「封印」されしアタマのなかより(大人の早期癒合症)

頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)と容量性注意障害(聴覚情報処理障害)に関する当事者研究の記録です。主にワーキングメモリ(注意容量と音韻ループの関係)について研究しています。更新情報はツイッターで配信しています。

「聴覚情報処理障害」の問題点:その定義をめぐる論争についての論評 / 「聴覚情報処理障害」の狭義、広義

キーワード:聴覚情報処理障害の定義、発達障害ADHD自閉症スペクトラム、容量性注意障害

 

聴覚情報処理障害の診断上の問題点

上がる知名度と問題点…

聴覚情報処理障害は、近年になってようやく研究者の間だけでなく、一般の間にも浸透するようになりました。

それは、小渕千絵先生が執筆を手がけた以下の書籍が貢献しているところが大きいでしょう。 

きこえているのにわからない APD[聴覚情報処理障害]の理解と支援

きこえているのにわからない APD[聴覚情報処理障害]の理解と支援

インターネット上でもこの書籍がクローズアップされ、徐々にその概念の知名度は上がっていきました。そして現在では聴覚情報処理障害の専門医療機関では、多くの予約待ちにより、込み合っている状態とのことです。 

予約で混み合っている…とのことですが、診察のほうも前途多難のように思います。その根拠として、「聴覚情報処理障害」はまだ多くの問題点を内包する疾病概念だからです。

 

問題点その1:聴覚情報処理障害の評価方法が確立されていない

まず、聴覚情報処理障害を診断するために必要な基準となる、症状に対する評価方法が確立されていません。このことは聴覚情報処理障害の診断における重大な問題点であり、診断及び支援に混乱をもたらします。

APDに関しては原因や評価、支援方法などが確立されているとは言えず、医療機関教育機関での混乱も大きい*1

 

問題点その2:定義が決まっていない

聴覚情報処理障害の評価方法が確立されていない問題の背景には、聴覚情報処理障害の定義が未だに決まっていないという問題点があります。

現時点で聴覚情報処理障害の定義は、一応存在します。しかし、現行の定義に従うと聴覚情報処理障害に該当する精神症状が多く存在することになります。そこで、聴覚情報処理障害の定義を見直し、厳密に定義するべきと考える人が、私を含めて存在しています。この見解の内容は後述します。

現在も、音声言語医学の専門家の間で聴覚情報処理障害の定義の内容に関する論争が継続中です。

聴覚情報処理障害に関しては,研究端緒から半世紀を超しているにもかかわらず,用語や定義についても議論が絶えない。臨床像や対処法等では明確な点が多かったにもかかわらず,原因論や検査方法などは問題点が数多く指摘されてきた。(太田、八田, 2010 抄録)

 

混乱を生む原因不明の聴覚情報処理障害の存在

これまでに紹介した聴覚情報処理障害の診断上の問題点が発生する根本原因とは、聴覚情報処理障害に、原因が不明であるサブタイプが存在していることです。 

成人例のうち6名については、明らかな背景要因が考えられず原因不明に分類した。…これらの対象者については、明らかな診断が行われていなくとも記憶や注意の面には弱さが見られると考えられる。 *2 

病理が不明であれば、支援のハウトゥーを開発できませんし、また、病理が不明であるこの疾病の定義を決めるというのは「悪魔の証明」のようなものです。すると、なぜ、そもそも「聴覚情報処理障害」が存在するのか、という疑問が出てきます。

 

聴覚情報処理障害の広義と狭義

聴覚情報処理障害のサブタイプとして、ADHD自閉症スペクトラム障害、原因不明のものが含まれることから、聴覚情報処理障害の本質が症状概念であり、疾病概念ではないといえます。このことは研究者である小渕先生も「聞き取り困難を抱える症候群」と表現していることからも明らかです。すると、シンプルに「聴覚情報処理障害」と表現した場合、どのタイプを指すのかがわからない事態に陥ってしまいます。

そこで当ブログでは、聴覚情報処理障害を、以下の2つの概念で分類します。

  • 「広義の聴覚情報処理障害」

例:ADHD自閉症スペクトラム障害、ストレスによるうつ病の前兆

  • 「狭義の聴覚情報処理障害」

厳格な定義づけによるもの。聴覚情報処理機能の低下症状を引き起こす、精神障害であるものの原因が不明である。上記のものを除く。

このうち、現行の聴覚情報処理障害の定義は、「広義の聴覚情報処理障害」の内容が適用されています。

 

「聴覚情報処理障害」の存在価値

「聴覚情報処理障害」という疾病概念の存在理由とは、原因不明の聴覚情報処理障害のサブタイプに名辞を与えることにほかなりません。

通常、医学で扱われる疾病概念の定義の内容は、その病理で説明されます。

しかし、精神医学で扱う精神障害は、必ずしもそうであるとは限りません。たとえば、統合失調症に代表される病理不明の精神障害の場合、定義の内容は客観的に認められる精神症状のみです。

聴覚情報処理障害もこの例のひとつであることが明らかです。臨床現場に立つ研究者にとって「有意」な精神症状であるために、精神障害概念としての提唱の必要性が生まれたのでしょう。

そこで、「原因不明・病理不明の精神障害に起因する聴覚情報処理機能の低下」を表現するための手段として、「聴覚情報処理障害」が構築されたのであれば、納得がいきます。

 

私が現行の聴覚情報処理障害の定義に反対する理由 

1 聴覚情報処理障害の定義が広すぎるゆえ、実体像がつかめない

音声言語医学が提唱している聴覚情報処理障害の定義は、広義の聴覚情報処理障害です。

音声言語医学が採用している聴覚情報処理障害の該当範囲が広すぎることになるので、その観念は抽象的なものになるといわざるを得ません。

「狭義の聴覚情報処理障害」と「広義の聴覚情報処理障害」とでは、たしかに「雑音下でのコミュニケーションの困難性」という共通点を持ちます。しかし、それはあくまで結果論であって、雑音下でのコミュニケーションの困難性に至る原因は、それぞれ全く異なります

 

2 広義の聴覚情報処理障害を設置することの無意味さ

広義の聴覚情報処理障害の原因疾患に該当する精神障害は、すでに定義が確立された精神障害です。

まず、「ADHDによる聴覚情報処理機能低下」について、わざわざ「聴覚情報処理障害」と表現する必要性はありません。単にADHDの一症状と表現することで済む話です。

つぎに、「自閉症スペクトラムによる聴覚情報処理機能低下」について検証してみますと、聴覚過敏や解離症状が原因として挙げられます。ですので、聴覚過敏や解離症状が聴覚情報処理機能に悪影響を与えた、と表現することで済みます。

 

広すぎる聴覚情報処理障害の定義を厳格化せよ

「広義の聴覚情報処理障害」を採用しているままでは、聴覚情報処理障害は特定不能の症状概念のままであることには変わりはなく、疾病概念として失格です。

では、「聴覚情報処理障害」を疾病概念へと昇華させるにはどうすればよいか?

