封印されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

主に認知系統の学問を題材に、論文の下書きのような感覚で情報発信しています。読みにくい文章ですみません。きっかけは特異的言語障害(SLI)・聴覚情報処理障害(APD)・注意欠陥症状(ADD)。頭蓋縫合早期癒合症の成人当事者です。中央実行系(ワーキングメモリ)について研究中。

(感想)丸山圭三郎「ソシュールを読む」① 

目次

 

1. 購入したきっかけ

大学では私は法学部に在籍していたので、様々な障害を抱えていることが判明したことをきっかけに言語学の勉強を始めた頃は、言語哲学はおろか、言語学や哲学について全く知らない状態でした。

(…言語学を志したきっかけについてはブログで紹介しました。↓)

  

atama-psycho-linguistics.hatenablog.jp

 

 

そんなとき、私の高校時代の後輩(彼もまた、言語学とは関係のない商学部出身で、現在は会計士として勤務している)と会ったときに、なんと言語学の話で盛り上がりました。

私が、言語学の勉強の仕方がわからない状態であることを話したとき、言語哲学ソシュールの思想から始めると、言語学が理解しやすく感じるようになるとのアドバイスをしてくれたのです。

それを聞いた私は、大学の生協で言語学の専門書を探していたときに、偶然この本を見つけ、迷わず購入しました。

 

ソシュールを読む (講談社学術文庫)

ソシュールを読む (講談社学術文庫)

 

 

私がこの本を購入してからもう2年ほど経過しますが、現在に至るまで数回か読みとおしました。最近になってまた読みたくなり、ついでにブログにも感想を書こうと思いました。

  

この本を最初に読んだ頃は、知識ゼロの状態だったということもあり、途中で読むのをやめてしまいそうになりました。それも当然のことで私自身、本を読み終えるという経験がほとんどないのです。しかし、当時の私が使命感に燃えていたこと、そして内容面においては、私自身の経験と重ね合わせられる内容が随所にあり、共感の連続だったので、読破できました。

 

今回は読みやすさという観点からの感想を紹介していきます。

 

2. 難点:専門用語の難しさ

これは、学術書の内容の奥深さを追求するときに犠牲にせざるを得ない部分ゆえに仕方ないですが、哲学の基礎的な知識がなければ完全に理解するのはむずかしいです。

 

例えば

「アナロジー」、「アプリオリ」、「アポステリオリ」、「形相」、「即自的」、「ディスクール」、「分節」

といった専門用語の意味を事前に知らなければ理解できないでしょう。

また、「恣意性」や「共時態」といったキーワードの意味を理解しながら読書をすすめる必要があります。

 

3. 言語学だけでなく、哲学的視点も必要

専門用語の多さに加え、内容の哲学的な深遠さが書籍としての敷居の高さに拍車をかけていると考えます。悪く言えば、「読む人を選ぶ本」なのです。普段何気なく使用する言語の諸現象について研究する言語学に、その根源的な部分を追求する哲学的視点を組み合わせた学問である言語哲学がこの本の主なテーマです。

つまり、言葉そのもの、あるいは言葉を用いた思考などについて考えた経験のない方には、おすすめできません。社会生活を営む上では必要ないことが書かれている故に、時間の無駄だと感じるようになるはずだからです。実際1回読んだだけでは内容の全体像を把握するのは困難ですので、真髄を理解するまでには何回か読み直したほうが良く、時間がかかります。

 

4. 良い点①:読みやすい構造である

構造が素晴らしい。

一つ目は文の構造です。悪文はなく、読みやすいと私は感じました。その上親切なことに口語体で、読者に語りかけるような表現になっています。一回目の読書で内容が理解できなければ、とりあえず結論の「~なのです」と書かれている箇所だけでも読めば、内容の流れを把握できます。

二つ目は本全体の内容的な構造す。ソシュールの講義録の順番をおいながら、筆者による講義の解説を紹介するという構造になっています。新しい内容が次々と現れるというものではなく、ソシュールの哲学観(関係主義の言語学への導入)が形を変え幾度も登場するという内容になっています。

つまり、読むときに新しい知識を積み重ねるように覚えるという姿勢ではなくてもよくて、断片的に読んでいくのも可能かも。しかも、同じ事柄を言語学研究や言語哲学などの異なる視点で論じていく展開になっているので、知りたい事柄の視点で読解できるのです。

 

5. 良い点②:わかりやすいたとえ

この本は言語哲学がテーマで、ふつうなら概念的な話が多いゆえ、初学者にとってはとっつきにくいはずです。

しかし、概念的な話に説得力を持たせる且つ理解しやすくするために、失語症などの実務的なことや、音楽やヘレン・ケラーなどの具体例を筆者が紹介しているために、理解しやすいのです。

 

6. こんな人におすすめ!

まずは、言うまでもなく言葉に関する現象に興味や関心を抱いている人」でしょう。言語学がどういうものなのかを知るために読むというのは最良の動機です。ソシュールによる、当時の歴史言語学に傾倒する言語学従事者に対する批判や、彼以降の近代言語学ロラン・バルトメルロ=ポンティなど)に与えた影響を俯瞰できるので、わかりやすいです。

  

SF作品が好きな人

言語学を素材としたSF作品(伊藤計劃の「虐殺器官」など)に接触するのも、いいかもしれません。興味を持てば、この本も楽しめるはずです。

 

言語処理が苦手な人

多くの場合無意識的な行為である言語行為に意識を向けているはずだから

 

ソシュールの考えというのは、言語哲学といった学問的な内容にとどまらず、「天才の思考」を垣間見られるような気がします。実際、本書でも創造性と言語との関係性について触れている部分があります。

新しい考え方を知ることで、読む前と読んだ後とでは、世界が違って見える、なんて人もいるはずです(実際私がそうです)。詳しいことは別の機会で綴りますが、それは森羅万象の分節方法の変化を意味するのでしょう。

 

次回からは、内容面に言及してみます。