「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

考えたことを発信しています。メインテーマは認知科学。頭蓋縫合早期癒合症の成人当事者です。実行機能(ワーキングメモリ)について研究中。

ワーキングメモリの容量障害および機能障害と、認知可能な言語情報の個数

言語情報の認知プロセスの中身ではなく、それを一つの認知行為としてとらえた場合に、容量障害と機能障害が引き起こす問題の違いについて紹介する。

結論をいうと、言語情報を認知できるか否かは、ワーキングメモリの注意制御機能の有無によって規定される。一方で、同時に認知できる言語情報の量は、ワーキングメモリの機能ではなく、容量によって規定されると私は考える。

 

例えば、新聞やラジオ、人の話といった複数の言語情報が存在する空間があったと仮定する。この場合、言語情報は複数存在しているといえる。

この時の認知について、以下の場合とその結果を記述する。

 

1 ワーキングメモリの容量が大きい場合

多くの言語情報を同時に認知できる。

 

2 注意制御機能が低下している状態(ADHD)の場合

どれか一つの言語情報の認知に努めたとしても、これらの言語情報が「混線」するために認知できない。通常、目的の言語情報を認知する際、選択的注意が機能する。それが機能していない結果として「混線」する。

この状態を解決するためには、複数の言語情報が存在しない環境で、目的の言語情報処理をしなければならない。

すなわち、認知ができていないのだろうか。いいえ、私は言語情報としての認知はできていると考える。認知できている言語情報が同時に複数流れ込んできて、それぞれの言語情報として認知できていない結果が、「混線」ではないだろうか。

 

3 ワーキングメモリの容量が小さい状態(「注意欠陥症状」)の場合

ADHDの場合とは異なり、選択的注意が可能である。この点がADHDとは異なる。ゆえに複数の言語情報から目的の言語情報のみに注意を絞り、目的の言語情報を認知できる。

しかし、問題点は別の部分で現れる。それは、同時に認知可能な言語情報の数である。ワーキングメモリの容量が小さいと、複数の言語情報を認知するのは不可能である。上記の例でいえば、3つの言語情報のうち、同時に認知できるのはどれか1つの言語情報だけである。このとき、3つの言語情報を音として知覚は実践されている。

 

結論

ワーキングメモリが機能障害を起こしている状態であると、選択的注意が機能していないために言語情報が混線し、その結果、特定の言語情報を認知できない。混線しているということは、認知はできているのではないかと私は考える。

ワーキングメモリの容量が小さくなったとしても、注意制御機能そのものは機能している。しかし、問題は「注意制御が可能な対象」が限定的になることである。

この表現が正しいかどうかは不明だが、心理言語学者のCowanの表現を借りれば、「注意の焦点」の容量が狭くなっているといえる。

 

さて、ここまでは、認知できる言語情報の個数に焦点を当てた内容である。その結果、ワーキングメモリが小容量であったとしても、認知できる言語情報の個数が少ないながらも、言語情報を認知できるという結論が得られた。

 

しかし、それはまちがいである。

ワーキングメモリ容量が小さいことで引き起こされる問題とは、認知できる領域(注意の焦点)の狭小化であり、その原因は同時処理の困難さである。言語情報の認知行為そのものが同時処理の「塊」なので、ワーキングメモリの小容量化は言語情報処理においても問題が発生するというのが、私の見解である。

 

次回は言語情報認知そのものとワーキングメモリの容量との関係についての記事を書く。

コミュ障の種類について学術的に考えてみた

コミュニケーション障害(以下、コミュ障)とは、相手とのコミュニケーションに何らかの障害が生じている状態を指します。

ここでは性格や一時的な心理状態や知識の有無などとは関係のない、真正のコミュ障を認知科学の視点で分析します。

 

 

第1 コミュニケーション能力とは(「コミュ強」の特徴)

ここで扱う「コミュニケーション」とは

他者(人間)との間でかわす、言語情報や非言語情報を利用した情報交換行為

を意味します。

 

初めに、そのコミュニケーション能力が高い人物、いわゆる「コミュ強」の特徴について考えてみました。

 

・聞く能力が高い

→・話の理解力が高い。

 ・話の行間を読む力が高い

・話す能力が高い(流暢性)

・話す内容の構造、論理性が明快

・話題提供能力が高い

・TPOをわきまえたコミュニケーションの態度をとる能力が高い

 

