラムADHD注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)、ADD(注意欠陥障害)

 

類型分けする際に検証するべき事柄は以下のとおりです。

Q1. ワーキングメモリの働きとは関係があるか?

Q2. ワーキングメモリそのものに問題があるか?

 

すると、以下のような結果になります。

  • ワーキングメモリとは関係がないもの → :自閉症スペクトラム、LD(狭義)

  • ワーキングメモリに作用する部分に問題があるもの → ADHD

  • ワーキングメモリそのものに問題があるもの → 注意欠陥症状

ここでは、ワーキングメモリと関わりのある障害についてふれます。

  

2. 機能と容量とで分類すべし

ADHDと注意欠陥症状は、ともにワーキングメモリの働きが弱まっている障害です。

ここでわたしが提案したい観点は、「ワーキングメモリが弱い」と一括りにするのではなく、ワーキングメモリの機能不全によって引き起こされる問題と、あるいは容量そのものの問題によって引き起こされる問題とを比較することです。

 

ワーキングメモリが機能するためには、「バッテリー」の役割を担う神経伝達物質ドーパミンが必要です。

この神経伝達物質がワーキングメモリへの伝達が妨害されることにより、実行機能の低下に陥ります。すると認知における注意制御ができなくなり、それを超えて行動の抑制が利かなくなります。

こうして不注意症状だけでなく衝動性や多動性の症状が現れます。これがADHDです。

ワーキングメモリそのものに問題があるのではなく、その電源を供給するまでの過程に問題があるのです。  

 

  • 注意欠陥症状

一方の注意欠陥症状は、神経伝達物質の分泌量異常とは関係がありません。衝動性や多動性の症状がみられないのは、ワーキングメモリに神経伝達物質が十分に供給され、行動の制御が機能しているからでしょう。

問題は、ワーキングメモリそのものにあり、ずばり、ワーキングメモリの容量が小さいことです。

 

電源供給は正常であっても、ワーキングメモリの容量が小さいがゆえに十分に機能していない状態です。

 

すると情報の入力出力での注意が十分に行き届かなくなります。これがADDです。

 

以下の記事で、ADHDと注意欠陥症状の相違点について記載しております。

 

 

第3. ワーキングメモリそのものの障害

1. 病巣はどこ?

ワーキングメモリの障害は、ワーキングメモリの役割を担っている領域とされる以下の部位の以上によって引き起こされることは理解できます。

・前帯状皮質

・大脳皮質

 

さて、これらの部位の機能を考慮した上で、ワーキングメモリの役割分担をまとめますとこうなります。

帯状回皮質 → ワーキングメモリが動くためのバッテリーの供給源

大脳皮質(特にDLPFC) → ワーキングメモリそのもの

 

すると、これに「第2」の内容を当てはめると、以下のような結論を導き出せます。

ADHDは前帯状皮質の異常

・ADDは大脳皮質の異常

ということになります。

  

2. 早期癒合症とワーキングメモリ

早期癒合症でどの部位が圧迫されるかによるでしょう。しかし三角頭蓋や舟状頭はいずれも大脳皮質を圧迫する障害なので、これらがワーキングメモリに悪影響を与える可能性を否定する論拠があれば、教えていただきたいです。

早期癒合症についての記事は以下のものです。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 

3. ADDと関わりがあると考えられる障害

注意欠陥症状に由来する派生障害は、以下のものだと考えています。

特異的言語発達障害、聴覚情報処理障害、小児慢性疲労症候群、LD(広義)、離人症

 

第4. (結論)治療薬で「ADHD」が治らないケースについて

神経伝達物質に大脳皮質が作用するという構造を踏まえると、ワーキングメモリの働きが弱い、という現象は、問題の焦点として大脳皮質と前帯状回皮質のどちらかの問題であると考えるべきでしょう。

これは「ADHD」の治療に当てはめることができます。

ADHD治療薬とされるコンサータストラテラを利用することで、症状は緩和されます。しかし、これらの治療薬は「ドーパミン仮説」によるものです。ゆえにもし治療薬による効果がない場合は、神経伝達物質の分泌量異常による障害でないと考えるべきです。もし、不注意性だけの「ADHD」だとしたら、余計当然なことです。