封印されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

病気ブログというよりは、心理学や言語学を扱ったブログです。きっかけは特異的言語発達障害(SLI)・聴覚情報処理障害(APD)・注意欠陥症状(ADD)。頭蓋縫合早期癒合症の成人当事者です。

ADHDの不注意と「ADD」の不注意の比較検討

1.ADHDの不注意症状の分析

ADHDで多動性が寛解する可能性については前の記事で説明したとおりです。

しかしその一方で、多動症状の原因と考えられる衝動性は残存します。また多動症状が寛解すれば不注意症状がなくなるというわけではないようです。実際、多動性が見られない「不注意優勢型ADHD」では衝動性が消えておらず、また不注意症状も以前強くあらわれたままです。

私は多動性と不注意性の関係性について以前から興味を持っていました、この不注意性について考察していきます。

ADHDの不注意性はなぜ発生するのでしょう?その答えの通説を紹介すると↓

頭の中で考えていることが「多動」であるために、目的の行為に注意を配ることができないため、といわれています。

 

これに対して、私は↓

「多動」だからではなく、衝動の抑制ができないこと、すなわち「衝動性」が不注意を招いている

という表現のほうが正確なのではないかと考えます。

 

私はADHDの不注意性について、以下のような仮説を立てました。

 ・衝動性を抑制できないことで、本来の目的に向けられるはずの集中力を発揮できない状態が、ADHDの不注意症状につながっていること。

 

ADHDの不注意症状と「ADD」の不注意症状は、不注意と評価される帰結が同じなだけで、原因や機序といった本質的な部分は別物同士であること。

 

2. 「不注意優勢型ADHD」について

多動性や衝動性よりも不注意性が目立つ不注意優勢型ADHDは、多動性が見られない程度に衝動性が抑制されたADHDではないかと私は考えます。

子供の頃に多動性が強く現れていたためにADHDと診断された人も、成長する中で社会性を身につけることで多動性が抑制されます。しかしこのとき、同時に衝動性がなくなったわけではないことは以前に記述したとおりです。この衝動の抑制は、学習した社会性が手助けしている状態なのです。するとその結果、残存している衝動性と不注意性が優位になります。これが不注意優勢型ADHDです。

すなわち、多動性の要因を取り除くことで、ADHDの性質を持つ誰もが不注意優勢型ADHDになるといえます。

 

 

3.  (ADHD)-(多動性) ≠ (本来のADD)

おそらく世間では「不注意優勢型ADHD」と呼ばれている障害は、まるでADHDから多動性を抜き取ったような症状を示すために、世間ではそのまま表現に反映させて「注意欠陥障害」(ADD)とも呼ばれているかもしれません。

 

しかし、多動性という言葉が取り除かれたうえで成り立つ「ADD」という表現にもっとふさわしい内容の障害、すなわち、

多動性だけでなく衝動性もない一方で、注意欠陥を特徴とする障害

が存在するので、それを私はADDとよぶことにします。

 

このADDとADHDの不注意症状は共通点であり、似て非なるもの同士です。その違いについてこれから説明します。

 

  • ADHD及び不注意優勢型ADHDの不注意性

これは衝動性ありきの不注意です。すなわち本来達成すべき目的とは関係のない脳内の衝動性が、「注意力」(※)の運用を妨害し、目的の遂行を邪魔している状態。

つまり、衝動性の問題を完全に解決すると不注意性もなくなるのではないかと私は推測します。

(※注意力=ワーキングメモリです。)

 

  • ADDの不注意性

これに対し、ADDの不注意はワーキングメモリの弱さが原因だと私は考えます。

例えば、「ブレインフォグ」や離人症は、ワーキングメモリに直接作用しているものではないかと思います。

 

 

4. 「注意力」の意味

この「注意力」を説明するのは、私の文章力では困難なので、比喩を用いながらその特徴を以下のように紹介します。

  • パソコンの部品に例えるならば、「メモリ」に該当する

パソコンのメモリが情報処理のために情報の短期記憶の機能を担っているように、人間の脳でも注意力をベースに短期記憶の維持リハーサルが頻繁に行われています。

パソコンのメモリの大小がコンピュータの処理速度に関わるように、注意力が小さければ短期記憶の維持リハーサルに難が生じる。

 

  • 情報を処理するための「作業台」

事実、作業台の面積が広いほど、情報処理の速度の向上だけでなく、同時に処理する工程の増加を見込めるように、「注意力」がマルチタスク機能に関わっています。

 

ADDの人をパソコンで例えるなら極端な話、

メモリが2GBしか搭載されていないパソコン

です。実際、パソコンに搭載されているプロセッサがどれだけ高機能だったとしても、メモリの容量が小さければパソコンの処理速度が低下するだけでなく、同時処理が苦手になります。

ADDの人間も同じです。通常時でもマルチタスクは苦手ですし、あることに集中すればするほどほかのことに意識を向けるを配ることができなくなります。

 

5. 注意力と集中力の混同(集中力の意味)

世間一般の認識において、集中力欠如と注意力欠如は同じ意味の言葉であるかのように使われています。

例えば、自動車の運転をしているとき。

ドライバーが運転に集中していなかったとしたら、周囲への注意を配ることは当然できません。つまり、「集中しなければ、注意を向けられない」、という因果関係が成り立っています。

つまり、集中力と注意力は同じ意味ではありません。

 

集中力とは、衝動を抑制しながら意識を適切な方向に集中させる力です。

もしこの力が発揮されなければ、注意力そのものに不備がなくても機能しません。

集中力がなければ、どんなに大きな作業台(=注意力)が目の前に置かれ、且つどれだけ種類豊富な工具(=知識)が備わっていたとしても、作品を作り出すことができるでしょうか?それは不可能です。

つまり注意力が発揮されるのは、集中力ありきの状態のみということです。だから、集中力に不具合のあるADHDでは不注意性が発生するのです。

 

6.まとめ

ADHDという言葉の構造を上のモデルと当てはめると、以下のようになります。

「注意欠如」→注意力の欠如

「多動性」→集中力の欠如

 

そして、ADHDの本質は注意力の欠如ではなく、集中力欠如。

一方のADDの本質こそ、注意力の欠如にあると私は考えます。

 

  • DSM-5によるADHDの類型化の見直し

ADHD

 ・多動優勢型ADHD

 ・不注意優勢型ADHD

 

ADD(現在、特定不能の広汎性発達障害に含まれる?)

  

次回はADHDとADDの不注意症状が引き起こす他の問題について、書いていこうと思います。