など。

コミュニケーション能力とは、円滑かつ良質なコミュニケーションを提供するための能力です。

コミュニケーション能力は一つの指標で評価できるものではありません。コミュニケーションをする際には様々な認知能力が働いているからです。

すなわち、「コミュ障」について語るためには、コミュニケーションをするうえで関係のある認知機能のうち、どの部分に問題があるかを分析するべきだと私は考えます。

ではつぎに、コミュニケーションにかかわる認知能力について紹介します。

 

第2 コミュニケーションと認知

1 言語情報と非言語情報

コミュニケーションの材料、すなわち相手と自分自身の間で交わされるものは、言語情報と非言語情報が挙げられます。言語情報とは単語や文などの言語を用いた情報です。しかし、これだけではすべてのコミュニケーションで「相手の意図」を推察するのは不十分です。この部分を補充するような形で媒体として用いられる情報が、非言語情報です。言語情報以外でコミュニケーションに必要な情報で、例えば、相手の感情や場の雰囲気、言語情報の言外の意味などがあげられます。

 

2 情報の入力、および出力のプロセス

 入力プロセス

言語情報&非言語情報を受信 → ワーキングメモリに格納、解釈

 

① 相手から発信された言語情報及び非言語情報を収集し、ワーキングメモリに格納します。

② 認知機構がワーキングメモリ内に格納された情報を解釈し、「概念化」します。

 

 出力過程プロセス

情報化以前の「概念」を構築 → ワーキングメモリに貯蔵、変換 → 相手に発信

 

① 自己の内面から構築された情報化以前の「概念」が、ワーキングメモリに配置されます。

② ワーキングメモリの中で、配置された概念を言語情報及び非言語情報に変換します。

③ これらの情報を相手に発信します。

 

コミュニケーションのプロセスを入力の場合と出力の場合とで分類すると、このように行われています。つまり、これらのプロセスのなかに、問題が生じてると、真正のコミュ障が現れるのです。そして、それぞれのタイプのコミュ障で、問題が生じているプロセスはそれぞれ異なります。

 

第3 コミュニケーション能力の分析

次に、細分化されたコミュニケーション能力について紹介します。

 

1 情報伝達速度

言語をつかった情報処理の速度が早いほど、情報伝達もスムーズになります。コミュニケーション能力そのものというよりは、コミュニケーション能力を支えるアクセサリのような要素です。しかし、コミュニケーションをするうえで重要な要素であります。

 

情報伝達の速度を決定づける要素は、同時処理能力、すなわち、中央実行系(ワーキングメモリ)の容量です。

 

もし、情報伝達速度に問題が生じているとすると、それはのちに紹介するコミュ障のひとつである「ワーキングメモリ容量障害型コミュ障」かもしれません。

 

2 選択的注意(カクテルパーティー効果

同時に複数の情報が存在している環境下で、認知対象と判断した情報を認知するために、注意を向ける機能を選択的注意といいます。その正体はワーキングメモリの注意制御機能です。

この機能はコミュニケーションをするうえでも必要な機能です。複数の言語情報、あるいは音情報、雑音があるなかで、人の話を聞く際に選択的注意が機能することで、複数の音が「混線」することなく、目的の言語情報を収集できるのです。

 

もし、この選択的注意の機能が低下している状態であれば、それはのちに紹介するコミュ障の一つ、「ワーキングメモリ機能障害型コミュ障」かもしれません。

 

3 言語的コミュニケーション能力

言語を扱うための能力です。感覚性言語能力と運動性言語能力に分類されます。

 

・感覚性言語能力

知っている言葉の意味を適切に理解する能力であり、また、脳の中で想起された言語化される前の概念状態から適切に言語化する能力でもあります。

言語学ソシュールの言葉を借りれば「連合」を理解する力です。

 

・運動性言語能力

既知の言葉を組み合わせて文を生成する能力として、言語学によって定義づけられた言語能力です。言葉を適切な品詞配置に置く能力です。言語学ソシュールの言葉を借りれば「連辞」を運用する能力です。

 

この言語的コミュニケーション能力に問題が発生している状態を「失語症」といいます。

 

4 非言語的コミュニケーション能力

相手が話した言葉を聞き、返答するまでの過程にある非言語的行為が、TPO(Time, Place, Occasion)という「社会性」の観点からふさわしいものであるか否かという基準です。言い換えれば、この要素は「空気を読む」能力とも言えます。