まず、「聴覚情報処理障害」の定義を「狭義の聴覚情報処理障害」に変えるべきでしょう。聴覚情報処理障害に対し厳格な定義付けを行い、発達障害による聴覚情報処理機能の低下や、そのうつ病などによる心因性難聴から分離するべきです。

 

狭義の聴覚情報処理障害のひとつは「容量性注意障害」

しかし、このまま狭義の聴覚情報処理障害の定義に移行したとしても、その発生メカニズムが不明であるために、疾病概念に昇華できません。ですので、狭義の聴覚情報処理障害の病理を解明することは急務であるといえます。

現時点での音声言語医学の研究においては、狭義の聴覚情報処理障害の原因および病理は未解明です。

以下は私見ですが、原因不明の「狭義の聴覚情報処理障害」について、容量性注意障害に起因する言語機能低下(特異的言語発達障害)のうち、聴覚情報処理面における問題と結論付けています(下に詳細記事)。
 

参考文献

小渕千絵「聴覚情報処理障害の評価と支援」, 2015

www.jstage.jst.go.jp

 

*1:小渕, 2015, p. 302

*2:小渕, 2015, p. 303

軽度の頭蓋骨縫合早期癒合症の当事者に対する手術の効果についての考察 / 早期癒合症の治療における手術対象年齢制限の根拠

今回の記事の目的は以下の通りです。

  • 下地武義先生の新著に関する情報の紹介
  • 早期癒合症手術で設定されている年齢制限の根拠の紹介
  • 成人当事者に対する早期癒合症手術の効果の検証
  • 軽度三角頭蓋の外科治療に神経発達理論を適用することに対する問題提起

キーワード:軽度三角頭蓋、発達心理学、スキャモンの発育曲線、大脳皮質、容量性注意障害、高次脳機能障害

下地武義先生の著書「三角頭蓋奮闘記 (あきらめない この子たちに未来はある)」に関する情報

頭蓋縫合早期癒合症および軽度三角頭蓋にかかわる方々は見逃せません!

下地武義先生による新著が、発刊されました。その内容は肝心の軽度三角頭蓋やそれの手術に関するものになっているようです。

私はまだ読んでいないので、感想レポートは別の機会で紹介します。

私が気になったのは、この書籍の「推薦の弁」のひとつに、以下のような文章がありました。

子どもの発達障害で悩んでいる方々は一読される価値があります。希望が出てくるかも知れない。しかし、子どもが成長した後で読まれた方は悔いるかもしれません。もう少し早く知っていたら……と。*1

外科治療の対象年齢は制限されている

早期癒合症は小児慢性特定疾病として認知されています。現時点では、児童に対する手術のみが行われており、成人に対する手術例が存在しません。というのも、脳神経外科学によって規定されている早期癒合症の治療方針において、手術に年齢制限が設定されているためです。 

このことは軽度三角頭蓋の外科治療においても同様で、手術適応年齢に制限が設定されています(2018年現在)。具体的には、軽度三角頭蓋の手術の対象年齢を9歳*2までに設定されています。

「年齢制限」の根拠:自閉症スペクトラム障害発育曲線(発達心理学

早期癒合症の外科治療の手術適応年齢の制限について、小児慢性特定疾患だから、手術適応年齢が制限されているという論理ではありません。

臨床研究で結論づけられた、早期癒合症の精神症状発症のメカニズムは、以下の通りです。

  • 早期癒合症の頭蓋骨の狭小化は、脳組織を圧迫、頭蓋内圧亢進を引き起こす。
  • 頭蓋内圧亢進は、大脳辺縁系の神経発達に悪影響を与える。
  • 早期癒合症の精神症状である精神運動発達遅滞は、頭蓋内圧亢進が引き起こした、大脳辺縁系の機能低下である。

そして、精神運動発達遅滞の原因となっている早期癒合症の治療の時期の根拠として、発達心理学の「スキャモンの発育曲線」の内容を紹介します。

f:id:nasubinbin:20180815174716p:plain

その内容とは、「脳内の神経細胞の発達は、幼少期がピークであり、年を重ねるにつれて神経発達の「勢い」が緩やかになる」というものです。

早期癒合症の臨床研究では、その精神症状は大脳辺縁系の機能低下および神経発達障害である精神運動発達遅滞と結論付けられています。この理論に従うと、幼少期の間に早期癒合症の病態を解消しなければ、脳内の神経発達に悪影響が残る」という結論を導き出されることになります。

逆のことを言えば、成人以降に手術を行っても効果がないという見解が形成されますつまり、頭蓋内圧亢進による精神運動発達遅滞が引き起こされているような、通常程度の早期癒合症の場合では、幼少期に手術を行わなければ、大脳辺縁系の神経発達」という面に限れば、徐々に効果が薄くなるということです。

(執筆中)早期癒合症によるミラーニューロン圧迫に起因する自閉症的精神症状(自閉症スペクトラム障害全般ではない / つまり外因性精神障害自閉症スペクトラム障害

 

年齢制限の問題点

1 精神医学および脳神経外科学は、「大脳皮質の機能低下」を無視している

物理的な観点から想像すると、早期癒合症によって狭小化した頭蓋骨に圧迫されて機能低下を引き起こしている脳部位は、大脳辺縁系だけであるわけがありません。実際、私の症例において認められることですが、圧迫された大脳皮質の機能低下に起因する容量性注意障害も存在することは間違いありません。

