「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

考えたことを発信しています。メインテーマは認知科学。頭蓋縫合早期癒合症の成人当事者です。実行機能(ワーキングメモリ)について研究中。

早期癒合症とその治療について

・早期癒合症の手術について

さて、以前の投稿の中で早期癒合症治療の論点が、軽度の早期癒合症の扱いにあることを書きました。その前に早期癒合症の治療手段となる、手術の内容に説明する必要があります。

 

早期癒合症の手術は、大きく分けて2段階あります。

まずは頭蓋内圧を測定するための「手術」です。その内容は、全身麻酔を書けた上で、頭蓋骨の穴を開けた上で脳に計測系を刺し、脳圧を計測するというものです。

通常、脳圧は150mmH2O~180mmH2Oに保たれています。計測した結果、脳圧が200mmH2Oを上回る値になると頭蓋内圧が亢進していると判断されます。

この段階で頭蓋内圧亢進と判断された場合には、次の手術、すなわちアタマの皮膚をハガしたうえで頭蓋骨を組み替えるという、治療のための手術を受けることになります。組み替え方には様々な方法がありますので、詳細は病院のホームページを御覧ください。これらの治療は脳神経外科及び形成外科の管轄になります。

これらの手術を受ける適齢は、若ければ若いほどよいといわれています。それは脳が物理的に成長する時期が幼児期であるためです。

 

さて、ここまでの内容でご想像になられたかと思いますが、早期癒合症の治療は大がかりなものです。そのうえ術中のリスクだけではなく、頭蓋骨内の細菌の侵襲といった術後の危険性もあります。

そこで、これらのことを考慮したうえで、手術に踏み切るかどうかを判断する段階が必要になるというわけです。頭蓋骨のカタチがおかしいから、すぐ手術をしようというわけにはいかないんですね。

 

・手術対象外となる軽度の早期癒合症

素人でもわかるほどの明らかな早期癒合症の場合、手術しなければ命に関わりそうだとだれでも直感的に感じとれますね。

 

法律用語で例えるなら、命に関わることあるいは関わらずとも将来の精神発達に悪影響を及ぼすこと

「重大かつ明白な」場合ということですね。

 

しかし、

軽度の早期癒合症であること、しかも成人になって初めて気づいたという場合はどのように扱われるのでしょうか?

 

(とある事案)

例えば、早期癒合症を抱えている私は、以下のような症状を抱えています。

・軽度に早期癒合していると判断できる頭蓋骨である(詳細はこちらで)

・精神的症状(離人症や注意欠如症状、言語情報処理障害など)

・開散麻痺による、複視を伴う内斜視がある(眼科で診断済み)

・嘔吐

 

この場合、脳神経外科の先生の反応はというと👇

 

主文:汝は手術不適当。経過観察処分とする。

 

となります。

実際、手術の対象できないと私は告げられました。

 

さて、手術ができないとはどういうことなのでしょうか。

 

実際に脳圧を測る手術の前の段階として、MRIおよびCTなどの映像資料を用いながら、問診をしていくなかで医者が手術をするか否かを判断します。 

まず、早期癒合症の頭蓋骨に対し手術を施すかどうかを判断する上での一番の決定打となる材料は、MRI画像です。

また、頭蓋内圧亢進による身体症状が全て現れていることも条件に含まれます。早期癒合症によって引き起こされるのは慢性的な頭蓋内圧亢進症状なので、身体症状は以下のとおりになります。

・外転神経麻痺による両眼性内斜視

・噴出性嘔吐

・眼球のうっ血乳頭の発生

・頭痛

 

先の事例の場合、MRI画像内の脳が圧迫されていることを示す所見や、うっ血乳頭がないため、頭蓋内圧亢進症状は発生していないと脳神経外科医は判断したのです。

 

そのうえ、幼少時での手術がのぞましいという医学上の考えを反対解釈すると、仮に早期癒合症の成人に対して手術をしても、脳神経系の発達の時期が過ぎているために、精神症状の改善が期待できないと医学では考えられているということができます。

 

要約すると、

・成人であるため、手術後の改善に期待できない

 という考えが根底にあり、なおかつ、

・早期癒合症だが、頭蓋内圧亢進していないと判断できる

・斜視や嘔吐といった身体症状や精神症状は別の病因によるものの可能性がある

という理由から、手術するべきではないと脳神経外科医は判断したのではないか、と私は勝手ながら推測しています。

 

では、脳圧の測定を目的とした手術の依頼は可能なのでしょうか?

答えはできない、です。

前段階(症状)をクリアしなければ、次の段階(手術)に進むことができないと決められているから、と担当の脳神経外科医は教えてくれました。

 

・なぜ脳神経外科は早期癒合症の治療に慎重か

早期癒合症の治療は、脳神経外科と形成外科の共同で携わることが多いです。

ご存知のとおり、脳神経外科は、脳卒中などの命に関わる疾患を多く扱う領域です。だから、社会生活に支障があっても、命に別段影響がない疾患の治療に対しては慎重性を重視するというより、実は消極的であるから、という理由以外に思い浮かびませんでした。軽度の早期癒合症をどうにかしたいという場合は、脳神経外科ではなく、他の領域を受診してくれってことなんだと思います。

 

…とはいっても、国内で早期癒合症の手術の実績がある領域は、脳神経外科や形成外科しかないんですよね。これではどこの病院に行っても、治療ができないといわれることに変わりはないかもしれません。

 

(つづく)