発達障害に関する議論のなかで、一番重大な問題となる能力として有名です。この部分の詳細は別のHPをご覧ください。

 

この能力に問題が発生すると、のちに紹介するコミュ障のひとつである、「非言語的認知障害型コミュ障」の症状が現れます。

 

第4 コミュ障のタイプ: 「言語障害

特徴

・感覚性言語障害 → 言語名称目録の構造破綻(言葉とその意味の不一致)のため、言語を理解できない状態

・運動性言語障害 → 文の形成が困難な状態

  

医学の表現を借りれば、「感覚性言語障害(感覚性失語)」、「運動性言語障害(運動性失語)」といった病名になります。

先天性のものではなく、交通事故による脳挫傷脳卒中の後遺症として顕現する障害ですので、高次脳機能障害に位置付けられます。

 

第5 コミュ障のタイプ: 「非言語的認知障害型コミュ障」

特徴:非言語的コミュニケーション能力の欠如

・相手の表情、周囲の雰囲気の変化といった「空気」を読み取れない

・言葉を字義通りに理解できる一方で、いわゆる「行間」を理解できない

・婉曲表現の理解、行使ができない

など

 

非言語的コミュニケーションができないタイプのコミュ障は、いわゆるASD自閉症スペクトラム)の特徴です。心理学表現を借りれば、「認知的共感」という認知能力の欠陥が原因です。

 

第6 コミュ障のタイプ: 「ワーキングメモリ機能障害型コミュ障」

特徴:

カクテルパーティー効果(周囲の雑音から目的の音を拾い認知する)の機能不全

・衝動的なリアクション

・会話内容の変更を嫌う

 

こちらのタイプは、ADHDの症状が原因のコミュ障です。ADHDはワーキングメモリが本来もつとされる抑制機能や注意制御機能が低下していることを踏まえると、以上のような特徴を持つコミュ障となることを導き出せるかと思います。ADHDのそれぞれの特徴が引き起こすコミュ障の症状を具体的に紹介します。

 

1 抑制機能の低下

一番目立つ症状が、衝動的なリアクションでしょう。これは、ワーキングメモリの抑制機能が低下したときに発生します。通常、扁桃体の信号(感情)を抑制する機能が働いていますが、これが機能しなければ、行動に感情がそのまま反映されるようになります。

 

A 扁桃体の感情が好転したとき

・興味のある話題に移った → 自分が話すことに快感を覚える → 話すことがやめられない → 話し続ける。

・発言したいことがある → 発言を我慢できない → 蛇足発言、話の流れ(論理性)に欠いた発言をする。

 

B 扁桃体の感情が悪化したとき

・興味のない話題に移った → 話を聞くことに我慢ができない → 話を聞かなかったり(上の空)、注意がそれたりする。

 

抑制機能が働かなくなると程度の差こそあれ、以上のような症状が現れるようになります。その結果、「自己中心的なリアクションを衝動的にとっている」と客観的に評価されてしまいます。留意点として、これらの症状は、本人の意思に関係なく引き起こされてしまうものなのであることを最後に記載いたします。

 

2 注意制御機能の低下

注意制御機能とは、注意を適切な方向に向ける機能を意味します。この機能が低下すると、選択的注意ができなくなります。具体的には以下のようなコミュニケーションの弊害が発生します。

・複数の言語情報が存在している環境下から、認知対象とするべき言語情報に注意を向けられない(=カクテルパーティー効果の欠如)

・自分の思考に注意が向けられすぎることにより、相手の話を聞きそびれる。

 

第7 コミュ障のタイプ: 「ワーキングメモリ容量障害型コミュ障」

特徴: 情報伝達速度に難がある状態

・口下手である(複雑な構造の文を話すとき)

・言葉を想起するのが遅い

・相手が話している内容を理解できなくなることがある(複雑な構造の文を聞くとき)

・言い間違いが多い(特に名詞)

 

こちらのタイプは、私が提唱する「注意欠陥症状」が発端となっているコミュ障です。

簡単に言えば「頭の回転が悪い」、「要領が悪い」症状が、コミュニケーション能力に悪影響を与えています。ここでいう「頭の回転」というのは、本質的な知能、創造性に関する頭の回転ではなく、それはワーキングメモリの容量に該当します。

 