軽度三角頭蓋の症例で多く報告されている症状の原因は、大脳皮質の機能低下による容量性注意障害であって、頭蓋内圧亢進による辺縁系機能の低下によって引き起こされる神経発達障害ではないと私は考えています。

早期癒合症と大脳辺縁系の神経発達障害の関係に関する言及は、先行研究で多く存在しています。その一方で、2018年現在において、所属する学会大会のなかで当方が発表した当事者研究以外に、大脳皮質の機能低下と早期癒合症の関係に言及した先行研究は存在していません。

2 臨床研究の不十分性

 臨床研究では、大脳辺縁系の機能低下のみに焦点が当てられているわけです。大脳辺縁系については、脳の可塑性や神経発達理論に基づいて、成人に対する手術の予後が不良であることを予測しています。

しかし、大脳皮質の機能低下については言及されていないため、手術で効果に関する情報が収集できていないのです。

成人当事者に対する手術の効果に関する研究(というより、成人に対する手術そのもの)は、これまでに行われたことがありません。このような状況下で、成人当事者の手術の効果を全否定する脳神経外科学の姿勢は、成人当事者の治療実績というエビデンスが存在していないという点で根拠に乏しく、早計であると評価せざるを得ません。

「成人当事者に対する手術」は小児医学からの否定的見解を退けられる

早期癒合症の成人患者に対し、開頭減圧術を行うべき根拠は、病理学的根拠だけではありません。軽度三角頭蓋の手術に対する否定説を一つ退けることが可能になります。

現在、軽度三角頭蓋の手術は「美容整形手術」として行われておりますが、軽度三角頭蓋の手術に対する否定説は、様々な科目の医学関係者から上がっています。そのうちの一つである小児科学の否定説の内容は、軽度三角頭蓋の手術の対象年齢が幼年であることに対する批判です。詳細は以下の「軽度三角頭蓋の手術をめぐる論争」の記事をご覧ください。

臨床研究としての性格を持つ軽度三角頭蓋の手術を、成人患者に対して行うようにすれば、少なくとも小児科学の否定説を退けられます。なぜなら、患児に対する場合とは異なり、手術の承諾を成人患者本人に求めることが可能だからです。

軽度三角頭蓋であれば、精神運動発達遅滞ではないケースが多いので、制限行為能力者ではないので、承諾を求めることが可能です。患者本人にとっても強い希望になること、そして下地武義先生にとっても臨床研究のデータを集めることが可能になるので、成人当事者に対する開頭減圧術の施行は、患者と研究者の利害が一致するのです。

早期癒合症に起因する容量性注意障害は、高次脳機能障害である

上記の記事リンクで紹介しているように、「軽度三角頭蓋の患児に対する外科治療」は、残念ながら、各方面の医学関係者から正当性がないと評価されてしまっているのが現状です。

しかし、もし、成人当事者に対し手術を施すという内容の臨床研究を行い、容量性注意障害の解消という効果を実証したならば、患児に対する手術の正当性を確保することが可能になります。早期癒合症に起因する容量性注意障害、およびこれの解消効果を持つ早期癒合症の手術に、神経発達理論を当てはめるという論理そのものが誤っていると私は考えています。

通常の早期癒合症で見られる精神運動発達遅滞の場合、その手術は大脳辺縁系の神経発達障害の解消と神経発達を促すという目的を持つため、これに神経発達理論を当てはめて、神経発達の予後という観点から年齢制限を設けることは正しいです。

一方の、軽度の早期癒合症(軽度三角頭蓋)で見られる容量性注意障害は、脳の損傷ともいうべきものであり高次脳機能障害です。容量性注意障害の解消という効果のみに焦点を当てた場合、通常の早期癒合症においても年齢制限をかけることは不適切といえます。

軽度三角頭蓋の患者に対する外科治療において年齢制限を設定することは、容量性注意障害の解消効果を持つ手術としての意義を失うことにつながりかねないといえます。

結論

  • 軽度の早期癒合症でみられる精神症状のひとつである容量性注意障害は、脳組織への圧迫に起因する高次脳機能障害である。
  • 軽度三角頭蓋の外科治療は、容量性注意障害の解消効果を持つ。
  • 神経発達理論を根拠に、軽度三角頭蓋の外科治療に年齢制限を設けることは、不当である。
  • 成人当事者に対する早期癒合症の外科治療は、精神症状のうち、容量性注意障害の解消という効果を実現できる可能性は、十分に存在する。
  • 「成人当事者に対する外科治療」という内容の臨床研究を実施し、容量性注意障害の解消効果を確認することで、「軽度三角頭蓋の患児に対する外科治療」の正当性を実証可能になる。

*1:下地武義 三角頭蓋奮闘記, 諏訪書房, 2018, P. 198 (元立正大学心理学部教授 柿谷正期氏による推薦の弁)

*2:

www.geocities.jp

頭蓋骨の形が首猫背の原因? 頭蓋骨縫合早期癒合症の「頭皮の下垂」が引き起こす姿勢の変化

 「首コリ」という言葉をご存じでしょうか?

肩こりは有名ですが、実は首の筋肉もこります。

その原因のひとつに、首猫背が挙げられます。携帯電話を操作している時に同様の姿勢になることから、「スマホ首」とも呼ばれています。

実は、私も首猫背です。しかし、私の場合は首猫背の姿勢をとらざるを得ない状況を抱えています。そして、その原因は「頭蓋骨縫合早期癒合症」という頭蓋骨の疾病です。

今回の記事では、

  1. 「あごの皮膚のたるみが首猫背を引き起こすケース」における「あごの皮膚のたるみ」の原因
  2. 早期癒合症による「頭皮の下垂」から首猫背をとるようになるまでのメカニズム

の以上の2つを紹介します。

キーワード:首コリ、頚性神経筋症候群、二重あご、喉仏、早期癒合症、一重まぶた

首猫背は万病のもと

首猫背の姿勢をとっていると、首コリになります。この首コリが不定愁訴を引き起こします。首コリによって発生する神経症的症状については「頸性神経筋症候群」と名付けられています。

また、場合によっては首猫背は頸椎ヘルニアを引き起こします。そうなると対症療法のみでは収まらなくなり、場合によっては手術が必要になります。

どちらの疾病も自律神経を脅かすもので、頭痛、手足のしびれといった自律神経失調症で見られる症状が現れます。

このように、首猫背は自律神経失調症を引き起こす万病の元なのです。 

 

疑問:なぜ首猫背になるのか?

