封印されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

主に認知系統の学問を題材に、論文の下書きのような感覚で情報発信しています。読みにくい文章ですみません。きっかけは特異的言語障害(SLI)・聴覚情報処理障害(APD)・注意欠陥症状(ADD)。頭蓋縫合早期癒合症の成人当事者です。中央実行系(ワーキングメモリ)について研究中。

発達障害とワーキングメモリの関係(原因は容量か?それとも機能か?)

目次

 

 

 第1. ワーキングメモリについて

1. ワーキングメモリの役割

ワーキングメモリ(「作業記憶」、「作動記憶」ともいう)についての公式の定義は以下のとおりです。

「短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。」

*1

 

別の見方をすると、ワーキングメモリは外部からの情報の入力の始まりと外部への情報出力の終わりにおいて利用されるので、いわば、人間の「情報処理活動の末端」としての役割を担っているといえます。

 

会話を例に出しますと、

耳にした相手の話を理解するまえに、入力した情報を貯蔵するためのスペースがワーキングメモリです。そして、こちら側からなにか言葉を用いて返答しようとするとき、そのために出力される情報を整理するためのスペースとしての役割もワーキングメモリが担っています。

 

ワーキングメモリとはいわば「机」のようなもので、そこに「電源」である神経伝達物質が作用することで、入出力時に行動が制御されるという構造になっています。

 

2. 記憶との関係

ワーキングメモリとは、短期記憶を貯蔵する領域です。

短期記憶が弱いというのは、つまりワーキングメモリに問題があることを意味します。

 

3. 脳の部位

ワーキングメモリの脳領域について、興味深い情報を発見しました。

「ワーキングメモリの個人差を測定するために,日本語版のリーディングスパンテスト(J-RST)を開発しました。また,fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用い,実験参加者がRSTを行っているさいの脳活動を測定した結果,ワーキングメモリの注意制御システムに関わるもっとも重要な脳領域を発見しました。そして,3つの主要な領域(前頭前野(PFC),前部帯状皮質(ACC),後部頭頂皮質PPC)から構成される中央実行系機能のモデルを提案しました。」

*2

 

第2. ワーキングメモリと発達障害

1. 分類方法

ワーキングメモリは、発達障害を論じる上でも関わりの強い概念です。そこで、今回はワーキングメモリの観点で以下の発達障害を分類してみます。

自閉症スペクトラムADHD注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)、ADD(注意欠陥障害)

 

類型分けする際に検証するべき事柄は以下のとおりです。

Q1. ワーキングメモリの働きとは関係があるか?

Q2. ワーキングメモリそのものに問題があるか?

 

すると、以下のような結果になります。

  • ワーキングメモリとは関係がないもの → :自閉症スペクトラム、LD(狭義)

  • ワーキングメモリに作用する部分に問題があるもの → ADHD

  • ワーキングメモリそのものに問題があるもの → ADD

 

ここでは、ワーキングメモリと関わりのある障害についてふれます。

  

2. 機能と容量とで分類すべし

ADHDとADDは、ともにワーキングメモリの働きが弱まっている障害です。

ここでわたしが提案したい観点は、「ワーキングメモリが弱い」と一括りにするのではなく、ワーキングメモリの機能不全によって引き起こされる問題と、あるいは容量そのものの問題によって引き起こされる問題とを比較することです。

 

ワーキングメモリが機能するためには、「電源」の役割を担う神経伝達物質(アドレナリン等)が必要です。

この神経伝達物質がワーキングメモリへの伝達が妨害されることにより、ワーキングメモリが機能不全を陥ります。すると行動の制御が行き届かなくなるため、不注意症状だけでなく衝動性や多動性の症状が現れます。これがADHDです。

ワーキングメモリそのものに問題があるのではなく、その電源を供給するまでの過程に問題があるのです。  

 

  • ADD

一方のADDは、神経伝達物質の分泌量異常とは関係がありません。衝動性や多動性の症状がみられないのは、ワーキングメモリに神経伝達物質が十分に供給され、行動の制御が機能しているからでしょう。

問題は、ワーキングメモリそのものにあり、ずばり↓

ワーキングメモリの容量が小さいことです。

 

電源供給は正常であっても、ワーキングメモリの容量が小さいがゆえに十分に機能していない状態です。

 

すると情報の入力出力での注意が十分に行き届かなくなります。これがADDです。

 

第3. ワーキングメモリそのものの障害

1. 病巣はどこ?

「第1-3」に振り返ってみますと、ワーキングメモリの障害は、ワーキングメモリの役割を担っている領域とされる以下の部位の以上によって引き起こされることは理解できます。

・前帯状皮質

・大脳皮質(前頭前野および後部頭頂皮質)

 

さて、これらの部位の機能を考慮した上で、ワーキングメモリの役割分担をまとめますとこうなります。

帯状回皮質 → ワーキングメモリが動くためのバッテリーの供給源

大脳皮質 → ワーキングメモリそのもの

 

すると、これに「第2」の内容を当てはめると、以下のような結論を導き出せます。

ADHDは前帯状皮質の異常

・ADDは大脳皮質の異常

ということになります。

  

2. 早期癒合症とワーキングメモリ

早期癒合症でどの部位が圧迫されるかによるでしょう。しかし三角頭蓋や舟状頭はいずれも大脳皮質を圧迫する障害なので、これらがワーキングメモリに悪影響を与える可能性を否定する論拠があれば、教えていただきたいです。

早期癒合症についての記事は以下のものです。

 

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 

3. ADDと関わりがあると考えられる障害

ADD、すなわち「注意欠陥症状」に由来する派生障害は、以下のものだと考えています。

特異的言語発達障害、聴覚情報処理障害、小児慢性疲労症候群、LD(広義)、離人症

 

第4. (結論)治療薬で「ADHD」が治らないケースについて

神経伝達物質に大脳皮質が作用するという構造を踏まえると、ワーキングメモリの働きが弱い、という現象は、問題の焦点として大脳皮質と前帯状回皮質のどちらかの問題であると考えるべきでしょう。

これは「ADHD」の治療に当てはめることができます。

ADHD治療薬とされるコンサータストラテラを利用することで、症状は緩和されます。しかし、これらの治療薬は「ドーパミン仮説」によるものです。ゆえにもし治療薬による効果がない場合は、神経伝達物質の分泌量異常による障害でないと考えるべきです。もし、不注意性だけの「ADHD」だとしたら、余計当然なことです。