・言語情報を1つしか認知できない

仮に、同時に複数の言語情報が存在する環境に、当事者が置かれたとします。

このコミュ障の場合ワーキングメモリの機能低下は起きていないので、認知対象のとするべき言語情報に注意を向けることはできます。

しかし、「マルチタスクができないという体質」であるため、複数の言語情報を認知できません。

 

ワーキングメモリの小容量化が引き起こす認知の問題は、通常の認知行為ならばこれだけなのですが、言語情報認知の量だけでなく、言語情報認知の中身にも悪影響を与えます。

 

・言語情報認知能力の悪影響

悪影響と書きましたが、簡単で短い構造の文、例えば名詞だけの文だとか、第1文型(主語と述語だけで構成されている状態)の文が相手ならば、ワーキングメモリが小容量であっても理解するのは容易です。

通常、言語情報を認知する際にも、言語情報の収集と言語情報の解釈のマルチタスクが同時に行われます。そしてこれらの行為は、限りなく同時に行わなければなりません。

しかし、ワーキングメモリが小容量である場合だと、マルチタスクができません。ゆえに、同時進行するべきこれら2つの行為を順次に行わざるをえないため、その結果タイムラグが生じます。このタイムラグが言語情報を理解するうえで致命的です。

コミュニケーションで扱う言語のかたちが、単語だけという場面はあまりありません。むしろ、往々にして複雑な構造を持つ「文」としての形を持っている場合がほとんどです。すると、この文が長くなるほど、言語情報を収集するべきタイミング(相手の言語情報の発信速度に準じる)と、言語情報を解釈する時間にタイムラグが生じ、「文」として理解ができなくなるのです。

 

以上が、「ワーキングメモリ容量障害型コミュ障」の真相です。

現在、研究途上である特異的言語障害のうち、少なくともワーキングメモリとの関係があると考えられる特異的言語障害は、この「ワーキングメモリ機能障害型コミュ障」だと私は考えています。

 

余談ですが、ワーキングメモリの容量と言語情報処理の関係をテーマとした記事を、後日リリースします。

 

 

第8 その他のコミュ障類型

これまでの紹介したコミュ障の分類は、言語認知や非言語認知という観点で行いましたが、他にもコミュ障はあります。

例えば、吃音や難聴。言語認知とは別に、コミュニケーションにかかわる器官の機能の異常が原因となって発生する障害です。

 

コミュニケーションを成立させるまでのプロセスは複雑です。それにかかわる部分の数だけ、障害はあるのです。

「大人の早期癒合症」とはなんだろう?

当ブログの名前の副題になっている「大人の早期癒合症」というコトバは、読者の皆さんにとって初めて見聞きする言葉ではないでしょうか。

それもそのはず、早期癒合症という病気は赤ちゃんの頃に発見されるべき病気なわけです。そこに「大人」という言葉がつくのは、逆説的です。

しかし、私のように成人になってから早期癒合症が発覚するケースも存在します。症状が見過ごされてきたという点において「大人の発達障害」と共通するので、あのようなコトバをつくりました。

 

今回は、早期癒合症と「大人の早期癒合症」の概要について、かんたんに紹介します。

 

 

目次

 

第1 そもそも早期癒合症とはなにか?

1 概要

赤ちゃんが生まれるときは産道を通るために、赤ちゃんのアタマを柔軟にする必要があります。そのため顔より上の部分は骨が一つに固まっていないのが通常です。そして成長するにしたがって大泉門や小泉門といった隙間が閉じていきます。こうして人の頭蓋骨は一つの強固な骨になっていきます。

一方で、頭蓋骨が早い時期に閉じることがあります。これが頭蓋縫合早期癒合症です。早くに閉じたために頭蓋骨の広がりが抑制されるので、頭蓋内の環境に悪影響を与えると一般的に考えられています。

発生頻度は1万人に4~10人*1。 

 

2 症状

頭蓋骨の中で脳が圧迫された状態だと頭蓋内圧が通常より高くなるので、以下のような症状が現れます。

・眼球突出

・嘔吐

・外転神経麻痺

・眼球のうっ血乳頭

また、併発する精神症状の現れ方は千差万別だそうで、

夜驚症

ADHD

言語障害

etc.