首猫背をせざるを得ない場合もあるのでは

首猫背の姿勢は、体幹が弱い人にとっては何も考えなくても維持できる姿勢なので、多少楽かもしれせんが、良いことは全くありません。

にもかかわらず、なぜ多くの人々は首猫背になっているのでしょう。これには理由があると私は考えました。

まず、首猫背になる人には、

  • 自分自身の姿勢の問題点についての自覚を持っていない人
  • 首猫背の姿勢をとらざるを得ない人

の2種類存在すると考えられます。

このうち特に後者の方のパターンにおける、首猫背の原因要素になる身体的特徴を紹介していきます。

 

首猫背と「あご」(「二重あご」)

首猫背と切っても切り離せない関係を持つ症状が、二重あごです。併発するといってもよいでしょう。

 あごを引くと二重あごになってしまう、首のシワやたるみが気になるという人も、猫背が原因かもしれません。猫背特有のあごを突き出す姿勢は、首の後ろを縮める代わりに、前側を異常に引き伸ばすからです。ゴムと同じで、伸ばされっぱなしでは皮膚も戻る力を失い、たるんでしまいます。

日本経済新聞HP内の記事より引用*1

上記の内容を要約すると、「首猫背 → あごの下の皮膚が伸びる → 二重あご」という構図で示されます。

しかし、実際には首猫背と二重あごは相互的な因果関係にあります。すなわち、「ある原因によって二重あごになり、首猫背の姿勢をとっている」というケースもありうるのです。詳細は、後ほど説明します。

 

首猫背とのどぼとけ

大げさな表現ですが、二重あごになっている状態では、あごに位置する皮膚が喉に覆いかぶさるようになります。

特に男性の場合は顕著で、存在するはずの喉仏が隠れます。

すると、通常の姿勢を維持するのが困難になり、首猫背の姿勢が固定化されます。

 

首猫背と「まぶた」(眼瞼下垂)

上まぶたを動かす神経がマヒして発生する「眼瞼下垂」という疾病があります。

まず、上まぶたの面積が増大します。そして、増大した分だけ視界の上半分が遮られるため、下半分の視界で全体を見るために頭を上げるような姿勢をとるようになります。

この姿勢こそが首猫背です。

努力してまぶたを開いているのが「代償期」、もはや努力しても開いていられないのが「非代償期」です。代償期では眼瞼挙筋・ミュラー筋・後頭前頭筋を努力して縮めるようにすることが、頭痛・肩こり・疲労の原因となります。大きな目をしているので診断は難しいのですが、二重の幅の拡大、上まぶたのくぼみ、舌の縁のギザギザ、猫背、眉毛の位置の上昇、額のしわ、三白眼などが特徴的です。非代償期になると診断は容易で、まぶたが瞳孔にかぶさるので、いつも顎を上げて見るようになります

愛知医科大学形成外科HP「腱膜性眼瞼下垂の治療」より引用*2

以上の内容を構図としてまとめると、「眼瞼下垂による視界不良 → 首猫背」となります。

 

二重あごになる原因はなにか(?→二重あご→首猫背)

ここからが本題です。

「ある原因によって二重あごになり、首猫背の姿勢をとっている」というケースにおける、二重あごを発生しうる原因要素を挙げていきます。

1 パターン①:肥満

これは一般的な例です。

二重あごの中に脂肪が詰まっているのが特徴です。このことから、肥満になったときに発生する二重あごは、「脂肪の段差」というべきでしょう。(この形容の意図とは、後述の「頭皮の下垂」による二重あごとの差別化を図っています。)

この場合、首猫背にした方が楽です。逆にあごを引くと苦しいです。

とくに男性の場合はのどぼとけがあるため、通常の姿勢ではあごの脂肪に圧迫され苦しくなります。その結果、首猫背の姿勢が固定化されるというわけです。

以上の内容をまとめると

肥満 → 二重あご → 首が脂肪に圧迫される → 首猫背

という構図になります。

  

2 パターン②:「頭皮の下垂」

二重あごになる原因は、肥満以外にも存在します。

例えば、一般に知られているのが老化です。老化は頭皮に限らず皮膚全体の下垂を引き起こします。 すると、行き場をなくした余剰部分の頭皮は、重力の影響であごの下に集中します。これが「頭皮の下垂による二重あご」です。

特徴として挙げられるのは、首に覆いかぶさっているのはたるんだ皮膚だけであり、その皮膚の中には脂肪がないことでしょう。ですので、頭皮の下垂によるあごの皮膚の余剰部分は、厳密には「二重あご」とは異なるものです。

以上の内容をまとめると

「頭皮の下垂」 → 「二重あご」 → 首があごの皮膚に圧迫される → 首猫背

 という構図になります。

 

「頭皮の下垂」を引き起こす疾病:頭蓋骨縫合早期癒合症

1 頭蓋骨縫合早期癒合症とは

「頭皮の下垂」を引き起こす原因に老化とは別に、頭蓋骨縫合早期癒合症という疾病が挙げられます。頭蓋骨縫合早期癒合症は 、頭蓋骨が狭小化する病気です。

頭蓋骨の体積が狭小化するので、同時に表面積も小さくなります。

すると、本来の広さを保っている「頭皮」(頭蓋骨全体を覆う皮膚を指します)に余剰部分が発生します。その結果、余剰部分となった頭皮は、重力の影響であごに集中するようになります。こうして二重あごになります。

早期癒合症による頭蓋骨の狭小化→ 頭皮の余剰部分発生→ 重力により皮があごに集まる

 

2 (編集中)あごの部分の現物写真

 