の原因になりうるといわれます。

 

3 早期癒合症の鑑別、治療

鑑別には、触診や頭蓋骨の3DCT映像、及び頭蓋内のX線写真の撮影を通して行われます。

一般的なレベルの早期癒合症は、頭蓋の変形は顕著です。それは素人目線でも外見ですぐに異常だとわかるほどです。

外見の改善、及び精神障害発生の抑止のために、脳神経外科及び形成外科が手術します。少なくとも現代の日本を含めた先進国では、早期癒合症の状態で成人に成長するということはありえないことです。(ただし後進国ではこの限りではない)。

 

第2 「大人の早期癒合症」について

1 概要

これまでは早期癒合症の概要を紹介しました。

実は、早期癒合症には軽度のものが存在しています。「軽度」とは、早期癒合の程度が軽いさまを意味します。厳密に言えば、一般的な早期癒合症と比べて、癒合するタイミングは遅いけれども、通常と比べると癒合するのが早い…とでもいうべきでしょうか。

 

前に記述したとおり、早期癒合症が年少の間に治療されるのは、外見ですぐに分かるほどの頭蓋骨の変形だからです。

では、もし仮に頭蓋が変形するほど早期に癒合していない場合はどうなるでしょうか?

 

もちろん、3歳時検診などの医師が気づくわけがないので、そのまま見過ごされてしまうでしょう。大人になってからようやく早期癒合症であることを知った私のようなケースはおそらく少数で、あるいはそのまま気づかないケースがほとんどでしょう。

 

これが「大人の早期癒合症」です。一般的に「軽度三角頭蓋」と表現されています。しかし、私のように前頭縫合と矢状縫合が早期癒合している場合もあり、「軽度早期癒合症」とい表現したほうが良いと私は考えます。

 

2 軽度三角頭蓋の治療をめぐる論争(リンク)

内容の詳細は以下の記事のなかで紹介しています。

 

 

ADHDとADDの相違点(ワーキングメモリの観点から)

1 ADHDはワーキングメモリの容量の問題ではない。

ADHDは中央実行系(=ワーキングメモリ)の機能障害です。ADHDにおける中央実行系機能の低下とは、神経伝達物質の伝達障害、あるいはその分泌異常によって引き起こされる抑制機能の低下を意味します。

もっとも、多動性や衝動性の症状は、中央実行系の「抑制機能」の低下によって引き起こされることは知られています。こうして発生した多動性や衝動性が、不注意性を引き起こすのではないか。

 

2 注意欠陥症状のみが認められる障害は、中央実行系の機能障害ではない。

仮に中央実行系の機能低下が原因だとしたら、抑制機能の低下につながり、行動に衝動性が現れ、その程度が著しくなれば多動的と評されるようになり、ADHDになるはずです。故に衝動性や多動性が認められず、不注意症状が認められる状態(いわゆるADD)の場合、中央実行系としての機能は万全であると考えられます。

注意欠陥症状とは、同時処理できる量の問題です。すると、原因として考えられるのは、「外側とのインターフェース」であるワーキングメモリの小容量化でしょう。

 

3 結論

ワーキングメモリの小容量化 → 注意欠陥症状(ADD)

ワーキングメモリの機能低下 → 注意欠陥多動性障害ADHD

脳内の情報処理機構(中央実行系)におけるワーキングメモリの役割

私のプロフィールの中でも紹介しているように、私は「ワーキングメモリ」という概念に強い関心を持っており、それについての学習をしております。

 

ワーキングメモリについて学習していくうちに気づいたことがあります。それは、「人間が持つ全ての認知機能」のなかで、重要な役割を担っているということです。

 

今回はそんなワーキングメモリに関する話をします。

 

  

 

第1 事前知識

1 中央実行系の部品の一つであるワーキングメモリ

冒頭で述べた「人間が持つ全ての認知機能」というのが、中央実行系と呼ばれる概念に該当します。

もう少し具体的に説明すると、人間が脳内で行う知的生産活動および情報処理活動を機能する主体としての役割を持つという、認知心理学によって定義づけられた概念です。少々雑な表現に戻りますが、「人間の思考そのもの」といっても良いでしょう。

ワーキングメモリは、その中央実行系の部品の一つです。

 

例えば、

中央実行系が機能しなければ、ワーキングメモリも機能しません。

一方でワーキングメモリの容量が小さいからといえ、中央実行系が機能していないとは限りません。

つまり、

「中央実行系」 ⊃ 「ワーキングメモリ」

以上のような図式、すなわちワーキングメモリは中央実行系の一部であり、その機能は中央実行系によって支配されているといえます。

 

中央実行系の機能については別の機会に紹介するとして、今回はこの一部であるワーキングメモリの機能、役割について紹介します。

その前に記憶について触れる必要があります。

 

2 短期記憶と長期記憶

記憶は、その持続時間の違いにより、長期記憶と短期記憶の二種類に分類できます。

 

・長期記憶

心理学的にいえば、エピソード記憶や手続き記憶、意味記憶が長期記憶に該当します。いわば、知識、論理、経験の積み重ねであり、論理性や知性の指標となる記憶とでもいうべきでしょう。その保存可能容量は無限です。

 

・短期記憶

例えば、人間は周りの状況に適応するために、外部からの認知および知覚した情報を処理しなければいけません。そのため、外部からの情報を脳内で処理できるかたちに変換する必要があります。そこで、変換された結果が記憶というかたちです。これを短期記憶といいます。

つまり短期記憶の内容とは、外部から入力された認知および知覚情報、および、外部へ出力する情報です。

その性質は、持続できる時間が短いという点です。短期記憶の情報が長期記憶へ昇華されるためには、海馬による精緻化リハーサルが必要です。

短期記憶の保存可能容量は人それぞれで、容量の場合によっては発達障害や精神症状と強い関係にあると私は考えています。

 

 

第2 (本題)ワーキングメモリの役割

ワーキングメモリの役割を説明するまえには、立ち位置や機能をそれぞれ紹介する必要があります。

 

1 情報処理の入力出力過程における立場

 外側↔ワーキングメモリ↔自己(長期記憶) 

 

ワーキングメモリは、自己の意識とその外側との中間に位置する「容器」です。

よって、自己の内面と外側との間にある媒体(インターフェース)としての役割を担っているといえます。

 

2 ワーキングメモリの機能: 短期記憶情報の保存先の領域

インターフェースとしての役割というのが、短期記憶として変換された情報の一時的な保存先容量という役割です。

 

その役割は2つの情報処理過程、すなわち、短期記憶へと変換された外部から入力された情報の一時的な保存先としての機能と、その逆、すなわち短期記憶へと変換された外部へと出力される情報の一時的な保存先としての機能です。

 

3 ワーキングメモリとパソコン

ワーキングメモリが持つ「短期記憶の貯蔵先としての機能」について身近なもので例えるならば、パソコンのメモリ、あるいはスマートフォンのRAM(Random Access Memory)に該当します。

 

ユーザーがなんらかの演算処理をするようにパソコンに命令を出したとします。すると、

①はじめに、外部から入力されたユーザーによる演算命令の内容をメモリに一時的に記録します。

②演算命令の材料にふさわしいプログラムデータ、あるいはメディアファイルを、記憶領域であるHDDから選別します。(ここまでが入力)

③選別されたデータをメモリに一時的に記録します。

④そして、ユーザーが命令した演算処理がキャッシュメモリの中で行われます。

⑤演算処理の結果がコンピュータから出力されます。

 

以上が、パソコンの入力および出力の演算処理の過程です。

パソコンのメモリの中で行われているプロセスは、①および③、④に該当します。すなわち、メモリはパソコンの情報処理活動のプロセスの末端に位置しており、ユーザーという外部とパソコンによる知的生産活動という内部のあいだに位置する媒体としての役割を担っています。

 

ワーキングメモリも同じで、こういった知的な作業をおこなうための記憶領域であることから、ワーキングメモリは「作業記憶」とも言われています。

 

ワーキングメモリが関わってくる中央実行系の機能に関する具体例は、後日投稿します。(予定では言語処理)

軽度三角頭蓋の手術を受けるべきか(軽度三角頭蓋の真実)

一般的な早期癒合症や症候群性早期癒合症に対しては、手術で解決するというケースがほとんどです。その一方で軽度三角頭蓋の場合は、沖縄県の下地先生による手術以外数えるほどの医療機関でしか行われていないという状況であり、そのうえ、残念ながら、主に日本児童青年精神医学会による軽度三角頭蓋の手術に対する批判は少なくないようです。論争そのものの考察は以下の記事の中に記載しております。  

 

また、某掲示板や某SNSを覗いてみると、軽度三角頭蓋の手術は受けないほうが良いなどといった否定的な意見が散見されます。

 

こうした状態ですと、お子様の頭蓋骨が早期癒合症、あるいは軽度三角頭蓋であることが運良く発見できたとしても、親御さんは手術を受けるべきか、または受けざるべきかという選択肢の間で悩まれるかと思います。