3 「頭皮の下垂」による悪影響① 変化する髪の毛の生え癖

早期癒合症による頭皮の下垂の存在を示す所見は、髪の毛の生え癖にも表れています。頭蓋骨が狭小化したことで、毛の生える方向と髪の毛の生えている頭部の位置が一致していないため、変な位置にボリュームのある髪型になっています。

 

4 「頭皮の下垂」による悪影響② 一重まぶた

実は、早期癒合症による頭皮の下垂は、「一重まぶた」という形でも表れています。

目を覆っている、上まぶたの皮膚の量が多くなると、二重まぶたにしたときにより多くの皮膚を巻き込む必要があります。

すると、まばたきしたときに眼球との摩擦が強くなるため、眼球が傷付きやすくなります。ただ、眼球が傷つく前に痛みを感じるので、一重まぶたを続けるようになります。

 

5 一重まぶたによる視界不良が首猫背を引き起こす可能性も…

ちなみに、一重まぶたが首猫背を引き起こしているという可能性もあります。これは眼瞼下垂による首猫背と似たメカニズムで、一重まぶたも上半分の視界が遮られるので、下半分の視界を見るために首猫背の姿勢をとるようになります。

 頭皮の下垂 → 一重まぶたによる視界不良 → 首猫背

 

「頭蓋骨縫合早期癒合症」が引き起こす諸症状、判別方法

 これに加え、頭蓋骨縫合早期癒合症は脳にも悪影響を与える疾病であり、身体症状精神症状も現れます。

頭蓋骨縫合早期癒合症は、「小児慢性特定疾病」として定められていますが、私を含め、成人でも軽度の頭蓋骨縫合早期癒合症の当事者がいることは確実です。実際、著名人でも早期癒合症と思われる方がいます。

もしかしたら、この記事を読んでいるあなたの首猫背の原因は、早期癒合症である…かもしれません。

下に、早期癒合症の判別方法についての記事リンクを掲載しました。ぜひご覧ください。 

 

まとめ:頭蓋骨縫合早期癒合症から首猫背の発生まで

頭蓋骨縫合早期癒合症 → 頭皮の下垂

  • ↳ 「二重あご」(あご下の皮膚増量) → 喉仏が苦しい → 首猫背
  • ↳ 一重まぶた → 視野の狭小化 → 首猫背

以上のことから、頭蓋骨縫合早期癒合症による「頭皮の下垂」は、まぶたあごに作用し、首猫背の姿勢をとらざるを得ない状況をそれぞれの問題が形成しているといえます。

斜視と軽度発達障害の関係についての論考:「原因は頭蓋内圧亢進で、グレーゾーンは容量性注意障害か?」

「軽度発達障害児における眼疾患の検討」で記載されたデータを参照しながら、斜視と「軽度発達障害」の関係性について考察しました。(キーワード:頭蓋内圧亢進、早期癒合症、グレーゾーンとは、容量性注意障害 )

序論

  • 頭蓋内圧亢進時に、斜視と精神症状が併発する。
  • 頭蓋骨縫合早期癒合症(以下、早期癒合症)は、基準値以上の頭蓋内圧亢進を引き起こす。
  • 軽度の早期癒合症は、基準値以上の頭蓋内圧亢進を引き起こさない。しかし、脳組織への圧迫は存在しており、これが大脳皮質の機能低下、および斜視を併発させる。
  •  斜視と併発する「軽度発達障害」(グレーゾーン)とは、「大脳皮質の機能低下」に該当する容量性注意障害である。そして、容量性注意障害は高次脳機能障害であり、発達障害ではない。

斜視と「軽度発達障害」の関係についての先行研究

斜視と発達障害の関係について言及している研究は、過去に行われています。その研究が以下のものです。 

 この研究では、「軽度発達障害を抱える人物に斜視が併発する確率が高い」という結論を、統計データから導き出しています。

「軽度発達障害」の意味

この言葉と同じ使われ方をしている概念として、「グレーゾーン」や「特定不能の広汎性発達障害」などの表現が存在します。

実は、DSM-5による精神障害概念ガイドラインには、これらの概念は存在しません。ですので、精神科においても正式な診断として用いることはできないはずです。

厳密にいえば、定義づけられている発達障害ではない精神症状を指します。すなわち、ADHD自閉症スペクトラム障害学習障害といった精神障害には当てはまらない精神症状、あるいは症候群が、「軽度発達障害」に代表される不特定概念を用いて説明されています。

斜視は「軽度発達障害」との因果関係をもたない

先に結論を言うと、斜視が「軽度発達障害」を引き起こすだとか、あるいはその逆のことは、ありえません。

たとえば、株式会社Litalicoのウェブサイトでは、上記の論文をベースに斜視と発達障害の関係について言及している記事があります。

発達障害の特徴を示す子どもの中には、キャッチボールが苦手だったり集中力が続かなかったりという症状を持つ子もいます。このような症状には、斜視を含めた目の病気が隠れていることもあります。

斜視には遠近感や立体感をつかみづらいという症状があります。遠近感がうまくつかめないと、ボールはキャッチできません。物が二重に見えたり立体感がつかめなかったりすると、折り紙やお絵かきも疲れてしまいます。二重に見えることで、学習障害(LD)に見られる文の読み書きの苦手も起こります。

斜視を含めた目の病気には「見る力」を弱めてしまうものもあります。斜視であっても視力は良いというケースも珍しくありません。

もちろん、発達障害による症状と斜視を含めた目の病気による症状が混在していることもあります。発達障害のある子どもの困難に、目の病気が関わっている可能性があることも見過ごせません。

この記事の中には、学習障害にみられる文の読み書きの苦手」という表現を用いた意図は不明確ですが、これは誤解を生みやすい表現です。

注意するべきことは、「斜視による文の読み書きの苦手」は「学習障害」ではないということです。本来ならば「文の読み書きの苦手という学習面での悪影響」というべきでしょう。

たしかに、斜視による二次障害(眼精疲労など)により学習能力などの低下が起きる可能性は十分にあります。しかし、それは単なる悪影響であり、発達障害とは全く異なります。