  

しかし、残念なことに、軽度三角頭蓋に関する真相が解明されていないため、肯定意見と否定意見の対立という混沌とした構図に陥っています。

 

そんななかで主張する私の考えとは、なんらかの症状が表れていれば軽度三角頭蓋の手術を受けるべきだということです。

 

ただ、手術をするしないを決めるうえで、軽度三角頭蓋が悪影響を与える部位とその機能を把握することが重要です。

私の仮説がその一助となれば幸いです。

 

目次

 

 

第1 自閉症スペクトラムとは無関係である

私の仮説ですが、まずは早期癒合症および軽度三角頭蓋と自閉症スペクトラムは一切関係がないことを理解してほしいです。

そのため、自閉症スペクトラムの根治を目的として軽度三角頭蓋の手術を受けてはいけません。このことは、日本自閉症協会が指摘しているとおりです。

 

  

第2 軽度三角頭蓋が引き起こす精神症状の正体

軽度三角頭蓋が精神症状を引き起こしていることは間違いありません。

それでは、いったい軽度三角頭蓋が引き起こす精神症状とはいったいなんなのでしょう?

その答えは、大脳皮質にあります。

軽度三角頭蓋になることで、通常の頭蓋骨に比べると、脳の表面の部位の大脳皮質への圧迫が強くなります。

その大脳皮質の機能というのが、中央実行系、すなわちワーキングメモリです。私は軽度三角頭蓋が悪影響を与えるのが、このワーキングメモリの容量であると仮定しています。

 

ワーキングメモリはマルチタスクや短期記憶力に関係する能力です。つまり、ワーキングメモリの小容量化は、同時に認識できる事柄の数の現象や、短期記憶容量の減少を引き起こします。具体的には以下のような症状が発生します。

 

・行動面の障害 : 注意欠陥症状(ADD)

・言語面の障害 : 特異的言語障害(SLI)、聴覚情報処理障害(APD)

 

下地先生は軽度三角頭蓋の症状を統計というかたちでリストアップしています。これらの症状の解析に関する内容は、以下の記事で紹介しています。

 

 

 

第3 精神症状と社会適合に関する問題

社会適合に関する問題が一番大きいです。

 

ワーキングメモリが持つ情報処理能力が極端に不得意になると、ひとことでいえば「要領の悪さ」や「にぶさ」が目立つようになります。

 

ワーキングメモリの小容量化は、ほんとうの意味での頭の良さ(知的生産活動)には影響しないと私は考えます。もし仮にそういった知的生産活動だけができる職業につける、という保障があるのでしたらよいのですが、そういった職業は一部の芸術や芸能だけしか該当しないでしょう。

 

人間社会を構成する職業のほぼ全ては、「知的生産活動の優劣」ではなく「情報処理活動」で評価されるというのが事実です。

こういったことから、情報処理活動が不得意になれば、人間社会で生活する上で圧倒的に不利になりますし、不当な評価をあたえられることになりかねないことを理解していただけると思います。

 

第4 身体症状を引き起こす可能性

現に私がそうなのですが、斜視や非びらん性胃食道逆流症に罹患しています。

これらの症状は、早期癒合症と間接的な関係にあると私は考えています。詳細は後日、新たな記事の中で紹介します。

 

第5 結論

以上のことをふまえると、私は軽度三角頭蓋の手術をうけることをおすすめします。

軽度三角頭蓋が引き起こすであろう、このワーキングメモリの機能障害があると、日常生活を送れても、「社会生活」を送るうえで不利であるというのが一番の理由です。

とはいえ、以上の内容は現段階ではあくまでも私の仮説に過ぎません。

早期癒合症、あるいは軽度三角頭蓋と精神症状との関係性については、病理学によってアプリオリに解明されていません。

 

近々これの病理が解明され、その是非が明らかになるときが来ることを願うばかりです。

 

私の症状についての記事は下の記事を御覧ください。

 

軽度三角頭蓋の症状の解析(下地先生提供の情報をもとにして)

まずはじめに、軽度三角頭蓋が引き起こす問題の本質は、大脳皮質が圧迫されたことによる中央実行系の機能障害であると主張します。いわゆる「ワーキングメモリの小容量化」です。

このことについての記事は近いうちに投稿します。

 