「斜視が発達障害を引き起こす」という現象は病理学的にも考えられません。

斜視と精神症状を引き起こす「頭蓋内圧亢進」

これまでは、斜視だから「発達障害」になるとか、「発達障害」だから斜視になるという因果関係はあり得ない、という内容でした。しかし、精神症状と斜視の併発率が高いという研究結果があることから、斜視と「軽度発達障害」の関係の存在を否定できません。

実際、医学的にエビデンスとして認められている、精神障害と斜視の両方を発生させる「現象」があります。

それは、頭蓋内圧亢進です。

頭蓋内圧亢進が斜視を引き起こす病理(外転神経麻痺)

斜視は、視神経の麻痺によって発生します。

視神経は、脳内の長い距離を走る運動神経です。ゆえに脳内環境の変化の影響を最も受けやすい運動神経なのです。頭蓋内圧亢進のような脳内部の圧力が上昇すると状態ですので、視神経が圧迫される、というのは想像に難くないでしょう。

頭蓋内圧亢進を引き起こす症例の一つに、脳内出血を例にあげましょう。このとき識障害と同時に、内斜視も現れます。頭蓋内圧亢進によって、圧迫された外転神経が麻痺するためです。これを外転神経麻痺といいます。

ちなみに手術で頭蓋内圧亢進が解消されると、麻痺していた視神経の機能が回復するので、意識障害とともに外転神経麻痺も根本的に治癒します。

頭蓋内圧亢進による精神症状

急性的な頭蓋内圧亢進による精神症状(脳卒中脳挫傷など)

頭蓋内圧亢進が急性的であるか、あるいは慢性的であるかによって、頭蓋内圧亢進による精神症状の現れ方が異なってきます。

先述した脳内出血は頭蓋内圧亢進のうち急性症状のほうに該当します。急性症状とは通常の脳の状態から急速に頭蓋内圧亢進が悪化するものを指します。精神症状は、「前頭葉徴候」に代表される意識障害が発生します。

慢性的な頭蓋内圧亢進による精神症状(早期癒合症)

一方の慢性的な頭蓋内圧亢進には、頭蓋骨縫合早期癒合症や水頭症が該当します。慢性的な頭蓋内圧亢進は辺縁系の神経発達に悪影響を及ぼし、その結果、多動を伴う「精神運動発達遅滞」が認められるようになります。この精神症状は見方によっては「発達障害」と評価することも可能です。

臨床研究では、早期癒合症の手術の効果は以下の通りです。

  • 頭蓋内圧亢進が解消される。
  • 多動症状が解消される。
  • 手術時の年齢が早ければ早いほど、神経発達の悪影響を防ぐことができ、知能面の発達が見込められる。

 しかし、斜視との関係性を疑われる精神症状は「軽度発達障害」でした。これに対し、頭蓋内圧亢進時の精神症状である「精神運動発達遅滞」は、「軽度発達障害」という表現に当てはまらないほど重篤な症状を呈します。

おそらく、冒頭の研究で報告されている「軽度発達障害」と斜視の併発は、頭蓋内圧がさほど亢進していない軽度の早期癒合症の場合でみられる、斜視と精神症状(≠精神運動発達遅滞)の併発に一致すると思われます。

早期癒合症には軽度のものが存在する

これから説明することは、ほとんど知られていないことというよりも、少なからず当事者が存在していたとしても、自覚していないことがほとんどだと思われます。

頭蓋内圧亢進を発生させる早期癒合症や水頭症といった頭蓋骨の変形を伴う疾患は、外見的特徴が素人でもわかるほど顕著なものであるため、治療の機会を逃すことはめったにありません。

しかし、実際に存在する軽度の早期癒合症は、専門医以外の医療従事者の間では認知されていません。そのうえ患者自身にとっても気づきにくい特徴を持つため、治療を受けていないまま、早期癒合症による身体症状や精神症状が現れている状態で毎日をすごしている人が多く存在すると私は推測しています。

斜視と併発する「軽度発達障害」の正体:容量性注意障害

頭蓋内圧がさほど亢進していない軽度の早期癒合症においても、脳組織を圧迫していれば、精神症状が発生します。

その精神症状とは、頭蓋骨に圧迫された大脳皮質の機能低下に起因する、容量性注意障害です。

そして、すでに説明した通り、頭蓋骨に圧迫されているような状態では斜視も現れます。

このことから、斜視と併発する「軽度発達障害」とは、容量性注意障害であるという結論に至ります。
頭蓋内圧亢進が基準値未満だったとしても、容量性注意障害、および斜視が併発する可能性は存在します。*1

結論、斜視と併発する「軽度発達障害」は、容量性注意障害を示すものと私は考察しています。

容量性注意障害は高次脳機能障害である

しかし、ここで注意点があります。それは、容量性注意障害は、高次脳機能障害の一つであり、発達障害ではないことです。

軽度発達障害やグレーゾーン、特定不能の広汎性発達障害という疾病概念自体、実体がないものであり、発達障害高次脳機能障害の線引きが難しいし、不明瞭なんですよね。

というのも、生まれたときから高次脳機能障害を発生させうる疾患(外因性精神障害)を抱えている場合、神経発達や知能発達に悪影響を及ぼすという意味で発達障害と類似の問題が認められるようになるためです。

斜視の種類は問わない

早期癒合症と併発している斜視は、種類を問いません。内斜視もあれば外斜視もあります。

早期癒合症による頭蓋内圧亢進が斜視を引き起こす病理についての詳細は、以下の記事で扱っています。 

*1:リンク先の「軽度早期癒合症の悪影響」の項を参照いただきたい。

人の話を聴き取れない、理解できない聴覚情報処理障害(APD)は何科で診断できる? / タイプ別診断チェックリスト(ADHD, 自閉症スペクトラム障害, 容量性注意障害)

聴覚情報処理障害を診断できる専門の施設に関する情報、および聴覚情報処理障害のタイプ別診断チェックについての記事です。(キーワード:ADHD、聴覚過敏、容量性注意障害、特異的言語発達障害、口下手) 

聴覚情報処理障害の定義と原因疾患(別記事リンク)

このページで紹介されている聴覚情報処理障害についての情報(聴覚情報処理障害のタイプ、メカニズムの観点)は、以下の記事のなかで導き出された考察をもとにしています。 

この記事の内容を要約しますと、以下の通りです。

  • 音声言語医学のなかでは、「聴覚情報処理障害」という概念の定義が定まっておらず、論争は2019年現在に至るまで続いている。
  • 原因不明の聴覚情報処理障害のサブタイプは、「容量性注意障害」である。
  • 容量性注意障害の原因の一つとして、頭蓋骨縫合早期癒合症(軽度三角頭蓋)で発生する脳組織への圧迫が挙げられる。

当ウェブサイトでは、聴覚情報処理障害の定義をめぐる論争についての論評も発信しています(下リンク)。 

聴覚情報処理機能の低下が認められる疾病は、以下の通りです。

  1. うつ病報酬系の機能低下が、聴覚情報処理機能の低下を引き起こす。
  2. 広義の聴覚情報処理障害:聴覚情報処理機能の低下症状を引き起こす器質性精神障害。例:自閉症スペクトラム障害(聴覚過敏、解離)、ADHD(実行機能の無効化)
  3. 狭義の聴覚情報処理障害:上記の2つを除く器質性精神障害。現状、音声言語医学においては、原因が明らかになっていない。例:容量性注意障害(これに起因する特異的言語発達障害

耳鼻科は専門外 

耳鼻科で一般的に行われる、聴覚に関する検査とは、機能性難聴の有無を調べるものです。この検査では、聴覚情報処理障害の有無の判断は不可能です。

なかには、音声言語医学に精通する耳鼻咽喉科の医師も、福島邦博先生(後述)を筆頭に存在するようです。しかし、ほとんどの耳鼻咽喉科においては、音声言語医学は専門外ですので、基本的に聴覚情報処理障害を知らないと考えるべきでしょう。

となると、検査をしても異常箇所が見つからないはずなので、多くの場合でストレス(神経症)が原因であると推察的な判断され、「経過観察」となるでしょう。言い換えれば匙を投げられるということです。

聴覚情報処理障害と精神科

聴覚情報処理機能の低下を引き起こす精神疾患のうち、うつ病ADHD、自閉スペクトラム障害は、すでに精神医学に公認されています。もしあなたの「聴覚情報処理障害」の原因がこれらであった場合は、精神科にかかった場合でも対処可能です。

精神科では、原因疾患の検査を受け、診断が下りた際にはSST、あるいは投薬などの治療を受けられます。しかし、精神科での治療では聴覚過敏などの症状に対応できない可能性があるので、その場合は専門家(言語聴覚士など)を紹介してもらうべきでしょう。

聴覚情報処理障害のチェック診断:あなたの聴覚情報処理機能の低下症状はどのタイプ?

聴覚情報処理障害の疑いがある症状について、正確な診断を受けるならば、聴覚情報処理障害の専門家に直接診断してもらうことに越したことはありません。しかし、遠隔地に住んでいらっしゃる方々は専門家が在籍している施設に行くことは難しいでしょう。

そこで、聴覚情報処理障害のサブタイプがわかるオリジナルの診断を簡単に作りました。是非参考にしてください。 

1 口下手 

A. 容量性注意障害

まず、聴覚情報処理障害のひとつである特異的言語発達障害の性質は、言語理解だけでなく言語運用にも悪影響が見られます。

ここでの「口下手」とは、重文複文といった複雑な統語構造を持つ言語情報を出力するための情報処理に時間がかかることを意味します。口下手ならば、特異的言語発達障害タイプです。

ちなみに、ADHDは口下手ではありません。受動的行為である聴覚情報処理とくらべると、話すという行為は能動的行為であるため、ADHDによる悪影響は少ないと考えられます。

2 文章読解力が低い 

A. 容量性注意障害、あるいはADHD

言語性知能が高い(文法に対する理解度や語彙力が高い)にもかかわらず、読解力が低い場合が存在します。その病理は2つ存在します。

ADHDの場合

読む行為自体に対する集中が困難であることに由来する、読解力の低さです。ADHDに限らず、実行機能(注意制御・衝動抑制)が未発達である子供も含まれます。

例えば、両者は読解問題を説いているときに、頭の中で突発的に音楽が再生される現象を体験するはずです(音楽への嗜好が高いは特に)。そして、その音楽の脳内再生を止めることは困難です。この現象をイヤーワームといいます。そしてイヤーワームは衝動性のひとつであるといえます。

容量性注意障害の場合

読む行為自体には集中できており、単語レベルの意味の理解を達成できているという点において、ADHDとは異なります。しかし、短期記憶として覚えられる情報量が少ないという問題が存在します。

すると、複雑な統語構造を持つ文の意味を一度に理解する(読解も同じ)ことが困難になり、何度も読み返さなければならないため、理解が遅くなります。すると、文の集合体である文章全体の読解を達成する速度が遅くなります。

容量性注意障害は、ワーキングメモリの無効化です。ワーキングメモリが無効化されることで、言語理解が困難になるだけでなく、同時処理が必要になる聴覚情報を処理する機能の低下も引き起こされます。

私を含めて、容量性注意障害の患者はワーキングメモリが必要になる二重課題を遂行しているとき、健常者であれば活性化する大脳皮質全体の血流量が低下し、逆に不活性になります。容量性注意障害の症状の特徴や原因疾患に関しては、下のリンクの記事のなかで紹介しています。  

3 多声音楽を構成する複数の旋律を同時に聴きとれない 

A. 容量性注意障害

ポップスなどの音楽では存在しませんが、クラシックの楽曲のなかには、同時に複数の声部(旋律)が対等に進行する楽曲が存在します。これを「多声音楽(ポリフォニー)」といいます。楽曲形式ではフーガやカノンが多声音楽に該当します。

 <バッハ:フーガの技法


J.S.Bach - The Art Of Fugue BWV 1080.