それでは今回は、下地先生が列挙した軽度三角頭蓋の症状の情報をもとにして、その症状を自分なりに解釈してみましたので、その詳細について紹介していきます。

 

 

 

 

 

ことばのおくれ(407例)

「有意語無しから、単語のみ、2語、3語の組み合わせ、会話が不十分、に至るまで様々です。また、何度も何度も同じことを繰り返すケースや、他人の話を聞こうとしない、他人の言葉の理解に困難がある子もいます。」*1

 

→ 全420例中407例と圧倒的に多いこの症状は、近年注目されてきている特異的言語障害(SLI)です。すなわち、中央実行系の機能障害に起因する言語障害であり、早期癒合症によって引き起こされていると私は考えます。

特異的言語障害の特徴として、複雑な統語構造の行使、理解がともに困難になります。そのため他人のコトバの理解が困難な状況になるのです。

 

多動症状(322例)

「家でもずっと動き回っている状態。親が手を放すと飛んで行ってしまうので、親御さんは、特にスーパーマーケットなどでの買い物時などは大変です。また、テレビも15分と見ることができない、交通信号を待てない、信号の意味が理解できない、高いところが好きで上って飛び降りる、そうした自分の行う行為について危険性の認識の無さなどがあります。」*2

 

→ 幼ければ幼いほど、大脳皮質による抑制機能が発達していないので、全ての子どもは衝動的であるといえます。上記の情報を読んだ限りでは、正直、これらの症状はすべての児童に当てはまる衝動性に起因する症状であり、全ての症状がADHDによる多動性に起因する症状であるとはいえないと私は考えます。あるいはストレス反応としての多動症状という可能性もあるかもしれません。

 

自閉傾向(267例)

「人と目を合わせない、合いにくい、よそよそしい態度(Aloofness)、相互依存が無い、他人を気にしない(時に両親ですら)、他児と遊べない、ある物事へのこだわりが強い、などがあります。」*3

 

→ 自閉症スペクトラムではないと私は考えます。

詳しく解析する際には、それぞれの症状をわけて考える必要があります。

・「他人と遊べない」、「人と目を合わせない」とは、中央実行系の機能障害に起因する外向性の未発達から発展した回避行動と考えます。

 

・「他人を気にしない」というのは、ワーキングメモリの少なさから由来する、マルチタスクの困難さがあると思います。なにかに没頭している状態だと余計そうなるかもしれません。

 

あるいは偶発的な自閉症スペクトラムが含まれている可能性もあります。

 

これらの症状の分析の詳細については、以下の記事の中で紹介していますので、ぜひ参考までに読んで下さい。

 

 

 

パニック・いらいら(179例)

「自分の意志に反することが起きると床に転がり込んで、常識では考えられないくらいの長い時間泣き叫んだりしますが、周りは何で泣いているのか理解できないなどがあります。」*4

 

→ 中央実行系の機能が不十分であると、ストレスの耐性が弱くなります。ゆえにストレス反応としてパニック・いらいらが起きていると私は考えます。

 

運動遅滞(114例)

「多くが筋緊張低下状態にある。歩くことができない、ふらふらする歩き方、年齢に応じた運動能力に欠けるなどが見られます。」*5

 

→ 中央実行系の機能障害に起因する運動障害で、同時に複数の部位を動かすといったマルチタスクの困難さが表れている症状であると考えます。

 

自傷行為(103例)

自傷行為のほとんどが頭を打ち付ける行為(head banging)です。自分の髪の毛をむしる子もおり、また、母親の腕を噛んだり、他人に頭突きをしたりする他傷行為をする子もいました。」

 

→ パニック・いらいらと同じだと私は考えます。考慮するべきなのはストレス反応が自己に向かっているか、あるいは他者に向かっているかの違いです。

 

すると、髪の毛をむしる抜毛症や「ヘドバン」といった自傷行為は、自己へのベクトルに進んでいるストレス反応であるといえます。

 

睡眠障害(77例)

「(最近気が付いたので、この数字はもっと多い可能性があります):ベッドに入ってから寝付くまでかなりの時間を要する。深夜、ぎゃーといきなり泣き出し大騒ぎする(夜驚 Night terrors)」*6

 

→ 夜驚症についての解析には自信がありません。

ただ、脳の圧迫による睡眠機能障害が起きると思われます。私の経験上、脳波に異常が発生している状態だと思われます。β波が出ている状態からα波が出ている状態に脳がシフトチェンジするのが困難です。