ベートーヴェンピアノソナタ第29番 ”ハンマークラヴィーア” 第4楽章>  


Glenn Gould - Beethoven Sonata 29 in B flat major "Hammerklavier" 4th movement

ネルソンコーワン氏が提唱する、「マジカルナンバー4」というワーキングメモリの容量に関する理論に従うと、健常者であれば、同時に4つ前後の旋律を聴き取ることが可能です。

一方の容量性注意障害の場合、聴くことに集中したとしても同時に複数の旋律を聴き取ることができません

このことは言語理解においても同じことがいえます。すなわち容量性注意障害は、同時に複数の言語情報、および複雑な文を理解するのが困難という特徴を持ちます。

4 不協和音で構成された音楽を聴くのが苦痛である

A. 聴覚過敏(自閉症ペクトラム障害)

以下の音源、聴覚過敏を持つ方は視聴注意。

プロコフィエフ:悪魔的暗示>


S. Prokofiev : "Suggestion Diabolique" op. 4 no. 4 (Chiu)

<アイヴズ:ピアノソナタ第2番 第1楽章>


Ives: Piano Sonata No.2 "Concord, Mass., 1840-1860" - 1. "Emerson". Slowly - Slowly And Quietly

聴覚過敏の方は、不協和音が多用されている前衛的音楽(クラシックの代表例:プロコフィエフショスタコーヴィチによる一部の曲など)を聴く行為そのものが苦手です。

自閉症スペクトラム障害と不協和音に関する研究(下記リンク)が実際に行われており、「自閉症スペクトラム障害においては、不協和音の聴き取り行為に苦痛を感じる傾向が認められる」という結論が提示されています。

聴覚情報処理障害を扱っている医療機関一覧(敬称略)

聴覚情報処理障害を扱っている研究領域は、現時点では音声言語医学だけであり、一般的な医学においては疾患概念として認知されていません。聴覚情報処理障害研究の第一人者である小渕千絵先生の著書では以下のような文が書かれています。

APDに関しては原因や評価、支援方法などが確立されているとは言えず、医療機関教育機関での混乱も大きい*1

なので、聴覚情報処理障害の診断を目的に医療機関にかかる場合は、言語聴覚士、あるいは聴覚情報処理障害を知る医師(精神科、耳鼻科に限られるでしょう)が在籍している専門機関にかかるのが確実です。

以下、聴覚情報処理障害を診断できる医療機関を列挙します。紹介する医療、研究機関の選抜基準は、聴覚情報処理障害に関する論文を執筆している先生方が在籍している医療機関であることです。

聴覚情報処理障害の啓発活動を行っている耳鼻咽喉科の医師は稀有です。その一人でいらっしゃる平野先生が開業している病院です。聴覚情報処理障害のためのウェブサイトを開設していらっしゃいます。

福島先生は、聴覚情報処理障害に関する論文を執筆しています。

福島邦博 医師(ふくしまくにひろ)|ドクターズガイド|時事メディカル

聴覚情報処理障害の診断の現状と、受診することについての持論

聴覚情報処理障害の専門機関では、予約が殺到しているようです。

聴覚情報処理の問題点に対する分析に特化した先述の専門機関で診察を受けることに越したことはありませんが、「広義の聴覚情報処理障害」(聴覚過敏やADHD由来の聴覚情報処理機能の低下症状)の場合は、上記の聴覚情報処理障害の専門医療機関への受診することよりも、原因疾病に対する治療を精神科で受けることのほうが、手っ取り早いと私は考えています。

これに対して、狭義の聴覚情報処理障害であると私が考えている容量性注意障害の方は、残念ながら精神医学ではその疾病単体の病理の研究は行われていません。音声言語医学においても、容量性注意障害と聴覚情報処理の関係について言及している研究者はいらっしゃらないようです。

この現状を打開するために、私は当事者研究を「一般化」させるなど、研究活動を展開し、啓発活動を行う所存です。

私の聴覚情報処理障害の原因疾患は頭蓋骨縫合早期癒合症です

かくいう私も、聴覚情報処理障害を抱えている当事者の一人です。過去には言語発達遅滞があり、読解やリスニングが非常に苦手であることや、機能代償に起因すると推測している疲労感を覚えるといった症状があります。

私の聴覚情報処理障害のサブタイプは、容量性注意障害に該当します。そして、私の容量性注意障害は、頭蓋骨縫合早期癒合症に起因する高次脳機能障害です。

詳細は以下の記事で紹介していますので、興味を持たれた方は下の記事を読んで下さり、知っていただけると幸いです。 

<引用文献>

音声言語医学 56巻 4号 2015年10月

小渕千絵「聴覚情報処理障害(auditory processing disorders, APD)の評価と支援」

*1:小渕, 2015, p. 302

頭蓋骨縫合早期癒合症の当事者である芸能人、有名人:ヒース レジャー(Heath Andrew Ledger)

はじめに

頭蓋骨縫合早期癒合症(以下、「早期癒合症」と記述)という、頭蓋骨が通常よりも「早く閉じてしまう」疾病が存在します。脳の発達に悪影響を与える疾病として医学的に認知されている、神経発達の観点においても重篤性を持つ疾病です。

現在、早期癒合症は小児慢性特定疾病に認定されており、手術を用いた治療が行われています。

一方、軽度の早期癒合症も実在するのですが、こちらのほうは医療関係者の間で認知されているとはいえません。それどころか、軽度三角頭蓋の手術に対して否定的な見解を述べているというのが現状です。(詳細は「軽度三角頭蓋の論争」に関する記事の中で紹介しています。)

こうした背景があり、治療の機会を逃した状態のまま大人になり、そのほとんど(私以外)は軽度の早期癒合症に気づかないまますごしています。仮に、早期癒合症由来の症状があったとしても、です。

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人の話を理解できない、聴き取れない「聴覚情報処理障害」とは? / ワーキングメモリ、発達障害との関係 / それぞれのタイプにおける聞こえ方の特徴、および原因疾患について(改訂版)

聴覚情報処理をつかさどる機能が低下する3タイプの精神障害の病理を、当事者の観点から考察します。 キーワード:音声認識、言語理解、カクテルパーティー効果、音韻ループ、ワーキングメモリネットワーク、マルチタスク、注意資源(注意容量)、聴覚過敏、解離、前頭前野背外側部(DLPFC)、容量性注意障害、特異的言語発達障害、頭蓋骨縫合早期癒合症

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